最前線コラム

マルチアングル分光測色計CM-M6 で確認する 自動車のバンパー、ボディや部品との合わせ部の色差

 自動車の塗装では、いわゆるメタリックシルバーやパールホワイトといった、微細な金属片や鉱物由来の雲母片で光輝感を出す材料を含むものが一般的になっています。これらの塗装に対しては複数の受光方向を備えるマルチアングル測色を活用しなければ色差を検知することはできません。実際に自動車ボディではどのような活用をしていけばよいのか写真と測色値をあわせて紹介していきます。

1.マルチアングル測色の機構について

 CM-M6 は従来自動車向けとして検出力の高さで支持されてきた1方向照明 6角度受光方式を採用しています。さらに2つの照明・受光系が測定器の中心軸に対し対称に配列された「ダブルパス光学系」が採用されており、曲面を測定しても傾きによる誤差を発生させない構造になっています(図1)。

図1:CM-M6ダブルパス光学系(イメージ図)

  

 45 度で光源が測定面に入射した正反射位置に対し15 度、25 度、45 度、75 度、110 度に加え、正反射をまたぎより測定面に近づいた-15 度の受光角でも反射率と色座標を取得することができます。

2.反射強度と明るさの指標L* について

 正反射光に近い(受光角が小さい)ほど、反射強度が強くなります。15 度> 25 度> 45 度> 75 度> 110 度といった順に、光の強度を見た目の明るさに変換した指標であるL* も増加していきます。
 メタリックシルバーでそのまま15 度や25 度のL* を出力すると、L* > 100 となる場合も多くなります。
 これは「想定された白(完全拡散面)より明るい」状態であり、キラキラ・ギラギラといった感覚に例えても良いかもしれません。 ですので、そのままL* を均等色空間とみなして座標間の差を計算しないようにしてください。

図2:フロントバンパーとフェンダー測定時(下・中・上)

3.シルバー色のバンパーとフェンダーの測定例

 合わせ部3 組6 か所を測定し(図2)、L* を出力して比較しました(図3)。-15 度と15 度では左側のバンパー部に対し右側のフェンダー部が高く、逆に45 度、75 度、110 度では低くなる結果になりました。

図3:各部位のL*比較(下・中・上)

  

 上部や中部の測定部の形状は平面ではなく曲面で構成され、傾きによる誤差が懸念されたのですが、本機器による測定では影響は感じられませんでした。
 実際に見た感覚を写真で記録し、さらにPhotoShop のカラーサンプラーツールでL を抽出してみました(図4)。フェンダー(右)が白く見える場合もあれば、反対にバンパー(左)が明るくなるときもありました。

図4:PhotoShopのカラーサンプラーツールでLを確認する

  

4.ルーフレールカバーの測色例

 続いてルーフレールにあるカバーとその周囲で測定し目視結果と比較してみます。小さな部品ですがCM-M6 ならば測定が充分可能な面積です。この部品は斜めで見るとカバーが白く見えます。
PhotoShop のカラーサンプラーツールでもL が大きく異なっています(図5)

図5:ルーフレールカバーの測定と周辺部のカラーサンプラーツールによる抽出

  

  

図6:ルーフレールカバー、ルーフモール、ルーフの測定結果

  

 測色結果では、ルーフレールカバーのL* は-15 度や15 度では他の部品に対して低くなり、逆に45 度と75 度と110 度でL* は高くなっています(図6)。白く感じる反射強度差はこちらのほうでとらえているのか、それとも明度変化の傾きが小さくフロップ感が低くなるので白っぽく感じるという解釈もできます。
 なお、より正面視に近い撮影では差は目立ちにくくなり、拡大するとメタリック塗料の特徴である光輝粒子の違いがわかります(図7)。これらの粒子の個々の輝きが角度別の反射強度の違いを構成し、多角度測色で確認できる色に反映されているのでしょう。

図7:白く見えるルーフカバー部を上から近接撮影したところ

  

5.バンパー補修部の測色例

 別の車両で測定を行ってみました。バンパーの境界部に白黄色い補修痕があります。カラーサンプラーツールでは、補修部分のLは66 → 68 であまり大きな差ではありませんでしたが、黒いスジムラが入っているため対比すると目立つのでしょう。
補修時にボカシがうまくできていれば痕は目立たなかったと思われます(図8)

図8:バンパー補修を含む合わせ部とカラーサンプリング結果

  

  

 測色値ではL* は-15 度や15 度で差が大きくなっている部分が目立ちますが、フェンダー>バンパー補修部>バンパーで、単にL* が高いから白いというわけではありません。45 度のL* やb*が写真を反映しているようです(図9)。

図9:バンパー補修部測色結果

  

  

6.測色値をどう使うか

 ルーフレールカバーやバンパー補修部の例を見ると、L* =白さという固定観念を脱して、L* > 100 の場合は、粒子も含めた反射の強さとして粒子やムラの含めた変化として検出されていると捉えていただきたいです。そして15 度や-15 度での許容幅は25 度や45 度よりも緩くなります。なお塗色のL* や受光角間の変化量などから導く式も存在します。   
 6角度のいずれか、もしくは組合せを使えば検出はできているので、形状を考慮し目視と対比しながら管理幅を設定していただきたいと 思います。

  


著者:若井 宏平(色差.com)株式会社クリイノ創研
協力:コニカミノルタジャパン株式会社
  
2017年4月1日発行
テスティングツール最前線2017より転載

  

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