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機能強化したオンデマンド交通システムを共同開発【東京大学/日本アイ・ビー・エム】

2011年11月21日

東京大学と日本IBM、機能強化したオンデマンド交通システムを共同開発
三重県玉城町で今月より運用開始

東京大学大学院新領域創成科学研究科 大和研究室(以下、東大新領域大和研)と日本IBM(社長:橋本孝之、NYSE:IBM、以下、日本IBM)は、このたび、東大新領域大和研が開発、運営してきた地方自治体向けオンデマンド交通システム*に、数理解析技術に基づいた新機能を盛り込んだ新バージョンを共同開発した、と発表しました。三重県玉城町において、今月より当システムが運用されています。

従来のオンデマンド交通システムにおいては、出発地・到着地・到着時間についての利用者の希望を複数同時に満足させるような運行計画が立てられます。しかし、利用者の要望は多岐にわたるため、バスの経路と時刻を最適に選ぶのは容易ではない、という運営面での課題がありました。また、2009年に東大新領域大和研が三重県玉城町で行ったオンデマンド交通システム実証実験では、利用者の多くが、サービスを利用するたびに予約を行わなくてはいけないことが不便である、と感じていることがわかりました。さらに、時間帯によっては、オンデマンド交通利用率が低く、いかに潜在的な利用者を特定して、オンデマンド交通の利用を効率的に促すことができるか、という運営側の課題も明らかになりました。

利用者の潜在的な要望をつきとめ、利用を促す仕組みの構築が求められる中、東大新領域大和研は、日本IBM東京基礎研究所の研究員と共同で、予約提案機能を備えた新しいオンデマンド交通システムを開発しました。予約提案機能により、オンデマンド交通利用者の予約履歴データから定期的な移動パターンを瞬時に探し出し、自動的に電話あるいは電子メールで次の予約の提案を行うことができるようになりました。これは単に、利用者が過去に利用したことがある利用パターンを推薦するのみならず、潜在的に利用する可能性のある利用パターンを提示することにより、オンデマンド交通の活用を効率的に促すという機能を備えています。

このロケーション推薦機能は、オンデマンド交通利用者のプロファイルを利用することなく、共通して利用した場所と時間帯から類似した利用者を特定します。たとえば、Aさん、Bさん、Cさんはオンデマンド交通を利用して町立図書館によく行く場合、人と人を結びつける場所の重みづけから、この3人は類似した人、とみなすことができます。AさんとBさんは、図書館に加えて、町の本屋にもよく行きますが、Cさんは町の本屋で降車したことがありません。図書館という場所と、町の本屋という場所は、両方とも本を扱っている、という類似点があるため、AさんとBさんが行く町の本屋さんにCさんも将来オンデマンド交通を使って行く、ということが推測されます。予約提案技術は、Cさんが過去に利用した場所と時間帯の周辺、もしくはAさんおよびBさんが過去に利用した場所と時間帯という地理空間・時空間データからCさんが将来オンデマンド交通を利用するであろう場所と時間帯の予測を瞬時に行えるため、オンデマンド交通の乗車率向上に貢献することが期待されています。

新しい機能を備えた新オンデマンド交通システムは、利用者の予約簡便性向上や乗車率向上に加え、利用するはずの日に予約のない高齢者を探索しオペレーターに知らせるといった「高齢者の見守りサービス」などへの応用の可能性が期待されています。

*オンデマンド交通システムについて
東大新領域大和研が開発、運営している、利用者のニーズに合わせたドア・ツー・ドアでの配車を、情報技術がサポートする、低コストで環境問題にも配慮した、クラウド・コンピューティングを採用した乗り合い型の交通システムです。当交通システムは、予約受付、経路の決定、そして運転手への指示を自動的にこなします。利用者は、乗り降りしたい場所や時間帯を選択することができます。利用者が電話やウェブを通じて出発地と目的地、時刻を入力すると、システムは瞬時に運行計画を更新し、利用者にその結果が伝えられます。利用者が承諾すると、更新された運行経路が乗り合いサービスを提供する車に搭載されている端末に転送されます。詳細については、以下をご参照ください。
http://www.nakl.t.u-tokyo.ac.jp/odt/index.html


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