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「第70回自動車技術会賞」を受賞【日産自動車】
2020年7月13日
日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は13日、公益社団法人 自動車技術会主催の「第70回自動車技術会賞」において、同社の「世界初アクティブトルクロッドの開発」が技術開発賞を、「車室内の等価温度解析手法の開発」と「直噴ガソリンエンジンのPN低減技術に関する研究」が論文賞を受賞したと発表しました。
自動車技術会賞は、1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的として設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績に対し授賞しています。
今回受賞した技術、技術者および受賞理由*1は次の通りです。
●技術開発賞
授賞テーマ: 世界初アクティブトルクロッドの開発
授賞者: 金堂 雅彦(こんどう まさひこ) 日産自動車株式会社
谷村 浩史(たにむら こうじ) 日産自動車株式会社
小穴 祐太(おあな ゆうた) 日産自動車株式会社
植木 哲(うえき あきら) 株式会社ブリヂストン
藤井 隆良(ふじい たかよし) シンフォニアテクノロジー株式会社
授賞理由:エンジンダウンサイジングや、高圧縮比による燃焼速度の向上は、燃費を飛躍的に向上させる一方で、V6を代替可能な4気筒化は、エンジン加振力を増大させ、従来技術そのままで静粛性を改善する場合、マウント重量増となる対策が不可避となり、燃費効果が目減りする。
本技術は、高周波で増大した加振力をトルクロッド本来の防振機能で低減し、その結果低下したロッド共振を、アクティブに制振することにより、これを解決した。アクティブ機能においては、線形特性に優れた世界初の慣性マスアクチュエータを開発し、速度比例の減衰付与を加速度センサ出力で実現し、燃費対応による加振力増大を軽量マウントで対応可能とした。
今後ニーズの高まる車両の軽量化や更なる低燃費化など、高次元での多性能両立の可能性を高めるものであり、高く評価される。
*1 公益社団法人自動車技術会発行「第70回自動車技術会賞 受賞者発表用パンフレット」より引用
●論文賞
授賞テーマ: メッシュフリーシミュレーションによる車室内の等価温度解析(第1~2報)
授賞者: 大井 元(おおい はじめ) 日産自動車株式会社
市川 靖(いちかわ やすし) 日産自動車株式会社
松本 彰(まつもと あきら) 日産自動車株式会社
米津 豊作(よねつ ほうさく) AGC株式会社
尾関 義一(おぜき よしいち) AGC株式会社
授賞理由:自動車の電動化に伴う暖房の熱源不足や、冷暖房が電費・燃費に与える影響の増加の為、空調の効率化が課題となっている。空調の最適化には、空気温度だけでなく気流や放射を含めた評価・設計が必要となる。本論文は、これらの要素が乗員の温熱快適性に及ぼす影響を評価可能な体感温度指標「等価温度」の数値解析法を提案し、その有効性を確認したものである。本研究は、着衣が持つ「保温効果」と「表面積増加による放熱促進効果」の両面を考慮したシンプルな着衣モデルを開発することで、正確な等価温度の計算を可能とした。本手法を空調の性能計画に活用することで、空調の快適性と燃費・電費の両立など環境への貢献が期待される。また現在、本手法のISO規格化が進められており、成果の幅広い活用が期待される点も高く評価される。
●論文賞
授賞テーマ: 直噴ガソリンエンジンの低温過渡PM発生メカニズムの解明およびPN低減技術に関する研究
授賞者: 今岡 佳宏(いまおか よしひろ) 日産自動車株式会社
井上 尊雄(いのうえ たかお) 日産自動車株式会社
白石 泰介(しらいし たいすけ) 日産自動車株式会社
授賞理由:近年のCO2低減に貢献している直噴ガソリンエンジンは粒子数(PN)の低減が課題となる。特に低温加速条件に排出される大量のPNは従来の知見では予測できずそのメカニズムが不明であった。
筆者らは、この解明には車両と同一条件での筒内の燃料液膜の測定が不可欠と考え、始動から加速までの回転数が変化する各サイクルの撮影速度を回転数上昇と同期させて可視化する手法を新たに構築した。その結果、上記PNはアイドル条件における複数サイクルの燃料液膜の蓄積によるものであることを解明した。これらを基に構築したシミュレーションを適用し、低温加速条件のPNを9割以上低減した。本論文は、直噴エンジンの低温時に浪費される燃料とその排出低減のために必要な指標を示したことから、ゼロエミッション化への寄与が期待され高く評価される。
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