ニュース

ZFの8速オートマチック・トランスミッションがレーシングカーにも採用【ゼット・エフ・ジャパン】

2014年9月19日

- ZFの8速オートマチック・トランスミッションを搭載したBMW M235i Racingが登場
- 耐久レースにおける信頼性と性能の高さを実証
- ZFレースエンジニアリング社は、8HPのスポーツバージョンを開発し、新たな製品展開を計画

耐久レースという極めて過酷な状況下で、ドライバーの性能への要求を満足させるオートマチック・トランスミッションの開発。ゼット・エフ・フリードリヒスハーフェン社(以下、ZF)は、数年前には不可能だと思われた理想的なトランスミッションを開発し、BMW M235i Racingに提供しました。BMW M235i Racingは、プライベートチームおよびBMWモータースポーツ・ジュニア・プログラム向けに開発されたレーシングカーです。同マシンのシフトチェンジを一手に引き受けるのがZFの8速オートマチック・トランスミッション「8HP」。同トランスミッションは現行のBMW 2シリーズをはじめ、数百万台におよぶ量産車に採用されている実績があります。レーシングカーへの搭載にあたっても、わずかな改造で済みました。8HPは今年6月、世界で最も厳しい耐久レースの1つである、ニュルブルクリンク24時間レースに出場し完走を果たしています。

ZFはBMWからの要求で、エントリーレベルのレーシング車両に、パドルシフトが可能なダイナミックで信頼性の高い変速機を供給する事になりました。その開発にあたりZFは、新しいレースカー BMW M235i Racingのためのレース用トランスミッションを一から製作するのではなく、既存の8速オートマチック・トランスミッション(8HP)をベースとして行うという方法を採用しました。「人間が知覚できないレベルのレスポンスタイム、そして極めて高い信頼性を備えた8HPはすでに世界各地で量産実績があり、専門家からも、今の時代の乗用車向けオートマチック・トランスミッションのベンチマークだという評価を得ています」と、ZFのアプリケーション・エンジニアでありベテランのレーシングドライバーでもあるロベルト・シュメルツァーは述べています。「非常に高性能で耐久性の高いトランスミッションがすでに存在するのですから、8HPをレース用に転用するのに特に大きな改造は不要でした」。開発チームがこの開発にかけた時間はわずか6カ月程度でした。

回転数6,000 rpm未満でシフトダウン
量産品のオートマチック・トランスミッションのハードウェアに改造が不要なことはすぐに判明しました。「最初に、BMWでシミュレーションとドライビングテストを徹底的に行ったところ、8HPのメカニズム、油圧システム、エレクトロニクスは、レース中に生じる非常に大きな縦および横の加速力にも対応できることが分かりました」とシュメルツァーは強調します。「ただし、トランスミッション制御ユニットの調整は行いました」

公道を走る乗用車向け製品の開発とは大きく異なり、レース用8HPトランスミッションを扱うZFのエンジニアは運動性能だけに集中できました。ソフトウェアのプログラミングにより、どのギアチェンジも最高レベルの速さで行われます。市販車向け8HPのような快適モードや省エネモードへの切り替えといったオプションはありません。オートマチック・モードについても同様で、BMW M235i Racingでは、ステアリングホイールのパドルまたはセレクターレバーでドライバーが自ら指示したときにしかギアチェンジが行われません。「ただし、回転数が6,000 rpmをわずかに下回れば、ドライバー操作によってシフトダウンができる様にプログラムされています」とシュメルツァーは付け加えました。

安全性を高め、集中力をキープ
さらに、ZFのオートマチック・トランスミッションは、レース用のマニュアル・トランスミッションよりも安全性に優れています。なにより、ギアを入れ間違うことがないため、エンジンやトランスミッションにダメージを与えたり、駆動輪をロックさせたりすることがありません。従来のマニュアル・トランスミッションで8HPのシフトスピードを実現しようとすると、トランスミッションの寿命が非常に短くなると想定されます。また8HPでは、クラッチやシフトノブによるギアチェンジ操作がないので、両手をハンドルに置いた状態でドライビングに集中でき、レース中の激しい駆け引きやベストタイムを競う中でのドライバーの負担が軽減されます。シュメルツァーによれば、「このカテゴリーのドライバーはプロのレーサーではないことが多いので、ドライビングに集中できることは非常に重要なのです。耐久レースでは、ドライバーは最低でも4時間は集中力を持続させなければなりませんから」

数千キロに亘るレースもノートラブルで完走
BMWは、BMW M235i Racingカップの名称で、プライベートチーム向けに独自のシリーズを立ち上げました。これに加えて、才能ある若手ドライバーの育成を目的としたBMWモータースポーツ・ジュニア・プログラムも実施しています。このプログラムの一環として、4人の若手ドライバーで構成されるチームが235i Racing に乗り、2つのVLN耐久レースとニュルブルクリンク24時間レースに参加しました。24時間レースでは、8HPはそのポテンシャルを十分に発揮しました。「全行程3,800km、世界で最も厳しい条件の中、オートマチック・トランスミッションのトラブルは1つも発生しませんでした。小さなトラブルすらなかったのです」と、BMWのワークスドライバー兼チームメンターのディルク・アドルフ氏は強調しました。「グリーン・ヘル(緑の地獄)」と呼ばれるコースで行われたVLN耐久レースを終えたBMWジュニア・ドライバーのイェッセ・クローンも手放しで称賛しています。「シフト操作が減ることで、基本的なことにより多くの時間を使えます。8HPは安全で、しかもずっと速いドライビングを可能にしてくれます」

ZFではこれまでずっと、レース用トランスミッションの最適化に取り組んできました。将来、応用の幅が広がり、さらに多くのセグメントにおいても魅力的なトランスミッションを提供できると考えられます。「1年後を目途に、生産台数が少ないメーカーの高級ロードスポーツカーや、量産車ベースのカスタマー向けレース車両にも8HPを提供していく計画です」と、ZFレースエンジニアリング社の開発エンジニア、ペーター・ライポルトは語りました。「この製品のように、性能と信頼性を両立させているオートマチック・トランスミッションが欲しい、という世界中のレースドライバーからの要望が増えているのを受けてのことです」





ゼット・エフ・ジャパン株式会社ホームページはこちら

キーワードをクリックして関連ニュースを検索

#ゼット・エフ・ジャパン
#トランスミッション
#2014年9月19日