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初の柔軟性押出成形用グレードUltramid® S Balanceを発表【BASF】

2013年7月16日

BASFが前回のK2010(国際プラスチック・ゴム産業展)で初のガラス繊維強化PA610射出成形グレード Ultramid® S Balance(ウルトラミッド S バランス)を発表して以来、本材料はさまざまなアプリケーションに使用されてきました。市場の需要と押出成形における長年の経験に基づき、この度、BASF は PA610の製品ラインを拡張することを決定しました。 BASF は、 2013年10月のK 2013において、2つの柔軟なUltramid® S Balance新規グレード Ultramid® S4Z5 BalanceとUltramid® S4Z4 XS Balanceを発表する予定です。パイプやチューブの押出成形に適したこのグレードは、特に自動車や機械装置産業のほか、石油やガスラインでの使用を想定しています。BASFは、押出成形の分野でも、専門サプライヤーとしての地位を強化します。2つの新製品は、サンプル品として、 2013年11月から提供を開始する予定です。


薬品や低温衝撃に対する柔軟性と耐性が2倍

Ultramid® S4Z5 Balanceは、厳しい温度要件を満たす必要がある液体搬送ライン向けの半軟質グレードです。一方、Ultramid® S4Z4 XS Balanceは、真空ラインや脱気ライン向けの非常に柔軟性に優れた製品で、応力亀裂に対し、これまで以上の耐性を有しています。

この新たな 2 つの製品のフォーミュレーションには、改良を重ねた高粘度ポリアミド6.10を使用し、優れた低温衝撃強度を実現しています。柔軟性に富んだUltramid® S4Z4 XS Balanceを使用することにより、チューブに柔軟性が付与されることで、設置が容易になります。この2つの製品は、剛性および強靭性が異なります。耐圧強度と継手保持力は、S4Z5グレードの方が少し高く、耐熱老化性の面でもS4Z4 XSよりもいくらか優れた性能を示します。一方、S4Z4 XSグレードの特長は、塩化亜鉛耐性に優れていることです。

射出成形および押出成形向けのスペシャリティポリアミド

Ultramid® S Balance射出成形グレードが市場に導入されて以来、さまざまなアプリケーションにおいてその有用性が実証されてきました。応力亀裂の原因となる燃料および塩に対する特有の耐性により、本材は燃料ライン上のクイックコネクターなどに利用することができます。この応力亀裂に対する耐性は、その低吸水性とともにセンサーにおける本材のアプリケーションにおいても基本となるもので、これまで以上に高い性能を発揮します。一部再生可能資源を使用したPA610は、その特徴的な外観と感触により、Wästberg Winkel w127デスクランプといったデザインを重視する製品に最適な材料です。

PA610はその化学組成から、長鎖ポリアミドの1つと考えられています。この分類には、PA612、PA12、PA11などが含まれ、最近ではPA1010、PA1012、PA1212が加わっています。これらはPA6、PA66またはPA46と比べ、非常に低吸水性であることが特長であるほか、薬品および応力亀裂に対する耐性にも優れています。このポリマーの市場は、射出成形と押出成形のアプリケーションに分けられ、その比率はおよそ1対4です。PA12はその特殊な性質により、押出成形市場をほぼ独占していますが、より厳しい熱安定性や燃料透過要件を満たすため、その他のポリマーを必要とするアプリケーションもあります。この場合、PA610とPA12の特性が、互いにうまく補完し合います。

PA610とPA12 : 耐熱性か、耐応力亀裂性か

PA610の個々の機械特性は、適切なフォーミュレーションによってカスタマイズ可能です。しかしながら、PA610がPA12に対し、柔軟性、剛性および強靱性の面で劣っているということではありません。伸びは、最大200%を達成できます。これは、自動車の配管系統の仕様において通常求められる数値です。Ultramid® S Balanceは222°Cという高い融点により、連続使用やピーク温度での需要(融点が178°CのPA12は限界に達します)も満たすことができます。これまでにない小さなエンジンルーム内の、よりパワフルな小型エンジンを考慮すると、最高温度150°Cのエンジンル ームは珍しいものではなく、部品はこの温度に耐えられなければならないことから、この性質は重要です。材料を選ぶ際の決め手となる要素は、PA12では目立たない、あるいは認めることもできないUltramid® S Balanceの乾燥状態と調湿の状態における機械特性の違いにあります。BASFは、新規開発品のフォーミュレーション開発を行い、Ultramid® S Balanceを 調湿したものに、PA12グレードに匹敵する性質を持たせることができました。

PA610の耐応力亀裂性は、PA66とPA12の間に位置し、その化学構造により、応力亀裂に対してほぼ無反応ですが、Ultramid® S Balanceは、溶液(寒冷地の道路用塩として用いられる塩化カルシウムや、亜鉛メッキ部品で見られる塩化亜鉛を含む)に接触する部品に使用することができます。接続部材との接合に従来から用いられる方法に替わる優れた接合方法を利用することなどによって、配管系統内におけるピーク応力を回避することが可能です。

30%のガラス繊維で強化されたUltramid® S3WG6 Balanceは、さまざまな燃料における優れた膨潤特性により、燃料ラインシステムのクイックコネクター用材料として定着しています。PA610はその極性構造により、PA12よりも優れた燃料透過特性を有する場合があり、長年にわたり、燃料ライン用標準材としての地位を不動のものとしてきました。適切に構造化された多層システム(BASFが長年にわたり押出成形に関する専門知識を蓄積してきた分野)は、いかなる欠点も相殺することが可能です。パイプを押し出す際のPA610の成形性は、PA12と同じくらい簡単です。ただし、その高い融点により、さらに高い加工温度になります。

冷却液から圧縮空気ブレーキラインまで

ユーザーは原則として、技術的かつ経済的に最適なソリューションを得るために、各事例を個別に検討する必要があります。自動車業界におけるさまざまなラインに対する要件は、互いに大きく異なっています。例えば、冷却ラインでは、低温衝撃強度や優れた耐熱老化性のほか、高い耐薬品性および耐加水分解性が求められます。冷却システムは加圧下で運転されるため、高い耐圧強度も必要です。さらに、材料は高温に耐えられなければなりません。

真空ラインでは、柔軟性と低温衝撃強度が求められます。また、耐薬品性、最高 140°C までの耐熱性、および耐応力亀裂性も必要です。クラッチラインでは、非常に強い薬品や油圧油、エンジンオイルに対して同等の耐性が求められる場合があります。こうしたラインは高い内部圧力を有するため、容積ができるだけ一定に保たれる必要があります。そうでなければ、クラッチペダルを踏むのに必要な力がその都度変わることになります。クランク軸またはクランク軸ハウジングの脱気ラインは、オイル蒸気および燃料ガスの混合物を放出します。これらはエンジンに近接しているため、相当なストレスにさらされます。一方、空気ブレーキラインは、通常、トラックのシャーシの下に直接取り付けられるため、外的要因からまったく保護されません。これらのアプリケーションで使用される材料に求められる基本的な性能として、低温下での高い衝撃強度があります。カルシウムおよび塩化亜鉛にさらされる場合は、高い耐応力亀裂性が、高い耐圧性と同じくらい必要になります。

これらの複雑なさまざまな要件を満たすため、個々の要件に合うようカスタマイズされたソリューションが求められています。新しい2つのUltramid® S Balanceグレードにより、 BASF は配管ラインおよび液体搬送ライン向けのカスタムフォーミュレーションの押出成形製品分野において、開発を進めています。顧客と共同で開発した製品は、今後、市場に提供していく予定です。

米国市場での特別グレード

新しいUltramid® S Balanceの押出成形向け製品ラインは、米国内においてはすでに販売されているUltramid® HFX製品ファミリーを補完します。このポリアミド押出成形グレードのアプリケーション分野には、油圧、空気ブレーキ、真空、HVACホースおよびペンキ噴霧器向けの柔軟性のあるチューブおよびパイプアプリケーションがあります。最新グレードであるUltramid® HFX 51のアプリケーションには現在、油送管やガス管などがあり、こうしたアプリケーションでは、耐熱性および耐薬品性と合わせて、高い柔軟性、強度および強靱性を備えた、加工が容易なポリマーが求められています。


K2013 (国際プラスチック・ゴム産業展)記者発表会
発表者:マティアス・シャイビッツ( BASF 、ヨーロッパ エンジニアリングプラスチック、自動車製品開発担当)

BASFについて

BASF(ビーエーエスエフ)は世界をリードする化学会社「The Chemical Company」です。製品ラインは、化学品、プラスチック、高性能製品、農業関連製品、石油・ガスと多岐にわたっています。BASFは、経済的な成功、社会的責任、そして環境保護を同時に実現しています。また、BASFは科学とイノベーションを通して現代社会や将来のニーズを提示しながら、ほぼすべての産業のお客様を支援しています。BASFの製品とソリューションは、資源の確保に貢献し、栄養価の高い食品を提供するとともに、生活の質の向上に寄与しています。BASFはこれらの活動を企業目標として「私たちは持続可能な将来のために、化学でいい関係をつくります」を掲げています。2012年の売上は約721億ユーロで、従業員数は約11万人です。BASFの詳しい情報は、www.basf.com(英語)、newsroom.basf.com(英語)、www.japan.basf.com(日本語)をご覧ください。




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