ニュース
IBMとEKZ、電気自動車充電の利便性を高めるスマホ・アプリを開発【IBM】
2011年10月14日
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)リサーチは本日、スイスのチューリッヒ州に本拠地を置く電力会社EKZと共同で、モバイル端末を活用して電気自動車の充電とエネルギー・コスト管理の利便性向上を図るパイロット・プロジェクトを実施する、と発表しました。ほぼリアルタイムに情報を活用することで、電気自動車の普及に伴い深刻化が予想されている充電ピーク時の送配電網の負荷を、電力供給側が効率的に制御できるようになることも期待されています。
このパイロット・プロジェクトでは、IBMチューリッヒ研究所の研究員がデザイン、開発したウェブ・ベース・アプリケーションと、Zurich University of Applied Sciences(ZHAW:チューリッヒ応用科学大学)が開発したデータ記録端末を活用します。プロジェクトでは、およそ電話帳サイズの端末を、ルノー トゥインゴをはじめとする数台の電気自動車に搭載し、車の充電レベルや現在位置、電源などの情報を収集します。この端末は携帯電話網を介して、DB2およびWebSphereが稼動するIBM® BladeCenterサーバーをベースとしたIBMのクラウドにデータを送ります。データをモニタリングすることでユーザーに役立つことに加えて、電力会社もエネルギー需給に関する洞察を得られるようになります。
当プロジェクトは、2030年までに再生可能エネルギーの生産量を、スイスの現在の消費電力の10パーセントに相当する5,400GWh(ギガワット時)に増加させるというスイスのエネルギー政策上の目標達成にも寄与すると見込まれています。最新の統計によると、スイスの総電力生産量の約55.6パーセントは再生可能資源から生産されており、その96パーセント以上を水力発電でまかなっています。
EKZのEnergy Distribution部門長であり、経営幹部でもあるPeter Franken(ピーター・フランケン)氏は次のように語っています。「電気自動車をバッファーとして活用し、再生可能エネルギーの発電量の変動を調整することで、送配電網全体の安定性を向上できると考えています。当プロジェクトで、スマート・グリッドの電力需給バランスを電気自動車で調整する仕組みを確立できると期待しています。」
IBMが開発したアプリケーションは、ほとんどのスマートフォン、タブレット端末およびウェブ・ブラウザーに対応しており、電気自動車、電力会社およびドライバーを結ぶツールとして活用することができます。このアプリケーションは、画面上の4つのボタン操作で、自動車のバッテリー残量や走行距離、現在地、充電スケジュール、現在のエネルギー・コストなどの情報をリアルタイムで閲覧することができます。
IBMチューリッヒ研究所のスマート・グリッド研究プロジェクト・リーダーであるDieter Gantenbein(ディーター・ゲンティンバイン)は、次のように述べています。「コストや全体的な利便性はもちろん、消費者の好みまで考慮した当サービスによって、電気自動車は消費者にとってより魅力的なものとなるでしょう。当パイロット・プロジェクトでは、電力需給のリアルタイム分析と制御によって、サステイナビリティーに配慮した電気自動車の充電の動的なインセンティブが生み出され、よりクリーンな交通システムの実現に向けてまた一歩前進できると考えています。」
ワンクリック充電
自宅やオフィスに限らず、どんなに離れた場所にいても、電気自動車の持ち主は、モバイル端末から、次回のドライブに十分なバッテリー残量があるかどうかを確認することができます。また、このアプリケーションから電気料金の安い時間帯や旅行の計画に合わせて、次回の充電を予約することもできます。
またアプリケーションから、電気自動車の充電管理を電力会社に委任することもできるため、電力会社は太陽や風などがエネルギー源となっている再生可能エネルギーの供給可能度に応じて充電のスケジュールを決定することができ、送配電網の負荷を調整し、停電を回避できるようになります。EKZは、電気自動車の普及が進むにつれて、このサービスの付加価値はさらに高まると考えています。
当パイロット・プロジェクトでは、再生可能エネルギーを利用した電気自動車の充電予約プロセスを分析する目的で、ディーティコンにあるEKZの施設に設置された太陽光発電用のソーラー・パネルから発電量のデータをリアルタイムに取得し、クラウド・サービスで利用できる仕組みを確立します。この仕組みでは、電気自動車は太陽光発電が行なわれている時間帯に充電されます。太陽光による発電量が少ない場合は、自動的に充電プロセスが調整されます。
当プロジェクトおよび最近発表されたデンマークで行われるEcoGrid EUプロジェクト(US)は、発電所から家庭のコンセントまでエンド・ツー・エンドのプロセスを考慮することで、高い安定性と堅牢性を備えた送配電網の実現を目指す取り組みの一環として実施しています。電気自動車から太陽光発電システム、風力発電にいたるまで、すべてのサステイナブルなテクノロジーを統合することで、安定した電力供給を行いながら、温室効果ガスの削減を目指します。
日本アイ・ビー・エム株式会社ホームページはこちら