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新型マルチスイッチ検出インターフェイス製品『TIC12400』と『TIC12400-Q1』:より小型かつ効率的な設計のための内蔵機能【日本テキサス・インスツルメンツ】

2017年11月10日

ボディ・コントロール・モジュール(BCM)は、ドアロック、ウィンドウ、チャイム、閉センサ、車内外の照明、ワイパー、方向指示器など、車両の快適性、利便性、照明に関連する多数の機能を管理する電子制御ユニットです。具体的には図1に示すように、BCMは各種のドライバ・スイッチを監視し、車両内の対応する負荷への電力供給を制御しています。

図1:BCMのブロック図

代表的なBCMは、車載用12Vバッテリ・レベル・ドライバ・スイッチの状態を処理するマイコンで構成されています。従来、インターフェイス回路を介してマイコンに接続される信号は、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどのディスクリート受動部品を使用して実装されてきました。そのため、バッテリ・レベル電圧、静電放電(ESD)、過渡事象、バッテリ逆接続といった条件からマイコンを保護するよう注意しなければなりません。また、ウェット電流を供給することによりスイッチ入力をバイアスし、スイッチの接点を適切な状態に保つことも必要です。

図2は、グランドに接続されている外部スイッチ入力の処理方法に関する実装例を示しています。コンデンサC2はESDと過渡エネルギーをシャントし、ダイオードD1は高電圧を阻止し、抵抗R4はスイッチでのウェット電流を設定し、抵抗R4(とR8)はバッテリ・レベル電圧を分圧し、抵抗R1~R3、トランジスタQ1およびQ2、コンデンサC1、汎用入出力(GPIO)ピンはウェット電流をイネーブルまたはディスエーブルにします。

図2:ウェット電流のディスクリート実装

このディスクリート手法には、注意すべき点が3つあります。

・ウェット電流がアクティブになるように、マイコン(マイコンの電源電圧)をアクティブに維持する必要があります。これは、低消費電力モード(キーをオフにした状態)時にモジュールで消費される電流の最小値に著しく影響します。

・ソリューションには、ウェット電流を生成するためのトランジスタと抵抗に加え、各スイッチ入力用のダイオード、抵抗、コンデンサなど、多数の受動部品が必要になります。そのため、ソリューション全体のサイズが拡大します。

・ウェット電流はバッテリ電圧とともに変化します。たとえば、バッテリ電圧が30%低下した場合は、ウェット電流も30%低下します。

マルチスイッチ検出インターフェイス(MSDI)は、これらの問題すべてに対処しつつ、バッテリおよびグランドに接続されているスイッチの状態情報を集約し、シリアル・ペリフェラル・インターフェイス(SPI)を介してマイクロプロセッサに返送するデバイスです。

より小型でスペース効率に優れたソリューション向けの機能
 MSDIデバイスには、シンク電流にもソース電流にも対応する可変ウェット電流が内蔵されており、バッテリに接続されている外部スイッチ入力とグランドに接続されている外部スイッチ入力の両方に使用できます。これらの電流は内部的に監視、制御されるため、広範囲のバッテリ入力電圧にわたって電流値が一定に保たれます。MSDIスイッチ入力には負荷ダンプと逆バッテリ電圧を処理するという目的もあり、ディスクリート部品として逆止ダイオードやウェット電流部品を搭載する必要性が低下するため、基板スペースとコストを節約できます。図2に示すように実装されたディスクリート24チャネル・ソリューションでは、75個の抵抗、25個のコンデンサ、24個のダイオード、2個の外付けトランジスタを使用します。TIの『TIC12400-Q1』統合MSDIソリューションを使った同等のソリューションでは、IOピン用に24個のコンデンサ、デカップリング用に5個のコンデンサ、割り込み出力用に1個の抵抗、および1個のMSDIデバイスを使用します。

図3は、スイッチ入力でのウェット電流、逆阻止、ESDをディスクリート部品で処理するためのソリューションのサイズと、車載用マルチスイッチ検出インターフェイスのリファレンス・デザインの一部(『TIC12400-Q1』デバイスを必要なすべての外部回路とともに使用した実装例)のサイズを1対1で比較したものです。MSDIリファレンス・デザインによる2層基板での合計ソリューション・サイズは、現状では17.5mm×18.8mmです。

図3:『TIC12400-Q1』のソリューション・サイズ

より効率的な低消費電力モード向けの機能
 前述したように、低消費電力モードで外部スイッチを監視するには、マイクロプロセッサを電源オンかつアクティブな状態に維持する必要があり、つまりはマイコンのレギュレータも常にアクティブに維持しなければなりません。そのため、低消費電力モードではシステム全体の静止電流が高くなります。

MSDIデバイスは車のバッテリから直接給電されて動作するほか、低消費電力のポーリング・モードが組み込まれており、ユーザーが選択したスイッチの接点を監視できます。たとえば、『TIC12400-Q1』には低消費電力のポーリング・モードと、スイッチ状態が変化したときにレギュレータをイネーブルにできる、高電圧のオープン・ドレイン割り込み出力ピンがあります。つまり、超低消費電力のスリープ・モード用にモジュール内の他のすべての回路をオフにすることができるので、ますます厳しくなるパートナー各社のスリープ・モード時の電流要件に対応できます。

図4は、『TIC12400-Q1』が低消費電力のポーリング・モードになっているときのオシロスコープのスクリーンショットを示しています。チャネル1は開いているスイッチの接点での電圧、チャネル2はデバイスの消費電流を表しています。

図4:低消費電力のポーリング・モード(スイッチ監視あり)

ご覧のように、デバイスは、スイッチの接点の状態が変化するのを待ちつつ、ウェット電流をイネーブルにし、入力電圧を監視して低消費電力モードに戻るという動作を繰り返しています。この結果、モジュール内の他のすべての回路がディスエーブルになるため、モジュールの平均電流値は大幅に低下します。

BCM内の機能の数は年々増加しており、ウェット電流、逆阻止、ESD保護を備えたMSDIのようなインテリジェント・デバイスを追加することで、より小型のスイッチ接点監視ソリューションを実現できます。また、低消費電力モードでの消費電流の要件がさらに厳しくなるなか、『TIC12400-Q1』に組み込まれた低消費電力ポーリング・モードを利用すれば、システム全体の消費電力を最大98%まで削減できるようになります。

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年10月10日)より翻訳転載されました。

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