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2025.07.16

マクセルが全固体電池の長寿命化に向け容量劣化メカニズムを解明

2025年6月19日

  

  

マクセルが全固体電池の長寿命化に向け容量劣化メカニズムを解明
持続可能な社会の実現に向け、安全性・信頼性に優れた全固体電池の開発へ

  

  

 マクセル株式会社(取締役社長:中村 啓次/以下、マクセル)は、次世代電池技術の要として注目 される硫化物系全固体電池における容量劣化のメカニズムを明らかにしました。

 全固体電池は理論的に長寿命で寿命予測がしやすいと想定されていますが、実際に長寿命化を 実現するためには容量劣化メカニズムの解明とそれに基づく寿命予測が重要です。

 マクセルが、全固体電池の容量劣化メカニズムを詳細に分析した結果、材料自体はほとんど劣化 せず、電極間の SOC(State Of Charge)バランスずれ*1 が主な容量減少要因であることが判明しま した。また、対称セル*2 を用いた実験により、電極固有の副反応速度を定量化することに成功し、 全固体電池における副反応電流が液系電池より 1 桁以上低いことを実証しました。つまり、全固体 電池が本質的に寿命特性に優れるのは、電極での副反応電流が非常に低いことに起因することが 明らかになりました。
 さらに、全固体電池においては、105°C においても液系電解液で観測されるクロストーク反応*3 が みられず、副反応速度を見積もる場合に、材料固有の副反応電流のみを考慮するだけで良いことが 分かりました。これにより、従来の液系リチウムイオン電池と比較し、寿命予測が容易になる可能性を 示しました。

  


液系リチウムイオン電池と全固体電池の反応様式の差

  

 本研究では全固体電池の容量劣化メカニズムを解明し、さらに電池容量の減少速度について速 度論的解析を行っており、これら一連の成果は、全固体電池において定量的かつ理論的な寿命予 測の道を拓くものです。今後、副反応生成物などが明らかになっていくことで、寿命予測にもとづい た安全性・信頼性に優れた全固体電池の設計が可能になることが期待されます。
 本研究成果は、「Journal of Power Sources」に論文掲載されています。

  

 マクセルは、本技術を応用し、150°C 耐熱の全固体電池開発を継続するとともに、今後電気自動 車などの次世代モビリティ、再生可能エネルギーの蓄電システム、インフラ監視用 IoT センサー電源、 産業機器の長期メンテナンスフリー電源、過酷環境で使用される特殊機器などの分野に向け開発を 進めていきます。今後も持続可能な社会の実現に向け、全固体電池のさらなる性能向上と量産技術 の確立に取り組みます。

  

*1 SOC(State Of Charge)バランスずれ:電極上で起こる電解液や電解質の分解反応により、正負極間で電池反応の電流効率が変化 してしまい、両極の SOC 利用領域が変化する現象

*2 対称セル:正負極が同一の電極で構成された基礎検証用セル

*3 クロストーク反応:電極極上で生成した副反応生成物が対極へ移動することによって、対極の反応量を増加させる現象

  

■掲載論文

 K. Furukawa, M. Yamada, K. Ariyoshi, Journal of Power Sources, Volume 643, 1 July 2025, “Quantitative analysis of side-reaction rates and capacity fading mechanisms in allsolid-state Li-ion batteries”
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378775325008377

  

■商標

 記載されている名称、ロゴ、サービスマークは、マクセルまたは他社の登録商標もしくは商標です。

  

■本研究に関するお問い合わせ先
 マクセル株式会社 営業統括本部
 お問い合わせフォーム:https://biz.maxell.com/ja/rechargeable_batteries/inquiry_form_input1.html

  

  

  

以上

  

  

  

  

  

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