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電源管理システムの効率を高め、小型化を実現するGaNの技術革新【日本テキサス・インスツルメンツ】

2018年4月17日

現在の2倍の速さで充電できる電気自動車用チャージャ、既存アプリケーションの半分のサイズでより効率の高いモーター・ドライブ、ポケットサイズの小型ノートブックPC向け電源アダプタなどを想像してみてください。電子機器の将来は、電源管理のイノベーションにかかっています。さらに、私たちが日々使用しているインターネット検索では、1つの問い合わせごとに、60ワット電球を17秒間灯せる電気が使用されています。この問い合わせが毎日、数十億回行われたとすると、数十億キロワット時の電力が消費されていることになります。

エネルギーを効率的に管理し、より多くの電力を、より小さなスペースに収めるという課題は、決してなくなることはないでしょう。窒化ガリウム(GaN)などの新しい技術革新は、電源管理、発電、電力供給など、電力に関連する様々な側面を大幅に改善します。パワーエレクトロニクスにより管理されるエネルギーの割合は、2005年の30%から、2030年には約80%に上昇すると予想されています。これは、30億キロワット時以上の省エネを意味し、30万世帯以上の家庭を1年間賄える電力に相当します。

スマートフォンの充電器からデータセンターにいたるまで、グリッドから直接電力を得るもの、または最大数百ボルトの高電圧を扱うものはどれも、電源管理システムの高効率化と小型化に寄与するGaNなどの技術の恩恵を受けます。

完璧なスイッチの探求

電源システムの中核は、電源のオンとオフを切り替えるスイッチです。半導体パワー・スイッチに関しては、効率性(低損失)、信頼性、集積度、価格が重要な要素となります。

最適なスイッチの探求は今も続いています。最適なスイッチとは、わずかのオン抵抗で電流を伝導し、可能な限り少ないリーク電流で電流をブロックする一方で、オフ状態のターミナル全般にわたり多くの電圧をブロックするものだと言われています。また、高いスイッチング周波数は、より小型の電力変換ソリューションの設計が可能です。とりわけ、半導体スイッチは、高い信頼性で、コスト効率良く製造できることが求められています。

シリコン・パワー・スイッチはこの数十年で、電力効率性、スイッチング速度、信頼性を改善してきました。これらのデバイスは、100ボルト以下の低電圧または高電圧許容差(IGBTとスーパージャンクション・デバイス)における効率性とスイッチング周波数のニーズを満たしてきました。しかし、シリコンの限界から、これらのすべての機能を単一のシリコン・パワーFETで提供することはできませんでした。そのような中、GaNや炭化ケイ素(SiC)などの広バンドギャップ・パワー・トランジスタは、シリコンMOSFET製品では不可能な、高電圧と高スイッチング周波数において高い電力効率を提供できます。

GaNで実現できること
高効率な高周波数スイッチは、アプリケーションに応じて、パワー・モジュールのサイズを3分の1から10分の1まで小型化します。しかし、そのためには最適なドライバとコントローラ・トポロジが必要です。トーテム・ポールAC/DCコンバータは、シリコンでは実現不可能な、GaNの低いオン抵抗、高速スイッチング、低出力静電容量から恩恵を得られるトポロジで、3倍高い電力密度を得ることができます。スイッチング損失を軽減し、全体の効率を高めるゼロ電圧およびゼロ電流スイッチングなどの共振アーキテクチャもまた、GaNの優れたスイッチング特性の恩恵を受けます。

多くのアプリケーションでは、数百ボルトといった比較的高い電圧から、プロセッサなどの回路部品に供給される低い電圧に電力を変換する必要があります。高い入出力電圧比のスイッチ形式パワー・コンバータは、電力効率が��がります。これらの電源管理ブロックには通常、複数の変換段数が含まれます。ここで中間54/48ボルト・バスからプロセッサ・コア電圧への直接変換を使用すれば、コストを削減し、効率性を高めます。独自のスイッチング特性を備えるGaNは、直接変換アーキテクチャ向けの有望な技術です。直接変換は現在、データセンター・アプリケーションで使用されるサーバの電源管理向けに研究されています。

また、自律走行車のLIDAR向けレーザー・ドライバ、ワイヤレス充電器、5G基地局向けの高効率なパワーアンプによるエンベロープ・トラッキングなどのアプリケーションもGaN技術の効率性と高速スイッチングの恩恵を享受できます。

GaNパワー・デバイスの低い伝導損は、高スイッチング周波数と相まって、より高い電力密度を実現します。しかし、温度管理と寄生に関しては、引き続き取り組まねばなりません。より小型の筐体に、より多くの電力を集積しようとすると、放熱とパッケージングという新しい問題が出てきます。ダイ表面積が小さくなれば、従来のパッケージング技法の効率を下げることにもなります。3次元放熱はGaNパッケージングの有望な選択肢でしょう。

より環境に優しく
コストと大規模採用のサイクルを打破するには、最も強力なアプリケーションで使用される既存デバイスの欠点に対応する、新しいパワー半導体技術が求められています。GaNを使用することで、高電圧アプリケーション向けにはシリコンでは提供できない、パワー・スケーリングを実現できます。産業用モーター・ドライブやグリッドタイ・エネルギ貯蓄システム向けインバータは、GaNデバイスが提供する高い電力密度から多大な恩恵を受けるでしょう。

GaNは、その他にも、将来の電源管理に新しい価値と機会を提供する、独自の未開発な特性を備えます。GaNデバイスの双方向構造は、従来のPNジャンクションMOSFETとは異なり、電流フローを2ゲート構造で制御できます。モーター・ドライバ向けのマトリックス・コンバータでは、双方向デバイスの恩恵を活用し、スイッチの数を減らせる可能性があります。さらに、GaNデバイスは、シリコン・デバイスよりも高い温度で動作し、統合モーター・ドライブなど、様々な高温度アプリケーションに最適な選択肢となります。

GaNのような画期的な技術を取り入れることで得られる長期的な恩恵には多くのものがあります。電力損失の低減は、電力需要を満たすために新たに多くの発電所を建設する必要がなくなることを意味します。高い電力密度の実現により、集積度を高めることができ、電気自動車やドローン、ロボットなどでバッテリー駆動回路を使用することで、効率を高め、稼働時間を延ばすことができます。あなたと友達や同僚を繋ぐ何千ものサーバからなるデータセンターも、より高効率で稼働させることができます。つまり、より環境に優しい生活を送ることができるのです。

参考情報

※すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年3月27日)より翻訳転載されました。
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