最前線コラム

IPG Automotive が提供する 真の“Virtual Test Driving”プラットフォーム【IPG Automotive】

 IPG Automotive はドイツ・カールスルーエで1984 年に現地の大学、カールスルーエ大学(現カールスルーエ工科大学)からスピンオフで設立された会社である。設立当初より、車両シミュレーションとリアルタイム演算を両立させる事を会社のミッションとして定め事業を継続している。その時代から、ドライバモデルと環境モデルの連成を重視し、ドライバの運転操作をベースにした試験、Maneuver Testingを重視してきた。昨今のADAS、AD 開発で欠かせないセンサモデルの機能向上などと並行して車両と環境(道路と交通流)、ドライバを含む閉ループ検証をバーチャルで実現する事の重要性をあらためてご紹介する。

車両開発における「真のテストプラットフォーム」

 モデルベース開発、モデルベースシステムズエンジニアリングの実現に向けて、様々なツールが開発されている。最近の開発では、試作車を利用した検証や試験が時間的、コスト的制約により難しくなってきた(図1)。


図1:車両開発における課題

  

 加えて、車両内のシステムの複雑化に伴い、より実車レベルでの検証の重要性が増してはいるものの、実際には十分な検証環境が整っているとは限らない。そこで、IPG Automotive では、車両開発に携わっている全てのエンジニアに、開発のプロセス全般で利用できるバーチャル・テスト・ドライビング環境を提供する事をミッ ションとしている(図2)。


世界においてバーチャル車両によりモデルやシステムを評価
開発プロセスのあらゆる段階においてバーチャル・テスト・ドライビングを結合

図2:IPG Automotiveのソリューション

  

 上記のミッションを実現する為に必要な要素は、大きく5 つに分類できると考える(図3)。
 ● バーチャル・テスト・ドライビング(閉ループ環境)
 ● 統合プラットフォーム(ソフトウエア/ハードウエア)
 ● 可視化(ビジュアライゼーション)
 ● テスト自動化& テスト自動評価
 ● 並列演算能力(HPC、 クラウド)


図3:統合プラットフォームに不可欠な要素

 上記の機能を満たす単独のツールは多く存在するが、車両開発目的で全ての機能を包含するツールは多くは存在しない。IPGAutomotive では上記の全てを含むツールこそ、真の車両開発におけるプラットフォームになり得ると確信している。

アプリケーション領域

 IPG Automotive が開発するCarMaker 製品ファミリは車両開発のプラットフォームになるべく、ビークル・ダイナミクス、パワートレイン、先進運転支援システム(ADAS)、自動/自律運転(AD)の領域で活用頂ける環境を提供している。


 IPG Automotive のコア・コンピタンスであると同時に、欧州のお客様を中心に、シミュレーションベースのESC 認証向けに活用されている。パワートレイン、ADAS / AD 系アプリケーションにおいても、車両モデルの重要性は増大しており、お客様からも安心して利用頂ける車両モデルを提供している。


 従来のコンポーネントレベルの検証から、車両一台分の検証を開発のあらゆる段階で実施する必要性が高くなってきた。特にRealDriving Emission(RDE)の検証では実際の道路環境を走行する際の検証が必須となり、バーチャルテストの重要性が増している。
 また、最近では各種テストベンチとの連成し、台上試験でありながら、実際の道路を走行したかのような試験を実施できるようになってきた。IPG Automotive でもCarMaker / TestBed という新しい製品で対応している。


 本領域での一番の課題はセンサモデルと複数のセンサを用いたセンサ・フュージョンでの実現である。IPG Automotive でもカメラ、超音波、レーダ、ライダの主要センサを全て持ち合わせている。且つ、開発段階、検証目的に応じた3 つのタイプ(理想状態のセンサ、HiFi センサ、RSI センサ(Raw Signal Interface センサ)のセン サモデルを提供可能である(図4)。


図4:センサモデルの分類

 RSI センサは各センサの電波、音波レベルの計算をGPU 上でレイトレーシングの技術を活用し、高速演算が可能となっており、リアルタイム演算にも対応している。
 今後のAD 系の制御系構築ではAI 技術の利用が多くなることが予想されている。AI 技術確立には教師データが必要であるが、シミュレーションで教師データを作成し学習する為に様々な技術が追加された(図5)。


図5:AI 技術への活用例

並列演算を用いた加速試験技術

 IPG Automotive は提供するシミュレーション環境の全てがリアルタイム演算出来ることを保証している。その為に標準のCarMaker でもCPU とGPU での並列演算は実現していた(図6)。


図6:1 台のPC 上での並列処理

 最近のセンサ・フュージョンを計算する為に、複数のGPU を並列で利用する事への対応も既に実施しており、特にGPU の性能向上は著しく、IPG Automotive としても積極的に利用する方向で開発を進めている。
 一方で、SIL、MIL の段階では、リアルタイム以上の高速演算を求められている。IPG Automotive のCarMaker 製品ファミリはHPC やクラウドへの対応を通して、今後のより柔軟で高速な並列演算を実現する事に注力している(図7)。


図7:並列演算実現のためのHPC、クラウド対応

  



2020年5月1日発行
次世代自動車技術最前線2020より転載

  

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