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ルネサスとTSMCが次世代エコカー、自動運転時代を牽引する28nmマイコンの開発で協業【ルネサス エレクトロニクス】
2016年9月1日
ルネサス エレクトロニクス㈱(本社:東京都江東区、代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)と台湾積体電路製造(TSMC)(本社:台湾新竹、日本法人:TSMCジャパン㈱、横浜市西区、代表取締役:小野寺誠、以下TSMC)は本日、次世代エコカーや自動運転車に向けて、回路線幅28nm(ナノメートル:10億分の1メートル)プロセスを採用したマイコンの開発を世界に先駆けて共同で開始することを発表しました。この最新の28nmプロセスを採用した車載用マイコンは、2017年からサンプル出荷を開始し、2020年よりTSMCで量産を開始する計画です。
ルネサスとTSMCは90nmプロセス以降、フラッシュメモリ内蔵マイコンの製造委託および開発にて緊密な協業関係を構築してまいりました。4年前より開始した40nmプロセスのマイコンプラットフォームの共同開発と製造委託に続き、今回、両社は、より高効率で信頼性の高い次世代エコカーや自動運転車の実現に貢献する28nmプロセスのマイコン共同開発へと、協業の枠組みを拡大します。
今回の協業を通じて、ルネサスの高信頼かつ高速なMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)構造の混載フラッシュメモリ技術と、TSMCの高性能・低消費電力な28nm High-Kメタルゲート技術が融合し、自動運転に向けたセンサ制御、統合化した電子制御ユニット(Electronic Control Unit: ECU)、次世代エコカー向けの環境に優しい低燃費エンジン、電気自動車用の高効率モータ・インバータなど、幅広い車載アプリケーションに適した世界初の28nmマイコンを開発します。
年々厳しくなる排出ガス基準を満たすために、次世代の環境に優しい低燃費エンジンは、新たな燃焼方式を実現できる高い演算処理性能を必要とするだけではなく、大規模のファームウェアプログラムに対応するため堅牢で大容量の内蔵フラッシュメモリが必要になります。より環境に優しく、航続距離のさらなる向上が求められる電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)などの電動車両においても、モータ・インバータの高効率化や小型化に向け、高い演算性能や高集積化が求められます。
また自動運転の実現には、3次元レーダーなどのクルマ周辺のセンシング技術の高精度化、複数のセンサからのデータ統合、自動運転のためのリアルタイム判断処理などに対応可能な、高性能かつ安全性の高いマイコンが不可欠となります。自動運転を安全に制御するECUでは、フェールオペレーショナル(不測の事態に対する縮退動作)やセキュリティ、各ECU間の協調制御など、複雑な制御を高速に処理し、システム全体の低消費電力対策、機能安全への対応による高い安全性を実現する次世代制御マイコンが必要となります。
さらに、各国の環境規制や仕様にきめ細かく対応したり、より安全性の高い制御プログラムに更新可能な、無線を使ったプログラム更新技術(Over The Air: OTA)に対応するためにも、大容量のフラッシュメモリ搭載への要求が高まっています。
このように高性能で安全性の高いフラッシュメモリ内蔵マイコン技術は、Industry4.0をはじめ、将来の産業分野や社会インフラ分野など、安心・安全な社会を実現する次世代の制御技術にも必要になります。
今回の協業を通じて開発される28nmマイコンは、ルネサスの現行40nmマイコン比で最大約4倍以上のプログラムメモリ容量と4倍以上の高性能を実現し、次世代車載アプリケーションにおける様々な要求に応えることができます。また、マルチコア化やより高度なセキュリティ対応、複数のインタフェース規格の搭載も可能になります。
このたびの協業につき、ルネサスの執行役員常務の大村隆司は、「急速に進む自動運転や世界中でますます厳しくなる排ガス規制、次世代エコカーの実現に向けた技術開発など、自動車業界は今、大きな環境の変化を迎えています。今後の次世代自動車の開発を加速するためには、革新的な半導体の技術開発が必要であり、今回のTSMCとの協業による次世代マイコンの開発が、大きく寄与できると確信しております。また、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCとの協力関係は、今後の製品供給に関し、お客様にもご安心頂けるものと思います。今後はマイコンのエコシステム構築へ発展させ、マイコンのリーダーとして市場を牽引していきます。」と述べています。
またTSMCのビジネスディベロプメント担当バイスプレジデントのBJ Wooは、「ルネサスとの協力関係は、お客様の製品が最大価値を得られるよう競争力の高いテクノロジーを提供するというTSMCのコミットメントを実証するものです。TSMCの高性能でエネルギー効率が良い28nm技術を活用することで、次世代車載デバイスの要求や革新を満たすために、TSMCが高度な技術を最適化し、極めて競争力が高いコストパフォーマンスを提供することができます。」と述べています。
ルネサスのMONOS混載フラッシュメモリ技術について
MONOSは、「Metal(メタル)-Oxide(酸化膜)-Nitride(窒化膜)-Oxide(酸化膜)-Silicon(シリコン)」の略称。シリコンの上に、酸化膜/窒化膜/酸化膜の3層構造があり、その上に制御ゲート(メタル)が載った、記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造のこと。ルネサスでは、MONOS技術を20年以上前からICカード用メモリに搭載している。この実績を元に、ゲート電極を二つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造のMONOS技術「SG-MONOS」を開発し、高信頼性・高速動作・低消費電力を実現するSG-MONOS型フラッシュメモリとして、マイコンに内蔵している。
TSMCについて
TSMCは世界最大の専業ファンドリーメーカーで、業界をリードするプロセス技術、及びファンドリー業界で最大のポートフォリオであるシリコン検証済みライブラリ、IP、デザインツール、リファレンスフローなどのサービスを提供しています。2016年のTSMCのウェーハの総生産量は、900万枚(12インチ換算)を超えると予想され、それらには、先端12インチGigaFab™3拠点、8インチファブ4拠点、6インチファブ1拠点、また、子会社であるWaferTechおよびTSMC(中国)での生産量も含まれます。TSMCは、20nm、および16nmの生産キャパシティを提供する最初のファンドリーメーカーです。本社を台湾の新竹に設置しています。
詳細につきましては、www.tsmc.comをご参照ください。
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