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世界初、連続発振4.5Wの高出力青紫半導体レーザを開発【パナソニック】

2015年9月29日

車載・産業用照明、レーザ加工機等の小型/省エネ化に貢献
世界初、連続発振4.5W※1の高出力青紫半導体レーザを開発
独自の両面放熱構造で熱伝導を従来※2の約1.6倍まで高め、光出力を向上

【要旨】

パナソニック㈱オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、両面放熱構造で素子の信頼性を高め、一般的にレーザ動作温度の上限である60℃においても従来※2の1.5倍となる4.5Wの高出力動作が可能な青紫半導体レーザを開発しました。本開発は、車載・産業用照明やレーザ加工機など半導体レーザ応用システムの小型、低消費電力化に貢献します。

【効果】

本開発技術は、青紫半導体レーザの発熱による温度上昇を抑制します。その結果、温度上昇に伴うレーザの光出力低下を抑制し、高出力/高効率動作が可能になります。複数個のレーザを用いる半導体レーザ応用システムに応用することで、搭載数を従来の2/3に削減し、光源部、更には放熱板を小さくでき、システムの小型化、軽量化に貢献します。また消費電力を削減し、システムの省エネ化を推進します。

【特長】

本開発は以下の特長を有しています。
1. 高出力/高効率 : 最大光出力4.5W(従来比1.5倍)、電力変換効率[1]33%(同1.2倍※3
2. 高信頼性 : 青紫半導体レーザ素子に加わる歪を抑制

【内容】

本製品は以下の技術によって実現しました。
1. レーザ素子の両面に放熱経路を形成することにより、素子からの熱伝導を従来の約1.6倍まで高めた高放熱構造(熱抵抗[2]
  今回6.6K/W、従来10.5K/W)
2. レーザ素子と同等の熱膨張率[3]を有する窒化アルミニウムを用いた低歪放熱ブロック[4]構造

【従来例】

一般に半導体レーザは素子温度が上昇すると光出力が低下します。更に、素子温度が素子信頼性を決めるため、実用上使用可能な光出力は素子温度により制限されます。従来の青紫半導体レーザでは素子片面からの放熱であったため、素子温度が上昇し、出力は3W級が限界でした。このため、数十W以上が必要な半導体レーザ応用システムでは搭載数が増加し、放熱板を大きくする必要がありました。この課題を解決するため、レーザ単体での高出力化が求められていました。

【用途】

産業/施設照明、車載用ヘッドランプ、レーザ加工機などの半導体レーザ応用システム

【特許】

国内 23件、海外 31件 (出願中も含む)

【備考】

本開発の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業「戦略的省エネルギー技術革新プログラム /高効率スポット照明用レーザ光源の開発」の結果得られたものです。


※1 実用上使用可能な動作温度60℃連続発振状態において(2015年9月29日現在、当社調べ)
※2 従来構造での当社開発品比(動作温度60℃時)
※3 動作温度60℃、光出力3W時


【特長の説明】

1. 高出力/高効率 : 最大光出力4.5W(従来比1.5倍)、電力変換効率[1]33%(同1.2倍)
今回、発熱が生じても素子温度の上昇を低く抑えることに成功し、光出力として最大4.5Wを得ることに成功しました。また、高出力化に伴う電力変換効率の低下も抑制され、3W光出力時の電力変換効率は33%を得ています。本技術を用いない開発品では、最大光出力3W、電力変換効率28%でした。従って、本開発により最大光出力は1.5倍、3W光出力時の電力変換効率は1.2倍に向上し、半導体レーザ応用システムの光源部の搭載レーザ数の削減や、低消費電力化に貢献します。

2. 高信頼性 : 青紫半導体レーザ素子に加わる歪を抑制
レーザ素子の温度を下げる手段として、放熱ブロックに銅などの熱伝導性の高い金属を素子に取り付ける場合があります。しかし、素子の材料である半導体の熱膨張率は、金属の同係数と大きく異なるため、動作温度変化により、素子に大きな歪が加わって、欠陥 [5]が発生し、信頼性を低下させる要因になっていました。今回の構造では歪が抑制されており、高い信頼性を得ることができます。

【内容の説明】

1. レーザ素子の両面に放熱経路を形成することにより、素子からの熱伝導を従来の約1.6倍まで高めた高放熱構造(熱抵抗 今回6.6K/W、従来10.5K/W)
レーザ素子の温度は、「動作温度」と「熱抵抗×発熱」の和です。これまでワット級青紫レーザは熱抵抗が大きく、光出力増加に伴う発熱によって素子温度が上昇します。素子の温度が高いと、キャリアオーバーフロー[6]などにより、内部量子効率[7]が低下します。従来品では、発熱の放熱経路は素子実装面の片面しかなく、放熱は不十分で熱抵抗10.5K/Wと大きい状態でした。そこで今回、素子のワイヤーボンド面にも放熱ブロックを形成しました。これにより、素子からの放熱経路が上下両面となり、熱抵抗を6.6K/Wまで下げ、熱伝導を1.6倍に向上させることに成功しました。

2. レーザ素子と同等の熱膨張率を有する窒化アルミニウムを用いた低歪放熱ブロック構造
レーザ素子と同じ窒化物材料である窒化アルミニウムを放熱ブロックに用いることで、熱膨張率差による応力を、銅放熱ブロック使用時に比べ1/10に抑制しました。また、窒化アルミニウムは窒化物材料の中で最も熱伝導が高く、高い放熱性が得られます。反面、窒化アルミニウムは高抵抗(絶縁体)であるため、電気接続が難しくなります。今回、素子やサブマウントと接触をする各表面や内部に電極を有し、それらの電極と表面をビアホール[8]で電気的接続した立体配線を放熱ブロックの内部に作りこみました。これにより、高抵抗窒化アルミニウムを放熱ブロックに用いた場合でも電気接続ができ、素子のワイヤーボンド面に窒化アルミニウム放熱ブロックを形成することが可能になりました。


【用語の説明】

[1]電力変換効率
光出力を投入電力(=電圧×電流)で割った値です。数値が大きいほど、少ない投入電力で大きな光出力が得られます。

[2]熱抵抗
発生した熱に対する温度上昇を示します。値が小さいほど、同じ発生熱でも、温度上昇は小さくなります。逆数が熱伝導性を示します。

[3]熱膨張率
ある材料の温度を上げた時、その材料が膨らむ割合を示します。係数が異なる材料の境には温度変化時に圧縮または引っ張りの歪が発生します。

[4]放熱ブロック
半導体レーザ素子に取り付けて、熱を素子内から外部に逃がす部品です。

[5]欠陥
半導体レーザ素子の内部では、電子と正孔(多数の電子で埋まった状態において、ところどころ電子が無い部分)が発光層内で結合して光を放射します。その素子を形作る半導体結晶に欠陥があると、その欠陥を介して電子と正孔が結合しエネルギーを熱として放出するため、光ることが困難になります。

[6] キャリアオーバーフロー
素子温度が高いと発光層から、電子があふれ出て、発光に寄与しなくなり発熱の原因となります。この電子があふれ出た状態がキャリアオーバーフローです。

[7]内部量子効率
半導体レーザ素子に流れ込む電子の数と、放出された光(光子)の数の比率です。数値が大きいほど、無駄が少なく、電気から光に変換されます。

[8]ビアホール(Via hole)
絶縁体に穴をあけ、その穴の内部に金属を埋め込んだ構造です。その金属を通じて、電気的導通を取ることができます。



プレスリリースの内容は発表時のものです。
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