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京速コンピュータ「京」が世界1位に【理化学研究所/富士通】
京速コンピュータ「京」が世界1位に
-世界最高性能8.162ペタフロップスを達成し、TOP500リストで首位獲得-
独立行政法人理化学研究所(理事長 野依良治、以下「理研」)と富士通株式会社(代表取締役社長 山本正已、以下「富士通」)は、共同で開発中の京速コンピュータ「京(けい)」※1の性能で、第26回国際スーパーコンピューティング会議ISC’11(ドイツ・ハンブルク開催)にて本日発表された第37回TOP500リストにおいて、第1位を獲得しました。
今回、TOP500リストに登録した「京」のシステムは、現在整備途中段階のもので、672筐体(CPU数68,544個)の構成です。LINPACK※2(リンパック)ベンチマークでは、世界最高性能の8.162ペタフロップス(毎秒8,162兆回の浮動小数点演算数)を達成し、TOP500リストの首位を獲得しました。また、実行効率は93.0%と高水準の記録を達成しました。
日本のスーパーコンピュータがTOP500リストで第1位となるのは、2004年6月以来のこととなります。
1. 経緯
理研と富士通は共同で、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、2012年11月の共用開始を目指し京速コンピュータ「京(けい)」の開発を進めています。「京」は、高性能・低消費電力CPU(中央演算処理装置)を搭載した800台以上の計算機筐体を超大規模接続が可能なネットワークで接続した構成をしており、先端技術を結集して高性能・高信頼を追求したコンピュータです。
今回、整備途中の段階でシステム性能を確認するために計測した「LINPACK」と呼ばれるベンチマーク・プログラムの処理性能を、世界のスーパーコンピュータをランク付けする第37回TOP500ランキングに登録しました。このTOP500ランキングは1993年より開始されたもので、毎年2回、6月と11月に最新の順位が発表されています。
2. 「京」の性能と今後
整備途上の「京」に搭載した68,544個のCPUを用いた部分システム(ピーク性能8.774ペタフロップス)でLINPACKベンチマーク・プログラムを走らせ、世界最高性能の8.162ペタフロップスを達成し、TOP500リストの第1位を獲得しました。また、世界トップクラスの大規模スーパーコンピュータとしては驚異的に高い実行効率 93.0%を達成しています。これは数万個におよぶCPUとそれらを相互に接続するインターコネクト、これらハードウェアの性能を極限まで引き出すソフトウェアの全ての技術が結び付いて実現できたものです。
「京」は、2012年の完成時にはLINPACK性能で10ペタフロップスを目指しており、さまざまな計算科学の分野において広く利用されることで、世界最高水準の成果創出に貢献することが期待されています。プロセッサの研究、開発からシステムの設計、製造まで全て日本国内で完成させた純国産スーパーコンピュータである「京」の活用で、シミュレーション精度や解析計算速度が飛躍的に向上し、例えば、高効率な太陽光発電に資する新材料開発の加速、防災計画に資する精密な気象予測や地震・津波影響予測など、産業応用から国土・国民の安全に関わる幅広い分野において大きな貢献が期待されます。
理研と富士通は、2012年の完成に向けて今後も最大限努力する所存です。
3. 理研および富士通からのコメント
理化学研究所 理事長 野依良治
開発パートナーである富士通株式会社をはじめ、東北地方太平洋沖地震によって被災された厳しい状況にもかかわらず「京」の製作に打ち込んでいただいた企業の方々のご尽力に感謝いたしますとともに、この喜びをともに分かち合いたいと思います。そして、世界に誇るべき結果を導いた力は必ずや被災地復興の原動力となることを確信しています。
開発の手綱を緩めることなく来年6月の完成を確実に達成するとともに、この世界最高性能の「京」が多くの方に活用いただき、輝かしい成果の創出につなげられるよう、システムの維持と運用に責任をもって取り組んで参ります。
富士通株式会社 代表取締役会長 間塚道義
東日本大震災の影響を受けながらも、関係者の多大なるご協力によって今回の結果が得られたことを嬉しく思います。特に、東北地方の協力会社の皆様には、自らも被災した中で部品の安定供給にご尽力いただき、大変感謝しております。今回、数十万点にも及ぶ部品を組み合わせ、従来の技術では動かすことさえ難しい超大規模計算機システムを短期間で立ち上げて結果を出したその信頼性は、正に日本のものづくりの集大成であると考えています。この結果に慢心することなく、今後も着実に導入を進め、完成後の成果創出に寄与して参ります。
4. 関連リンク
TOP500
理化学研究所次世代スーパーコンピュータの開発・整備
計算科学研究機構
富士通「次世代スーパーコンピュータ」紹介サイト
補足説明
※1 京速コンピュータ「京(けい)」
文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムのもと、理研と富士通が共同で開発しているもので、2012年の共用開始を目指して2010年10月より順次搬入・据付調整を進めている。「京(けい)」は理研が決定した愛称(2010年7月に決定)で、10ペタ(10の16乗)を表す万進法の単位であるとともに、もともとは大きな門を表し、「計算科学の新たな門」という期待も込められている。
※2 LINPACK
米国のテネシー大学のJ. Dongarra博士によって開発された行列計算による連立一次方程式の解法プログラムで、スーパーコンピュータの世界的な順位を示すTOP500リスト(毎年6月と11月に発表)を作成するために用いるベンチマーク・プログラム。