最前線コラム

最新のECUインタフェース技術と HEV/EV制御システム向け計測・適合ソリューション【イータス】

HEV/EVという新しい技術が実用化、製品化された今日の自動車業界において、その制御を担うECUソフトウェアの開発ツールに対しても必要な機能や性能の一層の高度化が求められている。特にモータ制御ECU内の変数計測に対しては、従来のエンジン制御ECUに比べて10倍~100倍の高速なサンプリング周期で内部制御変数を計測できる性能が求められている。イータス(株)が提供する計測・適合ツールINCA(インカ)は、独自のイベント同期計測方式により、ECU内部演算値の整合性を確保した計測ができるという優れた機能をECUインタフェースETKとともにいち早く実現、全世界でいわゆる”デファクトスタンダードツール”として普及してきた。また、今日のクルマの電動化にも対応するために、それら優れた機能を維持しつつ進化を遂げている。ここでは、HEV/EVシステムの制御開発に役立つ、最新の計測・適合ソリューションINCA、XETK(エックスイーティーケー)を紹介する。

最新のECUインタフェース “XETK”
XETKの前身であるETK(独語Emulator TastKopfの短縮形、英語では Emulator Test Probeの意)は、1989年にイータスが独自に開発した、ECU開発ツールとECUを接続するインタフェースである。ほぼ名刺サイズの電子基板でできており、CPUのデバッグインタフェースや外部バスに接続して高速かつ大量のデータ通信を可能にしている(図1上)。
ETKの主な用途は、(1) ECU内の制御変数の計測、(2) リアルタイムオンボード適合、(3) ECUへのコードおよびデータのダウンロード/アップロード、(4) ECUへのフラッシュ書き込み、(5) ラピッドプロトタイピング(バイパス)である。ECUインタフェースとしては現在までにCANやFlexRay等のいわゆる標準インタフェースが登場しているが、ETKはイータス 独自のイベント同期計測方式によりECUの内部演算値の整合性が確保できるほか、高速かつ大量のデータ通信が可能であり、CPUに対する負荷がほとんどかからない。これらの優位性から特にパワートレインECUインタフェースのデファクトスタンダードとして現在でも世界中で広く利用されている。
イータスはこのETKをさらに高性能化したXETKを開発した(図1下)。その特長は以下の通りである。
(1) XETKのツール側インタフェース仕様として標準プロトコルであるXCPを採用。XCPはいわゆるCCP(CAN Calibration Protocol)を発展させたプロトコルで、物理層に依存せずに実装が可能。
XETKでは物理層としてイーサネットを前提にしたXCP on Ethernetを採用した。標準プロトコルの採用により、XETKはイータス計測・適合ソフトウェアINCAを搭載したPC(以下INCA PC)だけでなく、他社製あるいはユーザの内製ツールとの接続も可能にしている。
(2) ETKよりも更に高速通信を実現(図2)。従来のETKによる通信では、最速でも数100μsのサンプリングでの計測が限界であったが、XETKにより、最速で10μsの高速サンプリングを実現している。これは、後述するHEV/EV用モータ制御ECU内の変数モニターに求められる計測性能にも十分対応できるものである。

(3) 従来のETKとINCA PCとの接続に必要であった中間インタフェースハードウェアが不要。INCA PCと直接イーサネットケーブルのみで接続することが可能となった(図3)。(4) 1つのXETKに対し複数のツール(PC側ソフトウェア)の接続・同時使用を可能とするマルチマスター機能を搭載。これにより、例えばプロトタイピングツールやデバッギングツール等の複数のツールを1つのXETKに接続し同時に使用できるようになり、ECUソフトウェア開発の効率化が可能である。

HEV/EV制御開発におけるXETKおよびイータス計測・適合ツールの有益性
現在、自動車業界ではHEV/EV技術が大きな注目を集めている。HEV/EVの制御開発に使用するツールに求められる性能/機能から見るといくつかの特長がある。まず、モータ制御ECUにおける制御周期が50μs〜100μsとなり、従来のエンジンECUにくらべ1/10〜1/100と短くなっている点が挙げられる。これに伴い、ECU内部変数もこの周期での計測/解析が必要となっている。イータスが開発したインタフェースXETKは、自動車の電動化に伴う制御周期の短縮化の流れをいち早く捉えて製品化したものである。現在達成している最短10μsの計測性能は、モータ制御ECU開発における要求を十分満たすものとなっている。 HEV/EV制御開発におけるもう一つの特長は、複数のECUによってマルチノード化されたシステムとしての最適化が必要な点である。システムの協調制御を司るHEV/EV制御ECUを含めたマルチノードシステムのリアルタイムでの計測やパラメータの最適化が必要となる。この点においても、イータスの計測・適合システムは対応できる機能および性能を備えている。図4に示すようなマルチノードシステムにおいて、INCA PCからオンラインで各ECUをリアルタイム適合することが可能である。

車両としての開発には最後に感性に基づく適合も重要となってくるが、INCAにはそれに適した機能も用意されている。例えば、複数のテストケース(異なる適合データのセット)を予めINCA内に設定しておき、適合エンジニアがそれをオンラインで切り替えてその挙動の違いを試験すること等が簡単に行える。 計測に関しては、1台のINCA PCでマルチノードおよびバスデータの時刻同期計測(いわゆるマルチノード/タイムシンクロナス計測)を実現している。計測デバイスごとに計測データにはタイムスタンプがつけられPCに送信される。 この時の時刻同期精度は1μs以内である。各ECUへの接続に対応する各種インタフェースもサポートしている(図5)。高速なデータ取得が必要なECU(モータ制御ECU等)にはインタフェースとしてXETKを適用することで、最速10μsでの高速なイベント同期計測が可能である。また、高速アクセスが不要なECUに対してはCAN等の標準インタフェースを利用することができる。

これらのECUデータの計測に加え、外部計測データ(物理値)も同一のINCA PC上で時刻同期計測ができる点もHEV/EV制御システム開発には大きな利点である。温度、車輪速、加速度、軸トルク、高電圧バッテリの電圧/電流、モータAC電圧/電流等の物理値計測のための計測モジュールも取り揃えており、トータルシステムとしてのソリューション提供が可能である。

今後の展望
以上イータス製ECUインタフェースETKおよびXETKの概要とHEV/EV制御開発におけるXETKおよびイータス製計測・適合ツールの有益性について説明した。現在XETKは以下のマイコンをサポートしている。  XETK-V1.0: フリースケールMPC55xx  XETK-T2.1:インフィニオン TC179x  XETK-S7.0: NECエレクトロニクス V850 今後も、ユーザの要望に合わせ、サポートするマイコンを増やしXETKラインナップを拡充してゆく予定である。

[イータス株式会社 マーケティング部 石森和彦]
イータスのソリューション事例はまだまだあります。詳しくはホームページをご覧ください。
http://www.etas.com/ja/products/applications_solutions.php

(カーエレクトロニクス最前線2010より転載)