Topics トピックス/リリース
2025.06.16
日本初 バッテリー駆動の完全電動作業船が竣工【日本郵船】
2025年5月26日
日本初 バッテリー駆動の完全電動作業船が竣工
ノウハウ活かし新技術確立、船舶の脱炭素化目指し社会実装進める
当社が保有する完全電動作業船「e-Crea(エクレア)」(以下「本船」)が5月23日に、当社グループ会社の京浜ドック株式会社(神奈川県横浜市、以下「京浜ドック」)子安工場で竣工しました。本船は発電機を搭載しない、日本初*のバッテリー駆動の作業船であり、今後京浜ドックが運航を行い、同工場でタグボートの入渠・出渠時の補助作業に従事します。本船建造時のノウハウを活かし、船舶の低・脱炭素化を実現するための新技術を確立し社会実装を進めていきます。(*リリース時点、当社調べ)
![]() 航行する本船 |
開発の背景と経緯 |
海運の脱炭素化がグローバルで求められる中、当社グループはアンモニアをはじめとする次世代燃料の活用を積極的に進めています。完全電動作業船は環境に配慮した持続可能な社会の実現のための有力な選択肢であり、当社グループ唯一の船舶建造業を担う京浜ドックが中心となり、新技術の研究開発および社会実装を主な目的として本船を完成させました。
本船の特徴 |
・完全電動推進
京浜ドック子安工場内の陸上設備から充電したバッテリーのみで駆動します。二酸化炭素(CO₂)を排出しないことに加え、化石燃料船に比べ静粛性にも優れています。
・コンパクト設計
全長約9メートルの小型船体に必要機器を集約。入出渠の補助作業など、小回りの利かない狭い場所での作業に適しています。
技術的課題とその克服 |
・重量増による設計変更
電動船特有の電池モジュールが搭載されているため、当初の想定よりも内部重量がかさみ、船体バランスの維持・調整が難しくなりました。機器やケーブルなどの配置を見直すことで、船体内部の空間を最大限生かす設計変更で対応しました。
・温度管理
バッテリーや電気モーターは高温になると火災のリスクが高まります。機器および船内を一定温度に保つため、水冷装置や空調ダクトを多層的に配置しました。さらにバッテリー室は防火や有害ガス対策を強化するとともに、換気を円滑に行える構造にすることで、安全性を確保しました。
![]() 建造の様子 |
今後の展望 |
タグボートや作業船への完全電動船の導入は、船舶自体の脱炭素化にとどまらず、船舶の入出港や修繕などを含む海運・港湾サービス全体の脱炭素化にも寄与すると期待されています。当社グループは、電動化技術の研究開発を継続し、大型船への段階的な応用を含めて検討を進めます。本船の建造で培った知見や運航データを、2026年12月に竣工予定の電気推進タグボートの建造(関連リンク)に反映し、省エネ技術や温室効果ガス排出削減のための次世代ソリューション開発に役立てます。
本船概要 |
・船名:e-Crea(エクレア)
船名は京浜ドックの社内公募で決定。Electricity(電気)の「e」と、ラテン語で「創造する」を意味する「Creare」が由来です。京浜ドックの経営理念である「創・造・楽」(創る、造りきる、楽しく)を象徴するe-Creaは、見た目がフランス菓子に似ていることから「エクレア」の愛称で呼ばれています。
・全長:約9.0m
・幅:約3.0m
・深さ:約1.7m
・乗員:最大14名
・主な用途:タグボートの入出渠や船体移動の補助作業
・推進方式:完全電動(バッテリー充電式)
・造船所:京浜ドック
・船級:日本小型船舶検査機構(JCI)
・船主:日本郵船
・運航:京浜ドック
会社概要 |
京浜ドック株式会社
本社:神奈川県横浜市
代表取締役社長: 中村 利
ウェブサイト:https://www.keihindock.co.jp/
日本郵船株式会社 ホームページはこちら