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脳波や心拍波形に基づく、独自の感情推定モデルを構築【デンソーテン】

2022年3月11日

  

脳波や心拍波形に基づく、独自の感情推定モデルを構築
~安心安全な自動車運転に貢献するサービスや、メンタルトレーニングなどに活用~

  

株式会社デンソーテン(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:加藤 之啓)は、心理学(心の働き)ではなく、脳や心臓の働きと感情との関係による医学的アプローチ(身体の働き)に基づいた独自の感情モデルを構築し、新たな感情推定技術を開発しました。



感情推定の仕組みと、活用イメージ

これは、脳波センサーや心拍センサーといった複数の生体センサー(※1)を活用することで、例えば、自動車を運転している人の感情を見える化する技術です。運転中にその人の感情と交通や天気といった周囲の状況や店舗など、クラウドサーバーに蓄積されている様々な情報を組み合わせ、状況ごとに最適なサービスを提供できるようになります。具体的には、渋滞でイライラしている時には多少回り道になってもスムーズに走れるルートを提案するなど、安心・安全な運転に貢献するサービス提供が考えられます。また、教習所で練習中の際には、苦手な運転とその時の感情を客観的に知ることができ、効率的な練習につながると思われます。他にも、スポーツ選手の練習中や試合直前の感情を推定することで、より効果的なメンタルトレーニングに活かせられると考えています。
本技術は、3月14日(月)に国士舘大学で開催される「情報処理学会 第197回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会(※2)、”医学的エビデンスに基づく新たな感情推定モデルの提案”」にて発表予定です。

■ 従来技術と新技術のアプローチ
従来の感情モデルとして、ラッセル円環モデル(※3)、という心理学モデルがあります。このモデルは、縦軸Activation(活性度)、横軸Pleasant(快適度)からなる2軸平面上に、楽しい、リラックス、悲しみ、退屈、怒りなどの感情を円環上に配置する、というものです。これまでも、脳波や心拍波形などの生体信号から、活性度、快適度を算出して感情を推定する方式は提案されていました(※4)。当社では、感情と脳や心臓の働きに基づいて独自の感情モデルを活用した感情推定技術を開発し、8割程度(※5)の推定性能を実現しました。

■ 開発技術
感情と身体の働きの関係に着目し、医学論文などのエビデンスを元に、軸の定義と感情の配置を行って新たな感情モデルを構築しました。

【軸の定義】
感情との関係が医学的にも示されている脳波と心拍を、感情推定が可能な生体信号として選択しました。しかし、脳波には、①感情が発生する大脳旧皮質の活動を直接脳波で観測できない、心拍には、②心拍は感情だけでなく呼吸によっても変動する、という課題があります。そこで当社では①脳波のうち、喜びや怒りなどの感情で増加すると知られている(※6)α波とβ波の比率(β/α)を縦軸とし、②心拍波形のうち呼吸の影響を受けにくい低周波成分の変動(LF揺らぎ)を横軸と定義しました。

【感情の配置】
α波はリラックスや不安時に増加し、β波は楽しい、怒り、緊張した時に増加することが分かっています(※6)。そこで当社では、β/αによって、縦軸の上側に楽しい、怒り、緊張などを、下側に不安・リラックスなどを配置しました。また、横軸である心拍の変動は自律神経と相関があることが知られています(※7)。感情と自律神経の関係(※8)に基づいて横軸の右側、左側に配置する感情を決定しました。

この新たな感情モデルを用いた信号処理により、80%を越える感情推定性能を確認しました。今後、車載用途だけでなく、スポーツにおけるメンタルトレーニングなどへの適用も進めていきます。

  

(※1) 今回は市販されている脳波ならびに心拍センサーを活用
(※2) http://www.sighci.jp/events/sig/197
(※3) ” The circumplex model of affect: an integrative approach to affective neuroscience, cognitive development, and psychopathology.” Jonathan Posner, James A.Russell and Bradley S.Peterson, Development and Psychopathology 17(2005) 715-734.
(※4) ”心拍の揺らぎ そのメカニズムと意義”,早野順一郎他, 人工臓器 (一社)日本人工臓器学会 25 (5) 870 ? 880 0300-0818 1996/10
(※5) 複数の被験者に楽しい、悲しい、などの感情を惹起する映像(感情数46、総時間12,886秒)を視聴してもらい、80%の時間で、視聴中に被験者が感じた感情の位置と新感情モデルでの推定位置が一致したことを確認
(※6) ”臨床脳波学”,大熊輝雄他,医学書院,2016
(※7) ”ロバートソン自律神経学”,David Robertson原著,エルゼビア・ジャパン株式会社,2007
(※8) ”縫線核セトロニン神経による情動調節機構-不安と恐怖の神経回路を分離して理解する”, 大村優ほか、日薬理誌,pp.27-33(2017) ”交感神経活動の脳内ネットワーク”, 定藤規弘ほか、第71回日本自律神経学会総会,pp.76-79 ”経胸壁冠動脈ドプラエコー図を用いた精神的ストレスの冠血流に対する影響の検討”、小牧宏一ほか、埼玉県立大学紀要5、pp.1-5 ”健康における笑いの効果の文献学的考察”、三宅優ほか、岡山大学医学部保健学科紀要17、pp.1-8(2007) 当社では今後も、グループが2030年に目指す姿『VISION2030』における、人と地球に優しい製品でクルマの魅力を高める「クルマの価値向上」や、移動の課題を解決し人々の生活を豊かにすることに貢献する「生活の価値向上」への取り組みを具体化し、お客さま・社会に貢献していきます。

今回の技術開発を通じて、以下のSDGsの達成を目指します。

  

  

  

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