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独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同開発について ~耐原子状酸素コーティングの開発~【東亞合成】
2012年9月7日
東亞合成㈱(以下、東亞合成)と独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、低軌道環境下において材料劣化の主要因となる原子状酸素への耐性を高めたコーティング剤として、シリコン系有機・無機ハイブリット材料「光硬化型SQ シリーズ(以下「SQ 」)」(写真1)の応用開発を共同で進めてまいりました。このたび、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(以下HTV)3号機の機体識別マーク(日の丸とHTV3等のロゴ)にSQ による保護コーティング技術が活用されましたのでお知らせいたします。
国際宇宙ステーション(以下ISS)や地球観測衛星等の宇宙機が位置する低軌道環境下では、太陽の紫外線で原子状に解離した大気由来の酸素(原子状酸素、以下「AO」)が、宇宙機用高分子材料劣化(浸食等)の主要因となります。そのため、耐AO性を付与するコーティング技術が、宇宙機の長寿命化を図るために不可欠となります。しかし、従来の無機系コーティング材料ではひびなどの欠陥を生じやすいため、耐AO性の維持が困難という問題を有していました。これに対して、有機的性質と無機的性質を併せ持つSQ コーティング膜は、宇宙機の熱制御材料として広く用いられているポリイミドフィルムに対して大変優れた追随性を示すうえ、地上での原子状酸素照射試験およびプラズマアッシャー試験(写真2)では高い耐AO性が、別の評価では紫外線、放射線への耐性が良好であることが確認されています。SQ をコーティングしたポリイミドフィルムについては、2013年度のJAXA認定取得を目指した開発を進めています。
さらに、SQ は、各種開始剤を配合しUV(紫外線)や熱で硬化して容易にコーティング膜を作製できるという特長を持つため、宇宙機の組立て現場での施工作業においても有効であると考えられており、ポリイミド以外の材料にも有望であることから、非常に扱いやすく応用力のある画期的な材料として期待されています。
すでに、宇宙機上の図柄やロゴ等に用いられる合成樹脂塗料に対し、SQ コーティング技術が活用されており、2012年7月21日、JAXA種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIBロケット3号機に搭載されたHTV3号機には、SQ で保護された機体識別マーク(日の丸とHTV3のロゴ)が貼り付けられています(写真3)。同様に、HTV3号機でISSに運ばれた曝露パレットにもSQ で保護された機体識別マークが貼り付けられており(写真4)、曝露パレットがISSに係留される最長3年間にわたって、その外観を維持し続けることが期待されています。
今後、東亞合成はJAXAと協力し、耐原子状酸素コーティングの適用材料範囲拡大に向けた開発を行い、宇宙機の長寿命化に広く貢献していきます。
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