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第37回ウィーン国際エンジンシンポジウムで新世代「TSI」を発表【フォルクスワーゲン グループ ジャパン】

2016年5月2日

新世代のTSIエンジンは、燃費効率をさらに大幅に改善
ミラーサイクルと高圧縮比の組み合わせで、燃費をさらに向上
量産ガソリンエンジン初のVTG(可変タービンジオメトリー)ターボチャージャー

ウォルフスブルク/ウィーン 21016年4月28日(木)
フォルクスワーゲンは、第37回ウィーン国際エンジンシンポジウムで、最新世代の「EA211 TSI evo」を発表しました。この次世代ガソリンエンジンの最初のモデルは1.5リッターのTSIエンジンです。低燃費と同時に高いトルクを発生するこのエンジンは、当初は96kWと110kW仕様で、2016年後半から市場に投入される予定です。この新しいエンジンには、数々の先進技術が搭載されていますが、その中でも可変タービンジオメトリーを採用したターボチャージャーは、大量生産を前提としたガソリンエンジンでは初めてとなる技術です。


今後、さらに厳しさを増していくフリートおよび排ガス規制によって、自動車用エンジンは、燃費効率やCO₂を含めた排ガスについてさらなる進化が求められています。技術面での高いハードルをクリアするために、この新しい「EA211 TSI evo」エンジンには、数々の革新技術を採用しており、それらを組み合わせることで新しい燃焼方式を実現しています。その結果、最大トルクは、とても低い回転域(1,300rpm)から幅広い作動範囲で発生できるとともに、従来のTSIエンジンと比べて100km走行あたりの燃料消費量が1リットル削減されるなど、実用燃費が大幅に向上しています。

フォルクスワーゲンは、すでに10年以上も前から、TSIテクノロジーとして直噴および過給システムを同時に用いたガソリンエンジンを提供してきました。その間、数多くの新技術を開発し、その実用化を進めてきました。シングルターボ、もしくは、ツイン(ターボ+スーパーチャージャー)過給システム、エンジン一体型インタークーラー、熱力学上のメリットが大きいシリンダーヘッド一体型エキゾーストマニホールド、4気筒エンジン初のシリンダー休止システム(アクティブシリンダーマネジメント:以下:ACT)といった技術によって、TSIエンジンは、その優れた燃費性能にさらに磨きをかけてきました。

この最新世代のエンジンでフォルクスワーゲンは、技術をさらに一歩前進させています。いくつかの主要な新技術を採用することで、この新しい「EA211 TSI evo」は、従来の1.4リッターTSI(92kW)に比べて燃費を最大10%も向上させています。ここで重要なことは、燃費がとても幅広い作動領域で改善しているということです。その結果、単にテストベンチ上だけでなく、お寵様が日々クルマを運転する中で、明確な効果が確認できるようになりました。このエンジンに採用した新しい、もしくは新たに改善した技術は下記のとおりです。

12.5:1という高圧縮比と組み合わせたミラーサイクル燃焼方式
可変タービンジオメトリー(VTG)を採用したターボチャージャー
最大350バールの噴射圧を実現したコモンレール燃料噴射システム
革新的なサーマルマネジメント(熱管理)
ACT
APS(アトモスフェリックプラズマスプレー)コーティングしたシリンダーウォール


【技術の詳細】
110kW仕様のアルミニウム製クランクケースのシリンダーライナーは、APS(アトモスフェリックプラズマスプレー)プロセスでコーティングされています。細かなパウダー状の粒子の噴射と特別に最適化した研磨方法を組み合わせることで、シリンダーライナーの内壁に潤滑油を留める微細なくぼみが形成され、その結果として、ピストンリングが壁面を滑る際の抵抗が減少、摩耗も低減します。この技術のもうひとつの特長は、通常の鋳鉄と比べて放熱効果が高い点にあり、それにより燃焼時にノッキングが発生しにくくなります。また、燃料の質が低い地域でも腐食が起こりにくいというメリットもあります。このAPS技術は、高負荷状態で冷えたエンジンを始動することが多いハイブリッドシステムに使用しても、とても優れた耐摩耗性を実現することが確認されています。

シリンダーヘッドの設計も大幅に手を加えました。放熱効果を改善するために、ウォータージャケットを最適化したほか、ミラーサイクル燃焼方式も最善の効果を発揮するよう、バルブ角度と燃焼室形状も変更しています。シリンダーヘッドとエキゾーストマニホールドを一体化した設計については、その効果が実証されているので、変更していません。従来のEA211と異なるのは、インテーク側のカムシャフトの可変調整に中央のバルブで制御する高速油圧カムシャフトアクチュエーターを採用している点です。1秒間にクランク角で300°の調整速度を可能にしたこのメカニズムにより、シリンダーへの空気の充填が、よりダイナミックに制御できるようになりました。

ACTは、可変バルブタイミングと同じく、「EA211」シリーズのアッセンブリーキットに含まれる技術のひとつですが、今回さらなる改善を行ったことで、「EA211 TSI evo」では、大量生産向けエンジンにも採用できるようになりました。この技術も燃費の改善に大きな効果があり、それはお寵様にとっても実感できるものです。具体的には、中負荷以下の作動領域で、2番および3番シリンダーの吸排気バルブを閉じて、同時に燃料の噴射も休止します。

また、新しくプログラム制御されたクーリングモジュール(冷却機構)によって、より効率的なサーマルマネジメントを実現しています。このクーリングモジュールの特徴のひとつは、エンジンの暖気が完了するまでの間、クランクケースとエンジン内の冷却水を循環させないことです。これにより、暖機時間が短縮され、室内の暖房もより迅速に行われ、さらに、暖機中のエンジンの内部抵抗も削減されます。プログラム制御されたクーリングモジュールのもうひとつのメリットは、あらゆる作動状況で、必要に応じた細かな冷却制御が可能になる点です。

「EA211 TSI evo」のもうひとつの技術的な特徴は、摩擦を削減するための様々な対策を導入していることです。例えば、オイルポンプはプログラム制御を採用したフル可変式になっており、クランクシャフトの第1メインベアリングには、抵抗を減らすためのポリマーコーティングを施しました。また、エンジンオイルを粘度の低い0W-20規格に変更しています。しかし、「EA211 TSI evo」の主要技術は、なんといっても、ミラーサイクルを応用した新しい燃焼方式にあります。熱力学上の効率改善については、以下の4つの開発目標を掲げることで体系的に達成しています。

圧縮比を高めることで日常的な使用状況での燃費を改善すること
早めに吸気バルブを閉じることで最終圧縮温度を下げて、吸気工程での膨張冷却を実現すること
過給工程を最適化することで火炎伝播速度を高め、高負荷運転時のノック傾向を抑制すること
ターボチャージャーを効率化することで充填密度を高めること

「EA211 TSI evo」に採用した世界初の技術のひとつが、電動式の可変タービンジオメトリー(VTG)を備えたターボチャージャーです。ミラーサイクル燃焼方式では、吸気バルブを早いタイミングで閉じるため、充填効率は、通常のバルブタイミングを採用したエンジンよりも低下します。中間的な負荷領域では、それによりスロットル開度を下げたのと同じ効果を生み、燃料消費量を削減します。その一方で、過給圧を高めることで、ミラーサイクル特有の短い実効ピストンストローク量が補われて、低い回転域でも大きなトルクを発生できるようになります。特に低速域では、トルクの発生にターボが果たす役割は大きくなっています。可変タービンジオメトリーを採用したターボチャージャーは、作動状況に適.したタービンフローを提供することで、低いエンジン回転数でも高いタービン出力、つまり高い過給圧を実現できます。VTGタービンによって向上したアキュムレーション効果と慣性モーメントを低減したターボチャージャーを組み合わせることで、より俊敏なレスポンスも得られるようになりました。従来の1.4リッターTSI(92kW仕様)と比較すると、アクセルを踏み込んでから最大トルクが得られるまでの時間が約35%も短縮しています。この効果により、VTGターボチャージャーは、「EA211 TSI evo」の燃焼プロセスの根幹をなす技術といっても良いでしょう。

さらに、インタークーラーシステムも改善を図りました。従来のEA211エンジンとは異なり、インタークーラーはコンプレッサーアウトレットの下流、つまり、スロットルバルブの手前のプレッシャーパイプに設置しています。これにより、スロットルバルブ自体にも冷却効果が及ぶようになりました。この新しいレイアウトによって、全体の寸法をコンパクトに保ったまま、インタークーラーのサイズと能力を向上させることができました。エンジンに送られる空気の温度は、大気+15ケルビンというレベルにまで下がっています。

燃料噴射システムも、第4世代となるフォルクスワーゲンの直噴システムを初めて採用しています。噴射圧は、システム全体および各コンポーネントの最適化によって、350バールまで高めることに成功しました。その結果、燃料の粒子が小さく、空気とより良く混合するようになって、微粒子の排出量を大幅に削減できました。また、この新しい設計により、インジェクター先端部の径が6mmにまで縮小し、燃焼室への搭載が容易になり、剛性も高まって、インジェクタープレートの温度も低下しています。








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