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木質バイオマスから低コストでバイオエタノール生産へ【NEDO/王子製紙】

2011年12月16日

国内最大級の試験用パイロットプラント完成
−木質バイオマスから低コストでバイオエタノール生産へ


独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、木質バイオマスからバイオエタノール(※1)を効率よく低価格で生産する技術を確立するために、広島県呉市にある王子製紙株式会社呉工場内に国内最大級の試験用パイロットプラント(※2)を建設して実証試験を開始します。
この実証試験は、2009年度から王子製紙株式会社、新日鉄エンジニアリング株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所に委託して研究開発している「セルロース系エタノール革新的生産システム開発(※3)」の一環として行うものです。
地球温暖化防止への貢献だけではなく、エネルギーセキュリティーの観点からも、木質バイオマス(未利用の枝や葉、製紙用原料として利用できない残材、短期伐採した早生樹など)からバイオエタノールの生産に関する技術開発を進めていきます。

1. 背景

バイオエタノールは、再生可能エネルギーであり、その開発や導入は地球温暖化対策として非常に重要となります。その一方で、バイオエタノールの開発や導入では、ライフサイクルアセスメント(LCA)により十分な温室効果ガス削減効果と、生物多様性、経済性や供給安定性の確保、食料競合の回避にも配慮しなければなりません。ブラジルやアメリカでは地球温暖化対策だけでなくエネルギーセキュリティーの観点からも、すでにサトウキビやとうもろこしから製造したバイオエタノールをガソリンと混合して自動車用燃料として使用しており、今後は世界各国でバイオエタノールの使用量が増加すると考えられています。しかし、サトウキビやとうもろこしなどからバイオエタノールを生産すると、食料と競合するため食料価格が高騰する問題が生じます。そこで、バイオエタノールのさらなる普及には、食料と競合しない木質バイオマス(未利用の枝や葉、製紙用原料として利用できない残材、短期伐採した早生樹など)を活用したバイオエタノールの生産技術開発が必要となります。

2. 事業の概要

(1)事業の目的
食料と競合しない木質バイオマスから、効率よく低価格でバイオエタノールを生産するために、栽培から収穫・運搬・貯蔵、糖化・発酵・蒸留を経てバイオエタノールまで至る一貫生産技術を開発します。
(2)期待できる効果
国内の産官学で培われたバイオエタノールの生産技術を駆使して、国の進める「バイオ燃料技術革新計画(2008年3月)」(※4)の目標達成と、再生可能エネルギーの普及に貢献することを目標としています。また、現在は化石資源から製造されている様々な化学製品などが、この技術を応用してバイオマスから製造可能になることで地球温暖化防止に貢献できるものと考えています。

参考:用語解説

(※1)バイオエタノール
サトウキビ、とうもろこし、小麦、テンサイ、稲わら、廃木材など植物由来の資源を発酵させて生産するエタノール。植物は生長段階で光合成により二酸化炭素を取り込んでいるため、植物由来のエタノールを燃焼させても、発生する二酸化炭素は自然界にとって差し引きゼロとみなすことができ、地球温暖化防止に役だつと考えられている。京都議定書では、バイオエタノールを燃焼させても二酸化炭素の排出量はゼロと計算される。
(※2)パイロット用試験プラント
木質バイオマスを1日あたり最大処理量は1トン使用して、バイオエタノールを250~300リットル生産することが可能なパイロットプラント。試験用パイロットプラントとしては国内最大級の規模。
(※3)「セルロース系エタノール革新的生産システム開発」
「バイオ燃料技術革新計画」における技術革新ケースに基づき、食料と競合しないバイオマス原料の栽培からバイオエタノール製造プロセスまでを一貫生産するシステムを開発するものです。本開発の成果として、2020年頃に数十万キロリットル規模でバイオエタノールの商業生産が開始され、その後は2030年に向けて更に拡大していくことが期待されています。
(※4)「バイオ燃料技術革新計画(2008年3月)」
経済産業省と農林水産省が連携して設立した「バイオ燃料技術革新協議会」(委員長:鮫島正浩 東京大学大学院農学生命科学研究科教授)がセルロース系バイオ燃料の生産についての具体的な目標、技術開発、ロードマップ等について取りまとめた計画。


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