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車載ヘッドアップディスプレーや超小型プロジェクター用などに向け 超小型で高性能な電磁式駆動のMEMSミラーを開発【浜松ホトニクス】

2012年9月27日

当社は、超小型で高性能な、電磁式駆動のレーザー走査型MEMSミラーを開発しました。1次元タイプと2次元タイプを国内外の家電、車載電装、計測機器メーカーに来年1月からサンプル出荷を予定しています。これにより、車載ヘッドアップディスプレーや超小型プロジェクターなどの開発が進むと期待しています。
なお、本開発品は、10月2日(火)から5日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催される、最先端IT/エレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2012」(シーテックジャパン2012)に出展します。

開発品の概要

本開発品は、当社独自のMEMS(微小電気機械システム)加工を用いたプロセス技術による超小型で低消費電力、低電圧駆動、高反射率、高耐衝撃性、信頼性の高い電磁式駆動のレーザー走査型MEMSミラーです。電磁式駆動を採用しミラーの下に強磁石を配置したことにより超小型で低消費電力と、低電圧駆動(5V)を実現しました。
また、ミラー表面の反射膜材料を最適化したため反射率95%と極めて反射率の高いミラーとなっており、単結晶シリコンを材料に使用しているため丈夫で長期安定性にも優れています。さらに、高速軸にはミラー位置センサを内蔵しており、レーザースキャン角度を直線性良く駆動できます。
これにより、5V駆動と低電圧でありながら、2次元共振タイプの場合でも光学的振れ角24°と広い光学的走査角度で、共振周波数22kHzの高速スキャンが可能になり、大画面で高解像度を実現します。

1次元共振タイプは、1mm径のミラーサイズ、2種類の共振周波数、1次元非共振(固定)タイプは、2.6mm径と1.1 mm×4.1mmの2種類のミラー形状を用意する予定です。固定タイプは、任意の位置でミラーを止めたり、スピードを変化させたりすることができます。
2次元共振タイプは、0.9 mm×1mmの楕円形のミラーからなり、高速軸は共振モードで低速軸は非共振モードで動作させます。

本開発品の応用例

本開発品は、車載用ヘッドアップディスプレー、携帯電話やノートパソコン用の超小型プロジェクター、レーザー走査装置などに応用されます。
自動車のヘッドアップディスプレーでは、走行の安全機能として、各種メーターやナビ情報、ナイトビジョンの画像などをフロントガラスに投影するものです。
レーザー走査式超小型プロジェクターでは、レンズを使用しないため超小型で、携帯電話などに組み込み、いつでも簡単に大きな画面で投影できます。また、半導体レーザーの電気光変換効率が高く、色利用効率が高いのでロスがなく低消費電力でバッテリー駆動が可能であり、どこに投影してもレーザーの直進性によって常にピントが合うフォーカスフリー機能と、レーザーの広い色再現性による高精細で高解像度な画像取得などが特長です。

本開発品の構造と原理

本開発品は、単結晶シリコン上に金属のコイルを形成し、コイルの内側にMEMS加工の深堀エッチングでミラーを形成し、基板の下に強磁石を配置した、電磁駆動方式のMEMSミラーです。コイルに電流を流すことにより、電磁場中で運動する荷電粒子(電子)が受ける力(ローレンツ力)を発生させて、小さな力でミラーの傾きを1次元または2次元的に駆動します。電磁駆動式は、静電式、圧電式などに比べ、低電圧駆動でもミラーの振れ角が大きく、小型で低消費電力駆動が特長です。
画像データなどの電気信号の周波数により共振現象を利用して、単一ミラー面に入射した半導体レーザー光の光路を変え、走査(スキャニング)して投影します。

開発品の構造模式図と写真(2次元タイプ)

本開発品の主な特長

1、 電磁式駆動により超小型化を実現。
ミラー駆動が電磁式で、磁石をミラーの側面でなくミラーチップの下に最適な磁界設計して設置することにより超小型化を実現しました。

2、 独自の強力磁石により低電圧駆動で低消費電力を実現
ミラー駆動に数十Vの高い電圧を必要とする静電式、圧電式と比べ、電磁式は磁力の強い磁石を用いるため、低電圧駆動が可能になり、低消費電力を実現しています。
これにより、低電圧5V駆動でありながら、広い光学的走査角度で高速スキャンが可能になり、大画面で高解像度を実現します。

3、 高反射率で高耐衝撃性、高安定、高信頼性を実現
ミラー表面の反射膜材料を最適化して反射率が極めて高いミラーな上、単結晶シリコンなので非常に丈夫で長期安定性に優れています。

開発経緯と今後の展開

当社は、2011年9月にレーザスキャニングシステムの開発を行うスイス連邦工科大学からスピンオフしたレモオプティクス社(Lemoptix:本社スイスローザンヌ市)と技術提携して本製品を開発しました。これまで、当社のMEMS技術・製品は、光検出素子が主流でしたが、MEMSミラー技術導入によりメカニカルな製品が加わりました。
今後は、MEMSミラーの発展版として光学技術を付加してレーザーや光検出素子も組み合わせた光学モジュールや光学エンジンのような複合機能や形態を開発し、付加価値の向上及び新市場の開拓に力を注いでいきます。
また、MEMSミラーに関しては空気抵抗がなく、広い機械的振角、高速共振が可能で、気密封止により高信頼性が実現する真空封止パッケージタイプの開発も進めています。

主な予定仕様

1次元タイプ

予定品番
S12236-004F
S12336-008F
S12237-002DC
S12237-003DC
動作モード 共振モード 非共振(固定)モード
ミラーサイズ Φ1mm Φ1mm 4.1 mm×1.1mm Φ2.6mm
共振周波数 4.5kHz 24kHz 600Hz 400Hz
光学的振れ角 ±32.5° ±18° ±20° ±17.5°
消費電力 0.25mW
(0.25V時)
95mW
(4.7V時)
42mW
(3.5V時)
25mW
(2.6V時)
外形サイズ 5.5 mm×10 mm×4.5mm 8.4 mm×14.3 mm×3.85mm

2次元タイプ

予定品番
S12238-001D
高速軸
低速軸
動作モード 共振モード 非共振(固定)モード
ミラーサイズ Φ0.9 mm ×1.0mm 楕円形
共振周波数 22kHz 800Hz
光学的振れ角 ±24° ±16°
消費電力 90mW(4.5V時) 67mW(4.5V時)

サンプル予定出荷日

2013年1月

予定税込み価格

予定品番
S12236-004F
S12336-008F
S12237-002DC
S12237-003DC
S12238-001D
サンプル価格 42,000円 42,000円 63,000円 68,250円 84,000円

予定販売目標金額

1年目1億円/年、5年後10億円/年


電磁式駆動レーザー走査型MEMSミラー
左から「S12238-001D」、「S12237-003DC」、「S12237-002DC」
右端はサイズ比較のためのボールペン先



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