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突発的な部品入荷不足や装置故障による将来の生産量への影響を予測する統計モデルを用いた生産管理技術を開発 【日立製作所】

2011年9月6日

〜数万点の部品からなるプラント用製品の1カ月先の生産量の変動を90%の精度で予測〜

株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、突発的な部品の入荷不足や装置の故障が発生した際に生じる将来の生産量の変動を統計モデルを用いて予測する生産管理技術を開発しました。予測したデータに基づき、迅速に適正な挽回策を講じることで、納期の遅延や歩留まりの低下を抑制します。本技術は、各生産工程でばらつきのある作業時間や生産数などを統計モデルに基づき高い精度でデータ化し、CV値*1を用いて生産シミュレーションを行うことで、突発的な生産変動に伴う後工程への影響を可視化するものです。部品点数が数万点のプラント用製品の生産管理に適用したところ、1カ月先の生産量の変動を90%の精度で予測できることを確認しました。将来の生産量の変動を高い精度で予測することで、ボトルネックとなる生産工程に装置を追加したり、作業員を増員するといった対策を講じ、納期の遅延や歩留まりの低下を抑制することが可能となります。今後、本技術を日立グループ内のプラント用製品の生産管理に活用し適用工程の拡大を図り、2年後を目処として、生産管理のコンサルティング事業を開始する予定です。

近年、ビジネスのグローバル化とともに、世界に広がる生産拠点や物流に予期せぬトラブルや災害が生じたときにも、その影響を最小限に抑える柔軟で強固なサプライチェーンが求められています。通常の生産工程では、入荷可能な部品数量を見積もり、工程ごとに生産管理を行っていますが、上流工程で突発的な部品の入荷不足や装置の故障が発生すると、後工程で部品の供給不足や工程の遅延が起こり、最終的には納期が遅延し、歩留まりが低下します。

そこで、日立は、部品の入荷不足や装置の故障といったトラブルが発生した際に、生産工程で将来生じる生産量の変動を、統計モデルを用いて高い精度で予測する生産管理技術を開発しました。予測したデータに基づき、迅速に適正な挽回策を講じることで、納期の遅延や歩留まりの低下を抑制します。開発した技術の特徴は、以下の通りです。

1. 将来の生産量の変動を予測

作業に要する時間や一日に処理ができる個数には、製品の生産工程ごとにばらつきがあります。そこで、ばらつきのある作業時間や生産数などに統計モデルを用いて、工程別に高い精度でデータ化します。データ化した作業時間や生産数をもとに、CV値を用いて生産工程全体のシミュレーションを行うことで、サプライチェーンの上流工程で発生した生産量の変動が後工程へ波及する状況を予測し可視化します。

2. プラント用製品など少量生産製品への適用が可能

少ないデータでも統計処理を行える多変量解析理論*2を導入することにより、量産製品だけでなく、1製品あたり数万点の部品からなるプラント用製品などの少量生産製品に適用することができます。

本技術を、プラント用製品に適用したところ、1カ月先の生産状況を90%の精度で予測できることを確認しました。また、部品点数が数十点で、年間生産数が数百万台の量産工程では、1カ月先の生産状況を96%の精度で予測できました。突発的な装置の故障が発生した際には、生産状況の予測に応じて挽回策を講じた結果、挽回策を講じない場合に比べ装置の稼働率が15%、納期遵守率が8%向上することを実証しました。

*1 CV値 : Coefficient of Variation値。変動係数とよび、物事のバラツキを表す指標。この変動係数を用いれば、工程ごとに時間当たりの生産数などが異なっていても、それぞれの工程に生じた生産変動を一律に表すことができる。

*2 多変量解析理論 : 複数の変数に関するデータをもとにして、これら変数間の相互関連を分析する統計的理論。部品や作業の種類によって作業時間が変化する課題に対して、収集した作業時間のデータから、部品の大きさ、加工箇所数、作業者の熟練度など、作業時間を決定する因子を本理論を用いて求めることができる。


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