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コバルト(特定化学物質)を使用しない3D造形用マルエージング鋼粉末を商品化【山陽特殊製鋼】

2020年10月5日

コバルト(特定化学物質)を使用しない3D造形用マルエージング鋼粉末を商品化
~コバルトを添加せずに従来のマルエージング鋼に匹敵する高強度と高靭性を実現~

 山陽特殊製鋼株式会社(代表取締役社長樋口眞哉、本社姫路市)は、特定化学物質であるコバルトを使用しない3D造形用マルエージング鋼粉末を開発、商品化しました。

 マルエージング鋼は、熱処理を施すことによって高強度と高靭性を併せ持つことから、産業機械、自動車、航空・宇宙分野等で幅広く使用されています。その3D造形への適用は金型用途を中心に拡がっていますが、3D造形には粒径100μm前後の微細な粉末が用いられるため、特定化学物質であるコバルトを含有するマルエージング鋼粉末を取り扱うには除塵装置等の健康障害防止措置が必要でした。

 当社が開発した3D造形用マルエージング鋼粉末は、コバルトを添加せずに従来のマルエージング鋼に匹敵する高強度と高靭性を実現しました。これにより、健康障害防止措置が不要となり、マルエージング鋼が使用されていた高強度・高靭性が求められる金型や部品等への3D造形適用が容易となります。

■開発の背景
 マルエージング鋼は、高強度と高靭性を併せ持つことから、産業機械、自動車、航空・宇宙分野等で幅広く用いられています。一般的に、高い強度(硬度)を有する材料は3D造形時にクラック等の欠陥が発生しやすいという問題があります。マルエージング鋼は熱処理を施すことで強度が付与される鋼種であるため、3D造形時は硬度が低 くクラック等の欠陥が発生しにくいことから、3D造形に適した材料として金型用途を中心に適用が拡がっています。

 しかしながら、マルエージング鋼は特定化学物質であるコバルト(Co)を数%程度含有していることから、マルエージング鋼の粉末を用いた製造・加工工程等においては、除塵装置等の健康障害防止措置を講じることが特定化学物質障害予防規則で義務付けられています。また、コバルトは、鉱石資源の産出地が極端に偏在していることに加え、政情が不安定な地域での採掘が国際的な問題になるなど、調達面でもリスクが高いレアメタルとされています。

 このため、コバルトを使用せずにマルエージング鋼の持つ優れた特性を実現できる3D造形用の粉末が求められていました。

■開発のポイント
 マルエージング鋼は、溶体化熱処理と時効処理という二種類の熱処理により、マトリックス(金属組織)内に金属間化合物が析出することで強度が向上します。マルエージング鋼に含まれるコバルトは、マトリックス内の金属間化合物の析出を促進する働きがあるため、その減少は強度低下につながります。さらにコバルトは、時効処理時の脆性相の生成を抑制する効果も有しており、コバルトの減少は靭性の低下につながるという問題もありました。

 そこで当社は、独自の合金設計と組織制御技術により、コバルトを添加せずに金属間化合物の析出を促進し、必要な強度を引き出せる合金組成を見出しました。これに加えて、時効処理時に脆性相の生成を抑制する熱処理条件を見出し、従来のマルエージング鋼と同等の高強度と高靭性を実現できる3D造形用粉末を開発しました。

【時効処理後の機械的性質】

■メリット
  当社が開発したマルエージング鋼粉末は、特定化学物質であるコバルトを添加せずに従来のマルエージング鋼に匹敵する高強度と高靭性を実現しました。これにより、3D造形時に健康障害防止措置を講ずることが不要となり、高強度・高靭性が求められる金型や部品等への3D造形適用が容易となります。

当社は、3D造形に最適な金属粉末の成分開発、材料特性を十分に引き出すための造形条件の確立、造形体の内部評価をスピーディーに行える開発体制を整え、試作用3D造形用粉末の提供やお客様の3D造形開発のトータルサポートを積極的に推進しております。今後も新商品・技術の開発に注力し、材料・技術を通じたお客様の競争力向上に繋がるソリューションを提供してまいります。

≪お問い合わせ先≫
山陽特殊製鋼株式会社総務部広報グループ(TEL:079-235-6002)


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