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2026.08.04
横浜ゴム、世界で初めてゴムとスチールコードの接着・劣化抑制メカニズムをナノレベルで解明
2026年6月30日
横浜ゴム、世界で初めてゴムとスチールコードの
接着・劣化抑制メカニズムをナノレベルで解明
~タイヤの安全性・耐久性向上に向けた分子・材料設計に道筋~
横浜ゴム(株)は、東北大学多元物質科学研究所(以下、東北大学)との共同研究により、タイヤの補強材であるスチールコードとゴムの接着界面における、有機酸コバルト※1の接着性および耐劣化性向上のメカニズムをナノレベル※2で解明することに成功しました。本研究成果は、タイヤの安全性や耐久性を高めつつ、環境規制や供給リスクへの対応を見据えた次世代タイヤ開発において、重要な分子・材料設計指針となる知見です。なお、本成果は2026年6月5日付で、学術誌「Rubber Chemistry and Technology」に掲載されました。
乗用車、トラック・バス、農業機械・建設車両などに使用されるタイヤには、高い剛性と形状保持性を確保するため、黄銅※3めっきが施されたスチールコード(金属)が補強材として用いられています。ゴムと金属の接着界面の剥離は、バーストなどの重大な構造破壊につながるため、強固な初期接着性と長期的な耐環境劣化性が求められます。現在、これらの性能を満たすためステアリン酸コバルトに代表される金属触媒をゴム中に配合する手法が広く用いられていますが、長期的にはゴムの酸化劣化を促進する「金属害」を引き起こす懸念があります。また、コバルトは健康面への懸念や供給リスクの高い希少資源でもあり、さらに環境規制強化の観点からも、代替技術や使用量最適化の確立が課題となっています。
本研究では、ステアリン酸コバルトを添加した天然ゴムに黄銅めっきスチールコードを埋め込み、加硫接着した試料を作製し、走査透過電子顕微鏡※4を用いた詳細な界面解析を行いました。その結果、加硫後の接着界面にコバルトが高濃度で局在しているだけでなく硫化コバルト※5として存在することを世界で初めて直接観察しました。また、この硫化コバルトが、黄銅めっきからゴム内部への銅と亜鉛の溶出および破壊の起点となる黄銅内部の空隙形成を抑えるバリア層として機能することで、ゴムとスチールコードの接着性・耐劣化性の向上に寄与することを明らかにしました。さらに、高温高湿環境下で劣化させた試料では、主に硫化コバルトのバリア層が疎な領域で、銅と亜鉛の溶出や空隙の拡大が確認されました。
本成果は、従来は経験則に基づく部分が大きかったゴムとスチールコードの接着界面設計について、科学的知見に基づく分子設計・材料設計指針を与えるものです。横浜ゴムは今後、本研究で得られた知見を活用し、より安全性と耐久性に優れたタイヤの開発を進めるとともに、環境負荷や供給リスクの低減に資する材料技術の研究開発を推進していきます。
横浜ゴムは、2024年度から2026年度までの中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーロク)の技術・生産戦略において、「よいものを、安く、スピーディーに」をモットーに横浜ゴムグループ全体の基盤強化に取り組んでいます。その一環として、長年培ってきたゴム材料技術やタイヤ設計技術の高度化に取り組むとともに、大学や研究機関との共同研究を推進しています。
※1:有機酸コバルト:ステアリン酸やナフテン酸などの有機酸とコバルトが結合した有機金属塩の総称。
※2:ナノレベル:100万分の1ミリメートル単位。
※3:黄銅:銅と亜鉛の合金。スチールコード表面へのめっき材料として用いられており、加硫工程において硫黄と反応することでゴムとの強固な接着界面層を形成する。
※4:走査透過電子顕微鏡法:ナノメートル以下に極細く絞った電子線を試料に照射・走査し、試料を透過・散乱した電子を検出して、原子~ナノスケールの超高分解能で内部組織を観察・分析する手法。
※5:硫化コバルト:コバルトと硫黄からなる化合物。
有機酸コバルトを添加したゴムと黄銅めっきスチールコードの接着界面の走査透過電子顕微鏡像(白黒表示)とコバルト分布(ピンク表示) |
高温高湿環境下で劣化処理したゴム-黄銅接着界面の走査透過電子顕微鏡像(白黒表示)とコバルト分布(ピンク表示)。劣化した接着界面では、主として硫化コバルトのバリア層が疎な領域を通じて銅と亜鉛の溶出が起こり、黄銅内部の空隙が拡大した様子が観察されている。 |
【論文情報】
タイトル:Nanoscale distribution and role of cobalt at the interface between brass-coated steel wire and rubber
著者:Yohei K. Sato, Tomohiro Miyata*, Katsunori Shimizu*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 宮田智衆、横浜ゴム株式会社 主幹 清水克典(工学博士)
掲載誌:Rubber Chemistry and Technology
DOI:10.5254/rct.25.00050
URL:https://doi.org/10.5254/rct.25.00050
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