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災害時の緊急迂回通信路となる「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発、実証実験で性能証明【OKI】

2013年4月25日

ネットワークインフラが損壊した2km四方内の通信手段確保を30分以内で実現

OKIは、「車車間通信・路車間通信技術」を利用して災害時の緊急迂回通信路となる「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発し、東北大学青葉山キャンパス(宮城県仙台市)での実証実験において、ネットワークインフラが損壊した2km四方内で30分以内に通信路を確保できることを検証しました。本システムは、総務省が推進する「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発(注1)」の「災害に強いネットワークを実現するための技術の研究開発」において、OKIが担当し開発したものです。

2011年3月11日の東日本大震災では、通信ネットワークが通信不能や深刻な輻輳状態に陥り、災害救助・応急措置活動のための緊急重要通信や、避難時および避難所での安否確認に支障をきたし、被災地域のみならず社会全体が混乱に陥りました。このときの反省から、災害に強く壊れないネットワークの必要性への認識が高まり、「災害に強いネットワークを実現するための技術の研究開発」がスタートしました。本研究開発は、総務省より東北大学、KDDI㈱、㈱KDDI研究所、OKIの4者が受託し共同で取り組みました。災害時に緊急重要通信を可能とするための「重層的通信ネットワーク(注2)」の構築に必要な総合技術を開発するものであり、OKIは、その一環として「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発しました。

「重層的通信ネットワーク」は、災害時に公衆ネットワークが損壊による通信不能や深刻な輻輳状態に陥ったときに、平常時には個別に運用されている地域ネットワークが連携して迅速に迂回通信路を構成するものです。災害時に、携帯電話/WiMAX®用いる公衆ネットワークに加えて、地方自治体などが運営する地域WiMAX/Wi-Fi®ネットワーク、車両アドホックネットワーク(注3)、衛星ネットワークなどの複数のネットワークが連携することを想定しています。(図1)

OKIは、ITS無線通信技術への長い取り組みのなかで開発を行ってきた「車車間通信・路車間通信技術」を用いて、災害時の緊急ネットワークとして利用可能な「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発しました。本システムは、平常時ITSサービスに利用される無線通信機器を活用して、災害時に不通となった拠点間の通信路を緊急に確保するためのアドホックネットワーク構築を実現するものです。車両がその機動性に加えて通信機器の電源としての役割も果たせる点からも災害時車両通信の有効性が期待できます。

たとえば、災害が発生して携帯電話が使用できなくなった場合、災害時の拠点となる防災センター、災害現場、病院、避難所などの間の通信路を確保するために、災害現場へ可搬型路側機および車載無線機を搭載した車両を出動、配置し、ネットワークを短時間で構築します。これにより、通信事業者のネットワークが不通となった場合でも、災害拠点間にて、スマートフォンなどのWi-Fi通信機能をもった端末の通信路を速やかにバックアップすることが可能となります。(図2)

耐災害ICT研究協議会(注4)により東北大学青葉山キャンパスで3月に行われた実証実験では、災害発生時に携帯電話がつながらない場合を仮定し、複数の地域ネットワークを利用して通信サービスをバックアップする「重層的通信ネットワーク」の一つとしてOKIの開発した「災害時車両通信ネットワークシステム」を用い、その性能検証を実施しました。

OKIは、今回の「災害時車両通信ネットワークシステム」の開発を踏まえ、次世代の協調ITS構築の技術開発を進めるとともに、本研究開発にて検証したITS無線通信の災害時利用の展開検討も進めていきます。

なお、本システムについては、5月29日から31日まで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2013(会場:東京ビッグサイト)」および、10月15日から18日まで開催される「第20回 ITS世界会議 東京 2013(会場:東京ビッグサイト)」に出展する予定です。

図1:重層的通信ネットワークの構成図

図2:「災害時車両通信ネットワークシステム」の構成図

用語解説

注1:情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発
総務省は、平成23年度補正予算(第3号)による情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発の公募を実施。OKIは東北大学を代表機関に、KDDI株式会社、株式会社KDDI研究所と共同研究の体制で「災害に強いネットワークを実現するための技術の研究開発 -重層的通信ネットワーク-」の提案を行い、総務省直轄委託研究事業を受託実施した。
その中でOKIは、「車両を地域ネットワークノードとする災害時ネットワークの研究開発」を実施した。災害時にネットワークインフラが損壊し、通信手段が途絶した被災地の避難所、病院、自治体等の場所において、短時間で通信路構築を可能とする可搬型路側機を搭載した車両を現場に配置することにより、周辺の一般車両と連携して通信手段を確保することを目的とする検証を実施。

注2:重層的通信ネットワーク
災害に強いネットワークを構成する技術として、通信事業者以外が運用する地域ネットワークを用いて、通信事業者のネットワークが災害時に通信回線を失った場合に、近隣の無線通信可能な地域ネットワークノードが連携し中継することにより、迂回通信路を構築するシステムとその技術。

注3:車両アドホックネットワーク
車両搭載した無線装置により、近隣の車両同士が直接相互に接続して通信路を構築する自律分散型無線ネットワークの一種類。

注4:耐災害ICT研究協議会
東日本大震災において通信の確保に大きな支障が生じた経験を踏まえ、総務省、情報通信研究機構、東北大学や民間企業による災害に強い情報通信ネットワークの構築を目指した産学官連携研究開発プロジェクトとして、2012年4月に仙台を拠点としてスタート。プロジェクトのこれまでの成果について、実際の利用方法や実機を用いたデモンストレーションなどを通じて分かりやすく紹介する目的で「シンポジウム及びデモンストレーション」が耐災害ICT研究センター(仙台:東北大学内)にて2013年3月25日と26日の2日間開催された。OKIの「災害時車両通信ネットワークシステム」の実証実験もこの中で一般公開された。

主催
耐災害ICT研究協議会
独立行政法人 情報通信研究機構
国立大学法人 東北大学

後援
内閣府、総務省、宮城県、仙台市


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