最前線コラム

光ファイバ計測システム「FBI-Gauge」の 自動車分野での最新活用状況【富士テクニカルリサーチ】

  日本の自動車産業は、世界の頂点を極めるような高品質と高生産性を両立し続けています。モビリティの環境が劇的に 変化する中、さらなる高品質・ハイサイクルのためには、従来にない計測技術で事実を見極めた上で、CAE を活用した効率的検討が望まれるところです。
 光ファイバをセンサとし、広範囲に温度とひずみの同時計測可能な計測システムFBI-Gauge は、これまで確認が困難であった各種現象の検討が可能です。自動車用金型を中心に活用状況をご紹介します。

「FBI-Gauge」の特徴と活用方法

 図1は主な特徴と光ファイバの取り付け方、図2は機器外観と動作原理のイメージです。直径わずか155μm の光ファイバを取り付けることで、広範囲の温度・ひずみ分布とその変化をリアルタイムで計測が可能です。シャーシやホイールハウス内部、あるいはバネ部品などでは、走行中の計測実績もあります。画像相関法や放射温度計とは異なり、表面観察だけに制約されること無く内部の変化の観察も可能です。

図1. 光ファイバ 特徴と取り付け方

図2.機器外観と計測原理

プレス型挙動の詳細観察

 図3はプレス型の計測例です。プレス瞬間のひずみ分布をコンター表示しています。広範囲に、また表面から観察困難な内部まで、極めて詳細に計測できています。図4は別のプレス型の例です。プレス用パネルの有無によりひずみ挙動が逆転しています。また、パネル無し成形の場合は下死点におけるわずか0.2 秒間での急激な変化が確認できます。従来把握することができなかった挙動を元に、金型の耐久性を維持しながらの軽量化やハイサイクル化など、技術の高度化に効果を上げています。

図3.プレスの瞬間のひずみ分布の計測

図4.プレス用パネルの有無に寄るひずみ挙動の差

型挙動とCAE の相関性検討

 図5は、プレス型の懸案の課題である皺への対応の例です。CAE技術の向上で予測可能とはなっていましたが、実測検証の手段がありませんでした。本システムでひずみの分布や変化を計測し、CAEとの相関性が確認できました。

図5.計測と解析の相関性検討:プレス型局部にて

 図6は、ダイカスト型の懸案の課題であるバリの対策検討例です。入子の詳細温度分布と高速計測の結果、蓄熱により温度分布が助長される現象や1サイクル内で局部的に200℃以上の温度差が生じることが確認できています。より厳密性を高めてきたCAE の検証ができたことで、デジタル的な対策検討が可能となりました。

図6.ダイカスト型における温度の分布と経時変化

見えない現象の可視化 1)2)

 VaRTM 成形において樹脂の浸透挙動は重要な検討要素ですが型内の挙動であり、正確な計測は困難でした。図7は注入する樹脂と型の温度に差があることに着目した検討例です。上型・下型の表面にファイバを設置し温度の変化挙動から樹脂の流入先端位置を検知します。樹脂の浸透挙動が、型内に配置する炭素繊維シートの積層 数に依存すること、さらに積層の影響が非線形的挙動となることを解明しました。アイデア次第で見えない現象の可視化ツールとしても活用できます。

図7.VaRTM成形時の樹脂含浸位置の温度に寄る検知

ひずみと温度の同時計測によるプロセス詳細検討 3)

 射出成形は、溶融した高分子樹脂に圧力を作用させる加工プロセスで、樹脂の粘弾性や温度依存性が影響する複雑な現象です。温度とひずみが同時に変化する現象であり、なおかつ型内現象のためにその観察は困難でした。本システムを活用し、温度とひずみの変化を同時に把握することに成功しました。(図8) 詳細は割愛します が、この現象検討に流動解析(3D TIMON®) と構造解析(Abaqus)を連成させたCAE を活用し、充填樹脂圧力の金型の変形への影響等の検証が可能となっています。

図8.射出成形時の型内挙動のひずみ・温度同時計測

まとめ

 FBI-Gauge の販売から数年が経ち、ボディひずみや排気管温度分布の計測のみに留まらず、型による加工の瞬間の挙動把握などへと活用が進化しています。
 計測およびCAE 検証は、お客様主導の事例、当社にて受託の事例を総合してご紹介いたしました。CAE と計測を両輪としたコンサル会社だからこそ、案件ごとでお客様のニーズに合わせた対応が可能です。今後も極限の追及に貢献してまいります。

参考文献
1)浅井,瀬戸,田中,山部:VaRTM 成形中の樹脂含浸挙動評価に関する研究 第1報,
  成形加工’18, p.85 (2018)
2)浅井,瀬戸,田中,山部:VaRTM 成形中の樹脂含浸挙動評価に関する研究 第2報,
  成形シンポジア’18, p.103 (2018)
3)高原:光ファイバセンサによる 温度・ひずみ計測システムの金型への適用,型技術
  Vol.35, No.2, p.22 (2020)


株式会社富士テクニカルリサーチ
営業本部 西日本営業部
高原 忠良
TEL 045-650-6650 ㈹  URL http://www.ftr.co.jp
2020年4月1日発行
テスティングツール最前線2020より転載