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カプロラクタム合成用光反応ランプのLED化による省エネルギーの推進について【東レ】
2015年6月16日
東レ㈱(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、ナイロン6の原料であるカプロラクタムの合成において、東芝ライテック㈱(本社:神奈川県横須賀市、社長:揖斐洋一、以下「東芝ライテック」)と共同により、工程で使用するナトリウムランプを新開発のLEDランプに切り替えることで、電力の使用量を30%削減する技術を開発しました。
繊維や樹脂として衣料品や産業資材、自動車および電機部品など様々な用途で使われているナイロン6は、カプロラクタムを原料として作られますが、東レはこのカプロラクタムを光反応技術を用いて年間約10万トン製造しています。
光反応技術とは、光反応用のランプから出る光子で塩化ニトロシル(NOCl)を解離させてラジカルを発生させ、中間体であるオキシム(※1)を経てカプロラクタムを製造する技術で、東レが開発した独創的な技術です。
従来、この光反応用のランプには、東芝ライテックのナトリウムランプを使用してきましたが、省エネルギーを目的として2009年から消費電力の小さなLEDランプの共同研究に取り組み、2011年の生産機用LEDランプの完成とその後の実機適用技術の開発を経て、2015年11月から既存設備の切り替えを本格的に開始します。
カプロラクタムの製造において光反応を行うためには、分子の結合エネルギーを解離させるための光子エネルギーが必要であり、特にNOClを解離させるために望ましい波長は、可視光の中でも長波長の範囲です。今回開発したLEDランプはレッドオレンジで、最も望ましい波長の光となっています。また、既存のナトリウムランプは短波長から長波長の間に波長のピークが複数あるためエネルギーのロスがありますが、LEDランプの場合はピークが集中しているため全エネルギーをNOClの解離に有効利用することが可能というメリットがあります。
一方、今回開発したLEDランプは、通常市販されているランプと比較すると、長さが約20倍、出力が6千倍あり、LED発光素子数は4万個と世界最大です。この数の素子をランプの中にコンパクトに収めるためには、素子の高密度化とそれに伴う除熱、また定電流制御装置(※2)の極小化が最大の課題でしたが、共同研究による水冷ヒートシンクの開発をはじめとする数多くのブレークスルーにより、新開発のLEDランプを実用化することに世界で初めて成功しました。
カプロラクタム合成用光反応ランプに関する東レと東芝グループとの取り組みは、1961年に「光化学用水銀灯の共同研究」を締結して以降半世紀が経過しており、これまでに両社が打ち合わせを行う「ランプ連絡会」の開催は400回を超える数になっています。この間、メタルハライドランプ実用化、ナトリウムランプ実用化と効率改善に関する、日本照明賞や資源エネルギー長官賞などの受賞実績があります。
しかし、現状の放電灯方式では限界にあることから新光源への転換を目標とし、2009年に「発光ダイオードを用いた光化学光源の共同研究」を締結し、開発に取り組んできました。
東レは、中期経営課題”プロジェクト AP-G 2016″で進める全社プロジェクトの一つとして「トータルコスト競争力強化(TC-Ⅲ)プロジェクト」を掲げ、生産プロセス革新等による弛まぬ体質強化を図り、強靱な企業体質を確保して、世界トップレベルのコスト競争力を目指しています。光反応ランプのLED化は、他社連携を通して生産プロセス革新を実現した事例であり、大幅な電力省エネ、温室効果ガスの排出削減が図られます。
東レは今後も、コーポレートスローガンである”Innovation by Chemistry”のもと、持続可能な循環型社会の発展に向け、省エネルギーによる温室効果ガスの削減を強力に推進していく所存です。
(用語解説)
※1 : オキシム
カプロラクタム合成の中間体であり、オキシムを転位させてカプロラクタムを得る。
※2 : 定電流制御装置
LED素子の過電流を防止するために電流を一定に制御する装置。
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