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早稲⽥⼤学次世代⾃動⾞研究機構と⾃動⾞の性能設計向けの計測ラボを開設、運⽤をスタート【AZAPA】
2020年3月11日
AZAPA 株式会社(愛知県名古屋市中区錦⼆丁⽬4 番15号、代表取締役 近藤康弘、以下AZAPA)は、早稲⽥⼤学次世代⾃動⾞研究機構と共同で早稲⽥⼤学本庄キャンパス内にシャシーダイナモシステムを有する⾃動⾞の性能開発向けの「計測ラボ」を開設、運⽤をスタートしました。
昨今、自動車メーカーを取り巻く開発環境は、厳しい状況が続いています。世界的に大気環境規制が強化され性能の向上が求められる一方で、CASEやMaaS等モビリティに求める消費者価値の変化に合わせ、車両の価値・性能も大きく変更を迫られています。複数の性能を同時に向上させねばならず、開発現場はリソース、資金ともにひっ迫しています。
その為、よりスピーディで競争力のある性能開発プロセスを構築しなければ、グローバル競争に勝ち目はありません。このような状況において、リソース不足や開発スピード、技術力の補填の為に海外エンジニアリング勢の活用が進み、彼らが日本国内で台頭していることは、憂慮すべき事態であると認識しています。
1.計測ラボ
2017年7月、AZAPAと三井物産株式会社との資本提携は、こうした背景から「日本のものづくりを世界に発信する」為に準備が進められました。
また、2017年9月には早稲田大学次世代自動車研究機構自動車用モデルベース制御研究所と共に、モデルベースを主軸とした長期的な研究連携を視野に入れ「モデルベース制御研究会」を発足、同枠組みにて車両の物理現象を正確に把握する「計測環境」への投資を掲げ、2019年12月にシャシーダイナモシステムを竣工し、2020年2月27日に「計測ラボ」を開設、同日に開設式典を行いました。
「計測ラボ」は「シャシーダイナモシステム」を中心とした計測環境を整え、性能設計に関わる計測プロセスの確立や計測システムの共同研究のための「計測プラットフォーム構想」として、自動車メーカーやサプライヤとの共創を目的としたオープンな施設として開設されました。
計測によって得られる物理現象の実測データを活用することでモデルベース開発が更なる効果を発揮し、開発の少人化・効率化に貢献すると期待されています。
本取り組みは、早稲田大学が採択された文部科学省「平成30年度オープンイノベーション機構の整備事業支援」における産学官連携による共同研究強化の一環として、大きく2つの効果を狙っています。1つは車両開発の競争領域において、組織の壁を越え合同で研究開発を行うことで海外との競争力を高めること、そしてもう1つは非競争領域において、確立した計測プロセスを横断的に共有することで、国内全体の車両開発を効率化することです。どちらも、グローバルな競争が高まっている現在の情勢において、非常に重要な役割であると認識しています。
(計測ラボイメージ)
(1) シャシーダイナモシステム
早稲田大学本庄キャンパスの施設内に導入したシャシーダイナモシステムの特長は、4象限動作(前進・後退×力行・回生)が可能なダイナモメーターが、各駆動輪に直結していることです。各車輪で分担する回生配分を高精度かつダイナミックに計測できます。また、電動化によって更に重要視されている各部放熱効果についても、車速連動冷却ファンによって実走行風の再現下で計測が可能となっており、企画段階から具体的な設計・評価の検討ができるようになっています。
(2) 研究会の発足
AZAPAと早稲田大学次世代自動車研究機構自動車用モデルベース制御研究所では、「モデルベース制御研究会」と「計測プロセス研究会」の2つの研究会を発足しています。それぞれの研究会では、早稲田大学内や自動車開発に関係する他大学など複数の研究機関と横断的に繋がり組織を構成することで計測プラットフォーム化し、自動車の性能開発環境を拡張して参ります。
・モデルベース制御研究会
システムの性能に影響する物理現象やメカニズムの解明や、材料・材質といったミクロな領域まで考慮した高精 度なモデルの作成を目的に活動を行っています。高精度モデルは制御開発で利用できる1Dモデルへと変換し、 参画メンバーへ提供しています。
・計測プロセス研究会
システム全体、又は部分的な性能の計測において、計測手法の確立を目的とした活動を行います。計測で利用す るセンサーやドライブロボットなどの研究・開発も含んでおり、モデルベース開発を支える計測システムとして 共同でノウハウを蓄積、共有します。
2.AZAPAの計測プラットフォーム構想、「VAIOP」
計測ラボは、VAIOP(Vehicle Analytics-based Integration Open-Platform)を構成する要素の1つとして設立しました。VAIOPは、国内の各企業・大学等が保有する計測設備等の各種研究開発環境を有機的に連携し、これまで計測環境を単独で持てなかった大学・企業も活用できるオープンな計測分析サービスの拡充を想定しております。この取り組みの広がりによって、日本国内の研究開発基盤(共創環境)全体のレベルアップが期待されています。
(VAIOP構想イメージ)
(1) 「性能設計」に特化した計測システム
これまで困難であったリピータビリティの高い実路走行再現評価や多様なバーチャルテストを可能とすべく、以下のような実路運転模擬による台上感性評価を実現しています。
具体的な活用事例を3つご紹介します。
(2) モデルベース開発と計測の連携
AZAPAは、車両の機能と性能について、システムオブシステムズを構成するすべてのサブシステムにおいて、性能がチェーンのようにつながっているという考えを基本としています。
性能チェーン
性能チェーンのエフェクト(性能効果)を計測ポイントとして、センサーで計測あるいはCANデータで解析することで、車両全体におけるシステム単位での性能の変移を理解することができます。モデルベースでも同様に性能の変移をシミュレーションしているため、計測結果と組み合わせることにより、あらゆる環境や状態における性能のボトルネックを効果的かつ正確に捉えることができます。想定通りの性能が出ない原因はボトルネックだけでなく、過剰性能に起因するケースもあります。「モデルベース・プラットフォーム(MSIP)」の性能シミュレータを用いてそうした問題を早期に発見し、コストと性能のバランスを考慮し、システムの再分配等を一早く検討できるようになります。
(3) 多彩な提供サービス
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