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2025.05.30

OBCのデファクトスタンダードへ!高電力密度の新型SiCモジュールを開発【ローム】

2025年4月24日

  

  

OBCのデファクトスタンダードへ!高電力密度の新型SiCモジュールを開発
SiCモールドタイプモジュール「HSDIP20」

  

  

  

要旨

ローム株式会社(本社:京都市)は、xEV(電動車)用オンボードチャージャー(以下、OBC)のPFC(*1)やLLCコンバータ(*2)に最適な4in1及び6in1構成のSiCモールドタイプモジュール「HSDIP20」を開発しました。HSDIP20は、750V耐圧品で6品番(BSTxxx1P4K01)、1,200V耐圧品で7品番(BSTxxx2P4K01)をラインアップ。様々なハイパワーアプリケーションの電力変換回路で求められる基本回路を小型のモジュールパッケージに内蔵しているため、メーカーの設計工数削減とOBC等における電力変換回路の小型化に貢献します。


SiCモールドタイプモジュールHSDIP20パッケージ

HSDIP20は、高い放熱性能の絶縁基板を内蔵しているため、大電力動作時でもチップ温度の上昇が抑制されます。実際に、OBCで一般的に採用されるPFC回路(SiC MOSFETを6点使用)において、上面放熱タイプのディスクリート6点と6in1構成のHSDIP20、1点を同条件で比較すると、HSDIP20が約38℃低い温度であることが確認されました(25W動作時)。また、この高い放熱性能により、小型パッケージでありながら大電流対応を実現。上面放熱タイプのディスクリートと比べて3倍以上、同じDIPタイプモジュールと比較しても1.4倍以上となる業界トップクラス(※)の電力密度を達成しています。これにより、上述したPFC回路において、HSDIP20は上面放熱タイプのディスクリートよりも実装面積を約52%削減できるため、OBC等における電力変換回路の小型化に大きく貢献します。

  


PFC回路における上面放熱タイプのディスクリートとHSDIP20の比較

新製品は、2025年4月より当面月産10万個の体制で量産(サンプル価格:15,000円/個:税抜)を開始しており、生産拠点は前工程がローム・アポロ筑後工場(福岡県)及びラピスセミコンダクタ宮崎工場(宮崎県)、後工程がROHM Integrated Systems (Thailand)Co., Ltd.(タイ)です。サンプルについては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。

  

ニュースリリース

  

※2025年4月24日現在 ローム調べ

  

  

背景

近年、脱炭素社会の実現に向けて自動車の電動化が急速に進んでいます。また、電動車においては、走行距離の延伸や充電速度の向上を目的としてバッテリーの高電圧化が進んでおり、それに伴いOBCやDC-DCにも出力向上が求められています。一方市場からは、これらのアプリケーションに対して小型化や軽量化も求められており、そのカギとなる電力密度向上と、それを阻害する放熱性能改善への技術的ブレイクスルーが求められていました。ロームが開発したHSDIP20は、まさにディスクリート構成では難しくなりつつあったこの技術課題をクリアするものであり、電動パワートレインの高出力化と小型化に貢献します。今後ロームは、小型化と高効率化を両立するSiCモジュールの製品開発を進めるとともに、さらなる小型化や高信頼化が可能となる車載向けSiC IPMの開発にも注力します。

  

  

製品ラインアップ

  


SiCモールドタイプモジュールHSDIP20パッケージ製品ラインアップ

  

  

アプリケーション例

PFCやLLCコンバータ等の電力変換回路は、産業機器分野の一次側回路においても多く存在しているため、HSDIP20は、産業機器分野や民生機器分野においてもアプリケーションの小型化に貢献可能です。

  

車載機器

・オンボードチャージャー(OBC)
・DC-DCコンバータ
・電動コンプレッサ など

  

産業機器

・EV充電ステーション
・V2Xシステム
・ACサーボ
・サーバー電源
・PVインバータ
・パワーコンディショナ など

  

  

サポート情報

ロームは、自社内にモーター試験装置を備えるなど、アプリケーションレベルのサポートに注力しています。HSDIP20の製品を素早く評価・導入していただくための各種サポートコンテンツも準備しており、シミュレーションや熱設計まで含めて、豊富なソリューションで迅速な採用をサポートします。また、ダブルパルステスト用と3相フルブリッジ用に2種類の評価キットを用意しており、実際の回路条件に近い状態で評価することが可能です。

詳細につきましては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。


HSDIP20の評価キットについて

  

  

「EcoSiC™(エコエスアイシー)」ブランドについて

EcoSiC™は、パワーデバイス分野においてシリコン(Si)を上回る性能で注目されている、シリコンカーバイド(SiC)素材を採用したデバイスのブランドです。ロームは、ウエハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理方法に至るまで、SiCの進化に不可欠な技術を独自で開発しています。また、製造工程においても一貫生産体制を採用しており、SiC分野のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。

  

EcoSiC™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。


「EcoSiC™」ブランド

  

  

用語説明

  

*1)PFC(Power Factor Correction) / 力率改善

電源回路において入力電力の波形を改善し、力率を向上させる回路。PFC回路を用いることで、入力電力を正弦波(力率=1)に近づけ、電力変換効率を向上する。PFC回路は、ダイオードで整流を行う回路が基本的な構成であるが、OBCにおいては、整流にMOSFETを使用したアクティブブリッジ整流、あるいはブリッジレスPFCが採用されることが多い。これは、MOSFETの方がスイッチング時の損失が低く、特にハイパワーのPFCにおいてはSiC MOSFETを使用することで発熱の低減や電力損失の削減が可能となるためである。

  

*2)LLCコンバータ

高効率かつ低ノイズの電力変換を実現する共振型DC-DCコンバータの一種。回路内にインダクタ(L)2つとキャパシタ(C)を組み合わせる構成が基本的な構成であることから、LLCコンバータと呼ばれている。共振回路を形成することで、スイッチング損失を大幅に低減できるため、OBCや産業機器向け電源、サーバー電源などの高効率が求められるアプリケーションで使用される。

  

新製品の量産にあたり、ロームはベースとしている一貫生産体制で培ったデバイス設計の技術やノウハウを活かして、設計及び企画を行いました。そして、2024年12月10日に発表したTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC)との協業の一環として、前工程はTSMCで生産し、後工程はATX社で生産しています。なお、ATX社とは車載向けGaNデバイスの生産においても協業を予定しています。車載分野におけるGaNデバイスの採用は2026年から加速すると予想されていますが、ロームは、自社での開発に加えて、これらの関係も強化することで、車載向けGaNデバイスの迅速な市場投入を実現する計画です。

※2025年1月30日ローム調べ

  

  

ATX SEMICONDUCTOR (WEIHAI) CO., LTD. 董事兼総経理 廖弘昌

ウエハ製造からパッケージングまで自社に生産設備を持ち、高い製造技術を持つロームから生産委託されたことを非常にうれしく思います。ロームとは、2017年に技術交流を開始し、現在も引き続き、より深い協力の可能性を模索しています。そして、GaNデバイスの後工程製造におけるATX社の実績や技術力を評価いただいたことから今回協業に至りました。そして、ロームが現在開発中の車載用GaNデバイスについても協業を予定しており、今後も様々な分野での省エネ推進と持続可能な社会の実現に貢献すべく、パートナーシップを強化してまいります。

  

ローム株式会社 AP生産本部 本部長 藤谷 諭

ロームの650V GaN HEMTのTOLLパッケージ品を満足できる性能で生産できたことを大変うれしく思います。ロームは、GaNデバイスを単体で提供するだけではなく、強みであるアナログ技術をベースとしたICなどと組み合わせたパワーソリューションを提供しており、これらの設計で培ったノウハウや思想をデバイス設計にも活かしています。そして、ATX社のような高い技術力を持つOSATと協業することで、急成長しているGaN市場に追従しながら、我々の強みを活かしたデバイスを製品化することが可能となります。今後もGaNデバイスの性能向上により、様々なアプリケーションの小型化、高効率化を推進し、人々の豊かな生活に貢献してまいります。

  

ニュースリリース

  

  

EcoGaN™とは

EcoGaN™は、GaNの性能を最大限活かすことで、アプリケーションの低消費電力化と周辺部品の小型化、設計工数と部品点数の削減を同時に目指した省エネ・小型化に貢献するロームのGaNデバイスです。


ロームのEcoGaN™ロゴ

  

  

製品ラインアップ


製品ラインアップ「GNP20xxTD-Z」

  

  

アプリケーション例

・サーバー電源
・ACアダプタ(USBチャージャ)
・通信基地局電源
・産業機器電源
・PVインバータ
・ESS(Energy Storage System / 電力貯蔵システム)

出力電力500W~1kWクラスの幅広い電源システムに搭載可能です。

  

  

インターネット販売情報

販売開始時期:2024年12月から

販売ネット商社:コアスタッフオンライン™チップワンストップ™
それ以外のネット商社からも順次発売していきます。

販売対象品番:GNP2070TD-ZTR

注)「コアスタッフオンライン™」、「チップワンストップ™」は、各社の商標または登録商標です。

  

  

ATX SEMICONDUCTOR (WEIHAI) CO., LTD.(エーティーエックスセミコンダクター)について

ATX社は、中国山東省威海(ウェイハイ)市に位置し、パワーデバイスの組立及びテストの受託に従事しているOSATです。MOSFET、IGBT、SiC、GaNなど合計50種類以上のパッケージに対応可能であり、年間生産能力は57億個以上です。製品は産業機器、車載機器、再生可能エネルギー(太陽光発電など)、民生機器などに広く使用され、特に電気自動車の制御分野では、国際的なブランド向けに高い市場シェアを誇ります。
ATX社は、世界でトップ10に入るパワーデバイス企業と長期的かつ緊密な協力関係を確立しており、独自の知的財産権及びそれに基づくコア技術を保有している、次世代半導体デバイス開発におけるリーディングカンパニーです。
ATX社の詳細については、以下のWebサイトをご覧ください。http://www.atxwh.com

  

  

用語解説

  

*1) GaN HEMT

GaN(ガリウムナイトライド:窒化ガリウム)とは、次世代パワーデバイスに用いられる化合物半導体材料のこと。一般的な半導体材料であるSi(シリコン)に対して物性に優れており、高周波特性を活かし採用が始まっている。
HEMTとは、High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)の単語の頭文字を取った略称。

  

*2) RDS(ON)×Qoss

デバイス性能を評価する指標であり、Qossは出力側から見た時のドレイン・ソース間の総電荷量のことを指す。また、RDS(ON)(オン抵抗)は、MOSFETを動作(オン)させた時のドレイン・ソース間の抵抗値のこと。値が小さいほど、動作時のロス(電力の損失)が少なくなる。この2つをかけ合わせた値が低いほど、スイッチング動作の効率が向上し、スイッチング損失が少なくなる。

  

  

  

  

  

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