ニュース
xEV向けアプリケーションの小型化とノイズ設計工数の削減に貢献する 絶縁型DC-DCコンバータ「BD7Fx05EFJ-C」を開発
2022年11月17日
xEV向けアプリケーションの小型化とノイズ設計工数の削減に貢献する
絶縁型DC-DCコンバータ「BD7Fx05EFJ-C」を開発
主機インバータ、OBCなどの絶縁回路において、一般品比で約30%実装面積を削減可能
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、xEV(電動車)の主機インバータやオンボードチャージャー(以下、OBC)、電動コンプレッサー、PTCヒーター※1などに搭載されているゲートドライバ駆動用電源に最適な、絶縁型フライバック方式※2のDC-DCコンバータ
「BD7F105EFJ-C」及び
「BD7F205EFJ-C」を開発しました。
新製品は、ロームが得意とするアナログ設計技術を駆使することで、従来2次側の電圧・電流を検知するために必要とされたフォトカプラ※3もしくはトランスの補助巻き線及び周辺部品などを不要としました。フォトカプラの課題である消費電力の大きさや温度による検知精度の変化、経年劣化等を改善するとともに、部品点数削減による小型化も実現しています。このため、一般的なフライバック方式の絶縁電源回路と比較した場合、フォトカプラ及び電流検出用途の周辺部品等で10個、基板面積にして約30%削減可能です。また、新製品はスイッチングのオン時間を固定する適応型オンタイム制御機能の搭載により、出力電力に関わらずスイッチング周波数が350kHz付近で安定しています。車載EMC規格のCISPR25※4に対応する場合、150kHz~300kHzの周波数帯は特にノイズ対策が必要ですが、新製品はこの周波数帯に入らないため、アプリケーションでのノイズ対策が容易です。これにより、放射ノイズの低減に寄与するスペクトラム拡散機能※5と合わせて、ノイズ設計の工数削減に貢献します。
新製品は、2022年10月より量産を開始(サンプル価格700円/個:税抜)しています。生産拠点は前工程がローム浜松株式会社(浜松市)、後工程がROHM Electronics Philippines, Inc.(フィリピン)となります。また、新製品と評価ボード
「BD7F105EFJ-EVK-001」及び
「BD7F205EFJ-EVK-001」のインターネット販売も開始しており、コアスタッフオンラインやチップワンストップなどから購入することができます。
ロームは今後も得意とするアナログ技術を中心とした、小型化や低ノイズ化に寄与する製品の開発を継続し、持続可能な社会実現に向けて貢献します。
<背景>
近年、持続可能な社会実現に向けて、ハイブリッド自動車や電気自動車といったxEVの普及が加速しています。主に電力をエネルギー源とするxEVにおいては、モーターを駆動する主機インバータやエアコン用の電動コンプレッサー、車室内の温度を上げるPTCヒーター等、独自のアプリケーションが搭載されています。また、いずれのアプリケーションも高い電圧で駆動することから、安全性確保のためにバッテリーのある1次側回路とモーター等のある2次側回路で絶縁する必要があります。一方、従来の絶縁回路構成では、実装面積や消費電力の大きさ、出力電流によって異なるスイッチング周波数に対するノイズ対策の工数などが課題でした。ロームは新製品において、フォトカプラが不要な回路構成と安定したスイッチング周波数特性を実現したことにより、アプリケーションの小型化とノイズ設計工数の削減に貢献します。
<製品ラインアップ>
新製品は、部品点数の削減、ノイズ設計の工数削減に加えて、出力電圧を安定させる機能や様々な保護機能を搭載しており、アプリケーションの高信頼性向上にも貢献します。
*1 Load Compensation機能:2次側ダイオードが出力負荷によってVFが変わるため、出力電圧が低下する。
この出力電圧低下を補正することが出力電流-出力電圧特性の安定化に繋がる。
*2 多様な保護機能:入力低電圧保護機能/加熱保護機能/過電流保護/短絡保護機能/基準電圧端子保護機能/バッテリ短絡保護機能
品番:BD7F105EFJ-C / データシート(PDF)
BD7F205EFJ-C / データシート(PDF)
<アプリケーション例>
新製品は、安全性のためにバッテリーから絶縁して電源供給が必要なゲートドライバ用電源に最適です。
車載機器:主機インバータ、OBC、電動コンプレッサー、PTCヒーター、インバータ など
産業機器:産業機器電源、産業機器用制御(PLC)、インバータ など
<インターネット販売情報>
販売ネット商社:チップワンストップ、
コアスタッフオンライン
製品、評価ボード共に、それ以外のネット商社からも順次発売していきます。
(販売開始時期: 2022年10月から)
1個から購入可能
|
・製品情報
販売対象品番:BD7F105EFJ-CE2、BD7F205EFJ-CE2
・評価ボード情報
評価ボード品番:BD7F105EFJ-EVK-001、BD7F205EFJ-EVK-001
<用語説明>
※1)PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーター
ガソリン車やディーゼル車のように熱源(エンジン)を持たないxEVにおいて、暖房機能を担うアプリケーション。バッテリーからの電気をヒーターエレメントに流すことで熱を発生させ、車室内を暖める。
※2)フライバック方式
回路形態の一種として絶縁電源の構成に使用される。100W程度までの用途に適し、部品点数やコスト面に優れる。他にフォワード方式などがあり、これらを構成するデバイスの進化が絶縁電源の小型化・高効率化を実現している。
※3)フォトカプラ
入力された電気信号を発光素子で光に変換したのち、受光素子が再び電気信号に戻す電子部品。入力側と出力側は電気的に絶縁されているため、電気信号によるノイズや感電を防ぎながら、信号を伝達することができる。
※4)CISPR25
部品やモジュールから周囲に放出されるノイズのEMI(Electromagnetic Interference: 電磁妨害)を評価する国際規格。機器の誤動作を引き起こすノイズの低減を目的として、周波数ごとに定められた規定値内にノイズを収めることが求められる。
※5)スペクトラム拡散機能
スイッチング周波数を固定ではなく、ある幅を持たせて揺らすことで、幅を持つ周波数にノイズエネルギーを拡散する機能。ノイズのピーク値を下げることにより、EMIノイズを軽減する。
ローム株式会社 ホームページはこちら