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AZAPAと米24m社、半固体電池を用いた電気自動車設計で技術協力 競争が激しくなる世界EV市場へ新機能の提供を目指す
2020年6月18日
AZAPA株式会社(愛知県名古屋市中区錦2−4−15、代表取締役 近藤康弘、以下AZAPA)と24m Technologies, Inc(米国マサチューセッツ州ボストン、太田直樹CEO、以下 24m)は、世界EV市場への転換を見据え、「低コスト化に向けた性能設計アプローチ」および 社会循環エネルギー化に向けた「次世代BMS技術」に関して技術協力し、新機能の提供を目指すことで合意しました。
大転換期に入ったEV業界
世界各国で、将来、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止し、EVなどの新エネルギー車の普及に向けて、燃費規制や排ガス規制といった環境規制のほか、エネルギー政策や産業振興策といった各国の様々な施策を打出し、後押ししています。ただし、政府主導の市場拡大政策支援を縮小される中でEV販売台数が減速、EVベンチャーなどの淘汰も進んでおり、大きな変革時期を迎えています。これは、EV市場が新興メーカーなどを含めた積極的な投資フェーズから、競争力のある成長を必要とするフェーズへの転換を求められていることを意味します。この転換期をどのように乗り切るのか、既に競争は進んでいます。
従来のEV性能を高度化するだけではなく、EVを組み込んだ社会循環エネルギー網などの多角的な事業も見据えた技術革新が急速に発展すると思われます。AZAPAと24mの両社は、こうした背景を「世界EVの新たな市場」として位置付け、共に低コスト化に向けた「性能設計アプローチ」および 社会循環エネルギー化に向けた「次世代BMS技術」などの新たな価値提案を共創、競争力のある新システムの開発を目指した活動を行います。
世界EV市場への競争力のある提案
AZAPAは、2018年に世界EV市場におけるシステムインテグレーション事業を開始、海外大手EVメーカーや新興EVメーカーと競争力のある車両性能改善に取り組み、EVメーカーとの開発土壌を構築してきました。その中で、EVメーカーの急速な技術成長に直面しながらも、今後の競争力に向けて幾つかの課題を見出しています。特にバッテリーに関係する課題は大きく、この課題解決は競争力ある提案となります。
課題1[品質・コスト・供給力の課題が顕在化]
車載電池に求められる安全性と安定性などの品質、エネルギー密度の性能向上、加熱や過充電を防ぐような高度な制御システムへの技術開発は、いずれも競争優位性を一段と高める要素である一方で、コストを引き上げます。加えて、6〜8割を占める材料コストの低減には限界があるので、製造コストも含めたコストコントロールが重要視されています。対応できない電池メーカーは、日韓などの参入もあって淘汰の加速が予測され、EVメーカーが自社生産へ乗り出しています。
課題2 [電池のリユースの鍵は、残価評価と長寿命化]
電池のリユースは、EV戦略においても重要分野で、EV中古市場での流通の公正な取引を実現するには、電池の劣化状態を評価する仕組みが必要です。また、EVで利用済みとなった電池は、低負荷サイクルでも十分に利用できる定置型電池などへの転用が可能である為、リユース市場を拡張するには、電池の劣化状態を正しく評価する必要があります。電池の劣化状態は、実際のEV運転状態下においても大きく変化する為、劣化予測技術による長寿命化へのアプローチが必要です。
課題3 [リサイクル技術の未成熟、利益モデルの探索段階]
EVに搭載された電池が寿命を迎え、これから電池廃棄の大きな波が起こります。こうした中、リサイクル技術は、まだ成熟しているとは言えません。政府に後押しされ、この市場での投資は加速していますが、調達ネットワークや自動化効率、安全性、リサイクルチェーンでのトレーサビリティ管理など多くの課題に対する新技術、新技法を必要とします。そして、大きな問題は、利益モデルの模索が必要な段階であることです。
24mの半固体電池
24mは、MITの研究者が設立した半固体電池のベンチャー企業で、現行のリチウムイオン電池の製造工程を改良、コスト低減と安定供給を両立した独自プロセスを確立し、技術特許を取得、既に米国にパイロットプラントを稼働させています。
(1) 電池セルの低コスト化
(ア) 材料費の大幅な削減
(イ) 生産設備コストの大幅な削減
(2) 高安全性の飛躍的向上
(3) 高信頼性の飛躍的向上
(4) セルの大型化とモジュールコストの削減
(5) 現行ケミストリーから次世代ケミストリーまで同じ生産ラインで対応が可能
(6) バインダーを含まない為、リサイクル性が優れる
AZAPAと24mの目指す新技術とは
■24mがAZAPAに期待する「性能最適化シミュレーション技術」
EV電池を設計する際に、24M製の電池は厚塗り電極を実施する為、現行のリチウムイオン電池のコストとパフォーマンスの最適化とは違った最適化が望まれます。現状、EVメーカーにとっては、現行のリチウムイオン電池で最適化された要求が中心となっていますが、24M製の電池でコストと電気自動車のパフォーマンスを最大限に発揮する為には、異なったEV電池要求特性が望ましいと考えています。24mは、こうした電池設計の要求段階でAZAPAのモデルベース技術による電気自動車性能最適設計のシミュレーション技術を利用した「性能設計アプローチ」を期待しています。
■次世代BMSによる「劣化予測と超寿命化の技術」
AZAPAは、24mと劣化特性や動特性をモデル化し、劣化原因と走行状態などから劣化予測の精度を向上します。今後、入出力性能の高いバッテリを組み合わせ、24mの半固体電池とハイブリットでバッテリシステムを統合化、エネルギーロスを走行状態で最適化しながら長寿命化する技術の開発をチャレンジします。
■ブロックチェーンによる「リユース・リサイクル技術」
EV電池のリユース・リサイク市場を展望した場合、新たな技術として、精度の高い電池の劣化予測技術に加え、公正な取引基盤を構築する必要があります。我々は、ブロックチェーンによるトラッキングを融合させるネットワーク技術で社会循環エネルギーに向けたプラットフォームを提案します。また、24mの電池は、構造的に製造コストが低いので、リビルドが効率的に行えるため、リサイクルコストも低減できるメリットがあります。
AZAPAのグローバル戦略は、部品サプライヤーとの共創
AZAPAは、これまで国内自動車産業で、独立系のシステム・インテグレーションを事業化する唯一の存在を目指して、自動車OEMメーカーと部品サプライヤーをつなげる「Tier 0.5」というポジションを築いてきました。同様に2015年に海外の自動車技術学会、自動車工業協会、自動車研究院、大学とビジネス提携し、自動車産業クラスタにおける関係を構築してきました。今後、更に「Tier0.5」の存在感を増す為に、EV市場において、部品サプライヤーへの投資も積極的に行い、AZAPAのMiCU(制御ユニット)と車載アーキテクチャー理論を基盤にインテグレーションだけでなく、システムサプライヤーとしての存在へと転換を図ります。AZAPAは、この企業活動を通じて、EV市場への参入障壁を下げ、硬直化した日本の産業クラスタで埋もれてしまう部品サプライヤーのグローバル戦略を支援します。日本のものづくりは、品質はもとより、素晴らしいアイデアで既存のシステムを凌駕しています。この競争力をグローバルに提供し、国内の自動車産業へコストで回帰すること、それが未来の日の丸を支えるAZAPAの役割と考えています。
【会社概要】
■AZAPA株式会社(本社:愛知県名古屋市中区錦2−4−15)
URL:https://www.azapa.co.jp
事業内容:自動車を中心とした各分野(※)における新システムの研究、ソリューション事業を展開。
※モデルベース、計測技術、新制御開発、コネクテッド、自動運転、感性
■24M Technologies, Inc (本社:米国マサチューセッツ州ボストン市)
URL:http://24-m.com/
事業内容:MIT出身の研究者にて設立した安全性、エネルギー密度、製造コスト等で現行のリチウムイオン電池を上回る半固体電池の研究・開発企業。
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24m Technologies,Incホームページはこちら