ニュース
ICP発光分光分析装置の新製品「SPS3500DDシリーズ」を発売【エスアイアイ・ナノテクノロジー】
2011年8月4日
ICP発光分光分析装置の新製品「SPS3500DDシリーズ」を発売
ダイレクトドライブモーター駆動方式により精度とスループットを向上
セイコーインスツル株式会社(略称:SII、社長:新保雅文、本社:千葉県千葉市)の100%子会社で計測分析装置の製造販売を行っているエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社(略称:SIIナノテク、社長:川崎賢司、本社:千葉県千葉市)は、新開発の高精度ダイレクトドライブモーター駆動方式により、高精度と高スループットの両立を実現したICP発光分光分析装置(ICP-OESまたはICP-AES※1)の新製品「SPS3500DDシリーズ」を本日8月4日に発売します。
ICP-OESは、ppm(百万分率)から ppb(十億分率)オーダーで、元素の精密分析ができるため、多くの公定法で採用されています。特に、近年話題になっている希少金属や希土類元素の分析の他、電子機器中の環境規制物質の管理、めっき、工業材料、鉄鋼などマトリックス※2の高い試料中の組成分析および品質管理に広く用いられています。
SPS3500は元素が発する光を分光(分離)する回折格子を回転駆動させることで、試料に含まれる各元素の精密分析を行なうシーケンシャル型のICP-OESです。従来は回折格子を駆動させるためにボールネジやナイフエッジなど幾つかの部品を組み合わせたサインバー方式を用いていました。このため、精度と測定スピードには限界がありました。今回発表した「SPS3500DDシリーズ」は、新開発のダイレクトドライブモーターにより回折格子を直接駆動するので、無駄な動きがなく、高精度・高スループットな測定が可能となりました。その結果、従来方式に比べ、波長位置精度が5倍向上し、定性分析も約6倍の高スループットを実現しました。
また「SPS3500DDシリーズ」は、高分解能な回折格子をより広角度に駆動できるため、460nmまでの長波長域に多くの高感度分析線がある希土類元素プラセオジム、ネオジム、サマリウムなどを高分解能で測定することができます。加えて、ダイレクトドライブモーターにより測定波長を最小2ピコメートルずつ駆動させ、全波長のスペクトルを一度に測定する広域波長分析も可能となりました。広域波長スペクトルは、測定した後から一部分を拡大して観察することもできます。特に未知試料において干渉元素などを把握する上で、大変有効な手法となります。
SPS3500DDシリーズの主な特徴
(1) 高精度分析を実現
回折格子の駆動は、サインバー、ボールネジなどの補助部品を使用せず、ダイレクトドライブモーターで直接行います。このため、各部品の熱膨張などの影響を受けにくく、高精度な分析ができます。
(2) 高速測定が可能
分光する回折格子を高速に駆動(従来の10倍以上)できるため、全元素定性測定は従来の約1/6の時間で完了します。あわせて試料の消費量も抑えることができます。
(3) 広域波長の測定が可能
高分解能ダイレクトドライブモーターを採用することにより、任意に設定した広域の連続スペクトルの取得を高分解能で行なう機能を追加しました。全元素、全波長のスペクトルの確認や、この情報を元にした定性判定が可能です。複雑なマトリックス試料の測定条件を容易に設定することができます。
(4) 高分解能測定
ダイレクトドライブモーターにより回折格子の制限角度をなくしました。高分解能な回折格子(4320本/mm)をより広角度に駆動できるため、従来不可能だった450nm付近の波長において高分解能測定を可能とします。
4320本/mm回折格子を採用することにより、世界最高水準の分解能0.0045nmを実現しており、金属などのマトリックスの高い試料を精確に測定します。
(5) 定性分析機能の充実
高速定性分析や高精度定性分析など定性分析手法を選択できるようになりました。試料内容や目的に応じて幅広く対応することができます。
(6) コンパクト設計
従来機同様、分光器を縦型に配置、高周波電源や循環冷却水装置をも本体に内蔵したオールインワンのコンパクト設計です。
価格
1700万円~(税別)
販売予定台数
100台(2011年度)
注
※1 ICP-OES: Inductively Coupled Plasma – Optical Emission Spectrometer(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)
ICP-AES:Inductively Coupled Plasma – Atomic Emission Spectrometry(誘導結合プラズマ原子発光分析装置)
※2 マトリックス : 分析対象元素と共存するその他の成分。マトリックス元素が多いと分析対象の信号が埋もれてしまい、正しい分析ができない場合もある。
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社ホームページはこちら