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3Dプリンターによる低熱膨張合金の軽量化研究【⽇本鋳造】
2021年9月9日
3Dプリンターによる低熱膨張合金の軽量化研究
~JAXAとの基礎共同研究が完了~
⽇本鋳造株式会社は、宇宙での地球・天⽂観測衛星の軽量化を⽬的に、2019年度より2年間にわたり、国⽴研究開発法⼈宇宙航空研究開発機構(以下、JAXAと略記)とともに、低熱膨張合⾦の積層造形(3Dプリンター)技術の共同研究を実施し、このたびその基礎段階が完了致しました。
地球・天⽂観測を⽬的とした宇宙機に搭載される望遠鏡には⾼い⼨法安定性*1が要求されます。特に、宇宙空間上では、温度変化により⽀持構造*2に熱変形が⽣じることにより、望遠鏡の主鏡や副鏡といった光学機器の位置精度*3が低下し、画像がぼやける等の光学性能の低下が懸念されており、熱膨張率が低い優れた材料を適⽤することで熱変形を低減する必要があります。
低熱膨張合⾦は⽐重が⼤きく、従来の機械加⼯による部品製造では軽量化に限界があるため、宇宙機に適⽤する際には重量増が課題でありましたが、JAXAとの共同研究により機械加⼯では困難な⾁抜き構造(ラティス構造)を実現させ、40%以上の軽量化を達成致しました(図1は、光学機器のパイプ円筒部にラティス構造を採⽤し軽量化を図った事例)。また、構造部材における低熱膨張特性においても従来と同程度の低熱膨張率を達成しております。
加えて、これまで機械加⼯で製造していた光学機器や⽀持構造部品について3Dプリンターによる積層造形を適⽤することにより、厚さ1mm程度の板バネ構造も造形可能であり、従来の機械加⼯品と⽐べて⼤幅な納期短縮が可能であることも確認致しました(図2)。
さらに当社は、今後期待される3Dプリンター品の活⽤拡⼤に向け、3Dプリンター独⾃の機能を活⽤し、機械的特性や熱膨張率に関する傾斜機能材*4の開発にも着⼿しております(図3に熱膨張率の傾斜機能材のイメージ)。
本研究の⼀部は、雑誌「⾮破壊検査,第70巻7号(2021),p.254-260」に紹介されております。
※(一社)日本非破壊検査協会様の許可を得て掲載しております。
※掲載内容の無断転載、複製を禁止します。
当社は、低熱膨張合⾦(Low Thermal Expansion Material、LEX®︓当社登録商標)を30年以上にわたり提供してまいりましたが、今後も、新たな技術開発や需要の開拓を図り、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
本件に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。
日本鋳造株式会社 素形材開発技術部 TEL 044 (322) 3771
図1 3Dプリンターによる光学機器の軽量化事例(機械加工品と3Dプリンター品の比較) |
図2 低熱膨張合金の精密部品の造形事例 (機械加工品と3Dプリンター品の比較) |
*1寸法安定性:時間が経過しても⻑さが変化しないこと
*2支持構造:装置を⽀える強度設計上重要な構造
*3位置精度:⼈⼯衛星内部での装置同⼠の位置関係。望遠鏡では光学装置同⼠に位置関係が変化すると焦点ズレなど光学性能の低下を引き起こす
*4熱膨張率に関する傾斜機能材:下のイメージ図のように、右側から左側にかけて熱膨張率が0〜12ppm/℃まで傾斜的に変化していく。下にイメージ図と実製作した材料を⽰す。
図3 低熱膨率の傾斜機能材料のイメージ |
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