最前線コラム

機構解析ソフトウエアRecurDynを用いた歯車動力伝達シミュレーション【ファンクションベイ】

開発の背景とターゲット

  近年、EV/HVの普及に伴い、動力伝達システムに起因する振動騒音問題の重要性が高まっています。
歯車による動力伝達システムでは、歯車のかみあいによる振動がシャフト、ベアリングを介し、ハウジング、車体へと伝達し、「かみあいミスアライメント」が振動や騒音を引き起こす主要な原因の1つとなります。
 シミュレーションにおいて「かみあいミスアライメント」を精度良く計算するためには、①歯車の接触計算(かみあい剛性の変化を考慮した反力)、②シャフト単体の変形(曲げ、ねじり)、③クリアランスを考慮したベアリング支持剛性、④ハウジングの変形 を適切に計算できる必要があります。この中でも起振源となる歯車の接触計算の精度は特に重要です。
 このような背景から、歯車による動力伝達システムの振動騒音現象を高精度に計算することをターゲットとしたドライブトレイン系ツールを開発しました。

図1 RecurDynを用いたトランスミッション動解析例

ドライブトレイン系ツールについて

 RecurDynのドライブトレイン系ツールは、自動車関連、トランミッション関連のみならず、歯車による動力伝達システムに対して、幅広く対応することが可能な解析ツールで、以下の機能で構成されます。
 

□ RecurDyn/Shaft
  容易に弾性梁要素を使用した
  シャフトを作成し、変形
  (曲げ、ねじり)を考慮した
  計算が可能

□ RecurDyn/Bearing KS
  ベアリングの作成、および
  ベアリングの3次元特性を
  考慮した反力と支持剛性を
  高精度に計算

□ RecurDyn/Gear KS
  ギアの形状作成、および
  ギアのかみあい剛性を
  考慮した接触力を計算

図2 ドライブトレイン系ツール構成

解析と実測の比較検証

 図3に示す装置を用いて平歯車を用いた実験を行い、RecurDynの解析結果と比較検証しました。
この比較検証では、かみあい次数に現れる駆動トルクの変動を解析結果と比較しました。その結果を図4に示します。
負荷や回転速度に対する駆動トルクの変化の傾向は実験結果に対して同様の傾向を示しており、RecurDynモデルでは、歯車のかみあい+ベアリング剛性+シャフトの曲げ、歯車伝達系の挙動を精度良く計算できていることが確認できます。

図3 実験機と解析モデル
 

図4 実験と解析の結果比較
(負荷トルクに対するかみあい1次の変化)

機構解析ソフトウエアRecurDynについて

 RecurDynは最高の計算効率を実現するRecurciveFormulation理論に加え、運動方程式定式化のレベルで有限要素法が統合されたMFBD(Multi Flexible Body Dynamics)ソルバーを中核に、複数領域連成(Multi-disciplinary)による高度な解析機能と、使いやすさ(Easy to use)を追求した操作環境を併せ持つ先進の機構解析ソフトウエアです。
 キネマティック解析、ダイナミック(動力学)解析などの標準的な機構解析機能から、大変形かつ接触を考慮した非線形弾性体まで扱える機構+構造連成解析、機構と粒子法(流体)の相互作用を考慮しながら計算する機構+粒子法連成解析、複雑な制御系のシステムを機構モデルに反映させる制御+機構連成解析など、製品の機構を検討するうえで必要なあらゆる解析機能を提供しています。
 また、高度な解析を自動化しテンプレート化するツールキットやカスタマイズ機能など、幅広いユーザーにより簡単に操作いただける環境を提供しています。 高度化・複雑化した、精密な機構モデルを数多く搭載する戦略的製品設計・開発に、ぜひ世界に認められたRecurDynの機構解析環境をご活用下さい。
 

RecurDynの特徴

■Multi Flexible Bode Dynamics:機構+構造連成解析
 線形弾性効果を考慮できるモード合成法に加え、直説法を採用したことで、大変形かつ接触を考慮
 した非線形弾性体まで扱える機構+構造連成解析=MFBD(Multi Flexible Body Dynamics)環境を
 実現します。
 
■Particles:機構+粒子法連成解析
 RecurDynは、機構と粒子法(流体・粉体)の相互作用を考慮しながら計算する機構+粒子法連成
 解析環境を実現します。機構側は機構モデルの動き(位置、速度情報)を粒子法側へ送り、粒子
 法側では、粒子の挙動によって発生する力(流体力・粉体力)を機構側に送ります。
 
■Control
 RecurDyn環境に一体化した制御システムシミュレータCoLinkやMATLAB/Simulinkなどの外部ソフト
 を使い、複雑な制御系、電気系、時間依存システムをモデル化して、RecurDynで作成した機構モデル
 と連成させることで、ファーム設計、電気設計、機構設計を包括するプラットフォームを実現します。
 
■Application Toolkits:特定用途ツールキット
 エンジン系システム、ドライブトレイン系システム、履帯走行、柔軟媒体、機械要素(ギア、チェーン、
 ベルト)などの特定用途向けに、インターフェースの専用カスタマイズや接触定義の自動化により
 手早く簡単にモデルを自動作成します。
 
■Automation & Customization:自動化・カスタマイズ
 RecurDynのカスタマイズ機能ProcessNetやeTemplateを使えば、通常のRecurDynのGUIを操作せずに
 機構解析を行うことが可能です。これにより、設計者が容易に短時間でモデルを作成、解析、結果評価
 できるユーザー独自の機構解析自動化ツール環境を構築できます。

機構解析入門セミナーのご案内

機構解析をこれから始める方向けに、機構解析の基礎知識を一通り学んで頂くセミナーを東京と名古屋で開催しております。機構解析の構成要素から構造解析(FEM)、粒子法との連成まで事例を交えて解説致します。また、実際にご自身でRecurDynを操作して、基本的な機構解析の例題から、制御、構造との連成解析の例題を演習頂きます。
ご参加いただくには、お申し込みが必要となります。下記弊社ホームページよりお申込みと詳細の確認をして頂けます。
http://www.functionbay.co.jp/system/seminar/



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2020年4月1日発行
テスティングツール最前線2020より転載