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小型・省エネルギーを両立するEV向け薄型インバーター技術を開発

2022年5月24日

  

小型・省エネルギーを両立するEV向け薄型インバーター技術を開発
配線を簡素化した新構造により生産効率向上、ライフサイクルでのCO2排出量削減に貢献

  


従来インバーターと薄型インバーターの外観

株式会社日立製作所(以下、日立)と日立Astemo株式会社(以下、日立Astemo)は、電気自動車(以下、EV)向けの電力変換器(以下、インバーター)として、省エネルギーと小型化を両立した薄型インバーターの基本技術を開発しました。本技術は、電力供給を制御するパワー半導体*1をプリント配線基板と一体化して集積することで電力配線を簡素化し、パワー半導体がスイッチ動作する際に発生するエネルギー損失を、従来比*2で30%低減するとともに、約50%の小型化を実現しました。また、新構造によりパワー半導体や電力配線の溶接工程を不要とするなど、部品数や組み立てに必要な工程を削減し、インバーターの生産工程を含めたライフサイクルでのCO2排出量削減が可能です。
今後、両社は本技術の実用化に向けた取り組みを加速し、さらに日立においては、EVだけでなくEV急速充電システムや送電システムなど、広範な用途向けに薄型インバーター技術を提供することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

*1 通常の半導体よりも大きな電力を通したり止めたりできる半導体。材料には主にSi(ケイ素)が使われてきたが、高性能で省エネルギーなSiC(炭化ケイ素)の実用化が進んでいる。本開発品は、Siパワー半導体を適用した構造であるが、SiCにも適用可能。

*2 当社従来製品(100kWクラス)比。

  

背景

 脱炭素社会の実現に向け、自動車の電動化が世界各国で急速に進められています。インバーターは、バッテリーの直流電力を交流電力に変換しモーターの回転を制御する、EVに欠かせない部品であるとともに、EVの急速充電システムや、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の送電システムをはじめ、エネルギーを無駄なく有効活用する上で重要な基幹部品です。今後EVや再エネの導入拡大に伴い扱う電流が増大した場合、従来構造のインバーターでは、電力の供給を制御するパワー半導体や周辺部品を大型化する必要があり、エネルギー損失が増加するとともに、組み立てに必要な工程も複雑化することが課題でした。

  

開発技術の特長

 日立と日立Astemoはこれまで世界のお客さまの様々な用途に合わせてインバーターを提供してきましたが、今回、従来と全く異なる構造の薄型インバーターの基本技術を開発しました。特長は以下のとおりです。

1. パワー半導体とインバーター回路部品をプリント配線基板と一体化して集積する技術
 インバーターは、大電流をon-offするパワー半導体と、大電流を通電する回路部品により構成されます。パワー半導体は大電流を流すと発熱するため、従来構造ではパワー半導体とインバーター回路部品を別々に組み立て、それらを配線で接続する必要がありました。そのため、インバーター全体が複雑な構造となり、エネルギー損失の削減やインバーターの小型化は困難でした。
 日立と日立Astemoは今回、インバーター回路部品を組み込んだプリント配線基板上にパワー半導体を一体化して集積することで、発熱の問題を回避可能な基本技術を開発しました。本技術では、インバーター内部の電力配線を簡素化してインダクタンス*3を低減できるため、パワー半導体がスイッチ動作する際に発生するエネルギー損失を従来比で30%低減し発熱を抑えるとともに、インバーターのサイズを従来比で約50%小型化することに成功しました。

*3 交流回路の配線に誘導される電圧の大きさを左右する値。インダクタンスが大きいと、サージ電圧およびエネルギー損失の増加を招く。

2. 部品数や組み立てに必要な工程を削減する実装技術
 従来構造のインバーターでは、パワー半導体に大電流を供給するためにバスバー*4と呼ばれる銅板の部品が多数用いられ、これらを溶接などにより接続する作業が必要でした。このため、部品数や組み立てに必要な工程が多く、生産効率の向上が困難でした。本技術では、パワー半導体や回路部品を、コンパクトで軽量な薄型のプリント配線基板上に実装し、バスバーを省略することに成功しました。これにより、生産プロセスを大幅に簡略化し、部品数や組み立ての工程を削減しました。本技術により、生産工程でのエネルギー消費を低減し、インバーターのライフサイクルでのCO2排出量の削減に貢献します。

*4 大容量の電流を流すための導体。

 今回開発した薄型インバーターは、5月25日からパシフィコ横浜で開催予定の「人とくるまのテクノロジー展2022」に出展されます。

今回開発した薄型インバーターの主な仕様
項目 数値
体積 1.5 L
最大出力 170 kVA
最大電流 350 A
パワー密度 113 kVA/ℓ

  

日立製作所について

 日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。金融・官公庁・自治体・通信向けITサービスやお客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通、水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」と、自動車・二輪車の分野で先進技術を提供する「オートモティブシステム」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。グリーン、デジタル、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は10兆2,646億円、2022年3月末時点で連結子会社は853社、全世界で約37万人の従業員を擁しています。

日立のウェブサイト
Lumadaについて

  

日立Astemoについて

 日立Astemoは、パワートレイン&セーフティシステム事業をはじめシャシー事業、モーターサイクル事業、ソフトウェア事業、アフターマーケット事業から成る戦略的な事業ポートフォリオにより、事業強化と技術革新に取り組んでいます。排出ガスを低減する高効率な内燃機関や電動化技術をはじめ、先進運転支援技術、先進シャシー技術など安全性・快適性の向上や環境保全に寄与する先進的なモビリティソリューションの提供を通じて、持続可能な社会の実現とともに、お客さまの企業価値の向上に貢献していきます。

  

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