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車載用高精度 角度センサを開発【パナソニック】

2017年3月27日

車載モータの動きを正確に把握でき、モータの高精度制御に対応
車載用高精度 角度センサを開発

小型ながら、レゾルバ方式同等以上の高精度な回転角度を検出


【要旨】

パナソニック㈱ オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、車載用モータの回転角度を高精度に検出する角度センサ「A³MR」[1]を開発しました。高い磁界レンジに対応可能なAMR薄膜[2]と360度の角度検出が可能なホール素子[3]を内蔵した小型・高精度なセンサで、車載に要求されるISO26262(機能安全)[4]にも対応します。

【効果】

本開発品は、モータ内の回転部分が何度動いたか(回転角度)を高精度に検出します。これにより、モータの動きを正確に把握し、モータの回転速度や駆動量を管理することが可能になり、より効率的なモータ制御が実現します。さらに小型軽量で、磁界が不均一でも高精度検出ができるため、サイドシャフト検出[5]が可能で、センサの取付けが容易になります。例えば、ADAS(先進運転支援システム)[6]では、電動パワーステアリングの回転やシフトチェンジなどの操作は、モータの回転角度などによって車両の挙動に反映されており、モータを高精度に制御することでより正確な動きを実現できます。また、ISGハイブリッドシステム[7]の駆動用モータではモータの回転角度を制御することで回転ムラをなくし効率を高め燃費向上を実現することができます。

【特長】

本開発品は以下の特長を有しております。

1.小型・軽量で360度の角度を高精度に検出(角度精度:±0.1度以下、25℃時)
2.センサの配置位置の自由度が高く、設計が容易(サイドシャフト検出が可能)
3.高い磁界レンジに対応でき、ノイズ耐性に優れる(磁界レンジ:20mT ~200mT)

【内容】

本開発品は次の要素技術から構成されています。

1.磁界が不均一でも高精度に磁界の向きを検出するAMR薄膜の形成技術
2.高精度な360度検出を実現する制御回路技術

【従来例】

現在、主流のレゾルバ方式[8]は、高精度検出が可能ですが、サイズ、重量が大きく、ISO26262に対応する冗長設計[9]が困難でした。GMR[10]などの磁気センサも使用されていますが、小型であるものの、レゾルバ方式と比べると角度精度が劣り、また強い磁界がかかる環境では精度が得られないという課題がありました。市場からは、レゾルバ方式の代替が可能な、強い磁界レンジでも使用できる小型・高精度なセンサが求められています。

【用途】

車載用モータの回転角度検出(電動パワーステアリング用、ISGハイブリッドシステム用、シフトバイワイヤー[11]用など)

【実用化】

サンプル出荷予定:2017年5月、受注開始予定:2019年9月

【商品のお問合せ先】

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 デバイスソリューション事業部
https://industrial.panasonic.com/cuif/jp/contact-us?field_contact_group=691&field_contact_lineup=3439?ad=press20170327

【商品の詳細ページ】

https://industrial.panasonic.com/jp/ds/pr/a3mr_sensor?ad=press20170327

【特長の説明】

1.小型・軽量で360度の角度を高精度に検出(角度精度:±0.1度以下、25℃時)
高精度検出ができるレゾルバ方式は、かさばるコイルを使用するため、大きく重いことが課題でした。一方、AMR薄膜は磁界の向きを高精度に検出できる特長を持ちますが、極性(方向)が判別できないため、180度までの検出しかできず360度の角度検出が求められる車載用モータには採用されていませんでした。今回、当社は高精度検出ができるAMR薄膜と、極性判別が可能なホール素子を組み合わせて新たな制御回路を開発しました。これにより、小型軽量(レゾルバ方式に比べ半分以下)かつ360度の回転角度を高精度に検出するセンサを実現、車載用モータへの活用を可能にしました。

2.センサの配置位置の自由度が高く、設計が容易(サイドシャフト検出が可能)
磁気センサを使用する場合は、磁界の均一性が求められるため、磁界が安定しているモータの回転軸上の限られた領域にセンサを配置しなければなりませんが、モータ軸の設計上、制約が多いことが課題となっていました。本開発品のAMR薄膜は、磁界の強度が変動しても磁界の向きを高精度に検出できるため、回転軸上に設置する必要がありません。そのため、モータの中心軸から離れた磁界が不均一である場所でも、高精度な角度検出が可能でシステム設計が容易になります。

3.高い磁界レンジに対応でき、ノイズ耐性に優れる(磁界レンジ:20mT ~200mT)
モータからは磁界などが発生するため、モータ用センサには強い磁界環境でも使用できることが望まれますが、従来センサでは100mT程度の強い磁場を印加すると正常な機能を保つことが困難でした。本開発品は、200mTの高磁界においても高精度検出が可能で、優れたノイズ耐性を実現しています。

【内容の説明】

1.磁界が不均一でも高精度に磁界の向きを検出するAMR薄膜の形成技術
回転角度を高精度に検出するには、モータの回転により生じる磁界の向きに合わせ、常に磁区[12]の向きが揃う磁気薄膜の形成が必要です。当社では、独自のプロセス技術、薄膜形成技術により、磁区の向きが揃いやすいAMR薄膜を開発しました。磁界強度の変動が大きい環境下でも、磁区の向きが乱れないため、高精度に磁界の向きを検出することが可能です。

2.高精度な360度検出を実現する制御回路技術
本開発品は、180度の高精度検出が可能なAMR素子と、方向の判別が可能なホール素子で構成した360度の回転角度検出ができる独自の制御回路を開発しました。また、AMR素子の開発において蓄積した知見を生かして、AMR素子の異常が発生しそうな状況を把握し、故障の予兆を電子制御ユニットに知らせる自己診断機能を実現しました。さらに、ISO26262に準拠した体制で開発を推進しており、ASIL-D[13]のシステムに対応可能です。

【基本仕様】

【用語説明】

[1]角度センサ「A³MR」
車載モータの回転角度を検出するセンサ。モータの軸の回転により生じる磁界の変化によって磁気の抵抗値が変化することで回転角度を検出するしくみ。「A³MR(エーキューブエムアール)」は、当社開発品の愛称。3つのAには、“Anisotoropic(異方性の意味で、AMR素子のこと)”、“Abusolute(絶対角度を測定)”、“Accurate(高精度)”の意味がこめられている。
[2]AMR薄膜
磁気センサに用いられる素子の1種で、AMRはAnitorpic-Magneto-Resistance(異方性磁気抵抗素子)のこと。
[3]ホール素子
磁気センサに用いられる素子の1種で、ホール効果を利用した磁気センサ。ホール効果とは、電流と垂直な方向に磁場がかかった場合、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が発生する現象。
[4]ISO26262(機能安全)
自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格。機能安全とは、ある機能・部品が故障した場合でも、システムの安全性を確保できるようにすること。
[5]サイドシャフト検出
磁気センサでモータの回転角を測定する場合に、モータの回転軸上ではなく、外周に配置すること。
[6]ADAS(先進運転支援システム)
事故などの可能性を事前に検知し、回避するシステムのことで、Advanced Driver Assistance Systemの略。
[7]ISGハイブリッドシステム
スターター、ジェネレーター兼用のモータを使用するハイブリッドシステムのことで、Integrated Starter Generator Hybrid Systemの略。
[8]レゾルバ方式
モータの回転軸にコイルを複数個とりつけた構成で、電磁誘導の原理で回転角を検出する方式。
[9]冗長設計
不具合が発生した場合に備えて、予備機能をバックアップとして配置し、機能を維持し続けられるように設計すること。部品が大型の場合、限られた設置スペース内に予備機能を配置することが困難で、一般のレゾルバ方式では冗長設計は難しいとされている。
[10]GMR
磁気センサに用いられる素子の1種で、GMRはGiant Magneto Resistive(巨大磁気抵抗)のこと。
[11]シフトバイワイヤー
変速機の制御を、シャフトなどの機構ではなく、電気信号で制御するシステム。
[12]磁区
磁石の強さ(磁力の大きさ)と、その向きを表すベクトル量が全て同じ方向にある領域のこと。
[13]ASIL-D
ISO26262では、システムに欠陥があった時のリスクを分析し、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)の分類より、「A」から「D」の 4 つのレベルを設定している。ASIL-Dは、一番高いレベルの安全対策が求められる。








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