最前線コラム

SOLIZE が見据える自動運転普及の先【SOLIZE】

 100 年に一度の大変革期を迎えている自動車業界は、「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」を中心とした技術革新の真只中にいる。2020 年はこれらの実用化に向けてさらなる進歩が求められる年になるであろう。
 SOLIZE は、その実現に向けて、モデルベース開発(MBD)による制御システム開発という視点から、自動車開発の現場を経験しているエンジニアがお客さまと共に取り組みを進めている。特に、これからの自動運転開発は、“自動運転だからこそ安心で滑らかに気持ち良く走る”ために、ビークルダイナミクス(走る・曲がる・止まる)を司る制御システムがますます重要になると考えている。SOLIZE の技術をリードする二人のエンジニアが、その背景や想いを語る。

自動運転時の緊急回避シミュレーション例

  

    お二人の経歴を簡単にご紹介ください。


安野:自動車会社とサプライヤーで、ビークルダイナミクスを司る制御システムと、それに必要なシミュレーション技術の両方の開発に長年取り組んできました。
鎌田:私も自動車会社で4WD、HEV1) やEV の制御システム開発と、それに必要なHILS2) 構築を約20 年間担当してきました。

  

    自動車変革のキーワードCASE の、A(Autonomous =自動運転)に必要な
    技術について教えてください。


安野:周囲環境の検知・認識といった技術はもちろん重要です。ただ、これらはやがて“事故を起こさない・安全”という、当たり前の性能を実現するための標準技術になると考えます。
 各社が魅力や差別化を打ち出すには、例えば、お客さまに“このクルマの自動運転は本当に滑らかで、気持ち良くて安心。 燃費もすごく良い”と感じていただくことが必要でしょう。すなわち、“熟練ドライバーがさまざまなシーンで発揮する運転技量を、クルマ自身が再現すること”が求められるのです。
 車両側で言えば、土台となるビークルダイナミクスはますます重要になります。加えて、シーンを問わずに燃費良く走らせる技術も求められます。
 一方、評価するシーンの多さを考えると、MILS3) やHILS といったバーチャルシミュレーション技術をいかに上手く活用するかが鍵となるでしょう。

安心と気持ちよさを追求するための制御シミュレーション

    自動運転の開発におけるSOLIZE の特長は何でしょうか?


安野:先ほど申し上げた、土台となるビークルダイナミクスをさまざまな制御システムと組み合わせたシミュレーション技術に強みがあることです。例えば、自動運転とステアリング・ブレーキの統合制御を組み合わせ、緊急回避するといった複雑なケーススタディも既に行っています。横からの不意なクルマの飛び出しなど危険の発見が遅れるシーンでは、自動運転は止まるのではなく、ステアリングで避けることが求められます。 発見タイミング、ステアリングの最大操舵パワー、路面の状況等に応じてどのように回遊コースを設定すればよいか、また、自動車が旋回する際のモーメントをステアリングとブレーキでどう分担して生成するのが合理的か、といった検討です。
鎌田:当社にはEV パワートレインのモデルがあり、バーチャルで運転性や電費のシミュレーションができるのが特長です。
 電費を例に取ると、EV は自動運転との相性が良い。変速機がなくトルク応答性が良いので、設定した目標速度に追従する制御を行いやすいためです。電費優先で、できる限り急加速を避け、一定速度で走るタスクと自動運転性能の両立といった複合課題も当社のモデルで検討できます。
 さらに、ビークルダイナミクスモデルを組み合わせれば、自動運転時の複雑な車両挙動もスタディできます。例えば、電動車には前後に独立したモータを持つ4WD がありますが、前後の駆動力配分を変えることで、ヨーゲインを制御できます。これを活かして旋回中の安定性を高め、安心して気持ち良く走る制御を検討することも可能です。

    SOLIZE としての次世代自動車技術開発への想いを教えてください。


安野:これから電動化・自動運転分野に参入されるOEM 様やサプライヤー様には、高いハードルを感じることなく、要求仕様の検討やハードウエア・ソフトウエアの設計検証を効率良く、かつ精度高く進められるよう、技術サポートと開発環境をご提案していきます。
 また、既に開発を進めているお客さまには、今後増えていく車種適合開発を効率良く進められるようご支援してまいります。

1)HEV :Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド車)
2)HILS :Hardware In the Loop Simulation
3)MILS : Model In the Loop Simulation

  

SOLIZE Engineering 株式会社
MBD 事業部 テクニカルフェロー
安野 芳樹
SOLIZE Engineering 株式会社
MBD 事業部 シニアエキスパート
鎌田 達也
1983 年 日産自動車株式会社入社。ブレーキやステアリングを初めとするクルマの運動制御システムの開発を担当。スカイラインやシーマ等、同社代表車種への新技術採用に長年携わる。
カルソニックカンセイ株式会社(現マレリ株式会社)を経て、2019 年 SOLIZE Engineering 入社。
若手エンジニアと、クルマの“走る・曲がる・止まる”やモデルベース開発の理想を熱く語る日々。
1992 年 三菱自動車株式会社入社。自動車の乗心地・操縦安定性に関わるサスペンション制御システムの先行開発を担当。
1998 年 日産自動車入社。4WD 制御開発、電動4WD 制御開発、MBD を前提としたHEV&EV 制御開発とHILS 構築を担当。2 年間の中国東風汽車赴任を経て、電動パワートレイン開発プロジェクトマネージメントとコストマネージメントを担当。
2020 年 SOLIZE Engineering 入社。

  



2020年5月1日発行
次世代自動車技術最前線2020より転載

  

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