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2025.06.03
2025 ビジネスアップデート 説明概要【本田技研工業】
2025年5月20日
2025 ビジネスアップデート 説明概要
~事業環境を踏まえた四輪電動化戦略の軌道修正について~
Hondaは本日、四輪電動化を中心としたHondaの取り組みについて説明会を開催し、取締役 代表執行役社長 三部 敏宏(みべ としひろ)が出席して説明を行いました。
以下、その概要をお知らせします。
1.足元のEV市場環境の変化と軌道修正の方向性
Hondaは、自由な移動の喜びをサステナブルに提供し続けていくために、「環境」と「安全」が最重要課題であると考え、2050年に「Hondaの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラル」「Hondaの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロ」の実現という高い目標を定めています。
カーボンニュートラルの実現に向けては、乗用車をはじめとする小型モビリティの領域において、長期的視点ではEV(電気自動車)が最適解であると考え、その普及に向けて大きく舵を切り、取り組みを進めてきました。
一方で、四輪事業を取り巻く環境は日々刻々と変化しています。特に、EV普及の前提となる各地域での環境規制の変化などによるEV市場拡大スピードの鈍化や、通商政策動向の変化など、事業環境の不透明さが増しています。このような環境下でも競争力を維持し、Hondaが目指す「モビリティを通じて、人の役に立ち、驚きや感動をもたらすような新価値を提供し続けること」を実現し続けるためには、電動化に加え、「知能化」の強化によって新価値を創造し、お求めやすい形で広く提供していくことが鍵になると考えています。
このような考えから、以下の2点の方向性のもと、四輪電動化戦略の軌道修正を行います。
― 知能化を軸とする、EV・ハイブリッド車の競争力強化
― パワートレーンポートフォリオの見直しによる事業基盤強化
今後の四輪事業で最大の競争領域となる知能化の領域において、独自開発の次世代ADAS(先進運転支援システム)をキードライバーとし、パートナーとの協業も活用しながら多角的に新価値創造に取り組んでいます。この知能化進化を軸としながら、EVやハイブリッドといった、パワートレーンポートフォリオの見直しを行うことで事業基盤を強化していきます。
EVは、足元の市場減速を踏まえた商品投入計画の見直しにより、2030年時点のグローバルでのEVの販売比率はこれまで目標としていた30%を下回る見通しです。一方、足元の需要が高いハイブリッド車については、2027年以降に投入する次世代モデルを中心に、EV普及までの過渡期を担うパワートレーンとして商品群を強化していきます。この軌道修正を着実に実行することで、2030年の四輪販売台数は、現在の規模である360万台以上、その中核であるハイブリッド車は220万台をそれぞれ目指していきます。
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1-1.次世代ADASの開発、適用拡大による四輪競争力の向上
Hondaは、知能化におけるキーテクノロジーの一端として、カーナビで目的地を設定すると、一般道か高速道路かを問わず、目的地までの全経路において、クルマがアクセルやハンドルなどの運転操作を支援する次世代ADASの独自開発を進めています。次世代ADASの開発において、技術的な難易度がとりわけ高いのは、交通参加者が多様で、交差点での右左折が頻繁に発生する市街地ですが、Hondaは、AD(自動運転)開発で培った認識技術や行動計画技術を生かし市街地も含めて目的地まで安全、快適に走行できる次世代ADASを開発します。
この新たな次世代ADASを、2027年頃に北米や日本で投入を予定する、EV・ハイブリッド車の主力ラインアップに幅広く適用していきます。
現状、次世代ADASは、電力確保やSoC(システム・オン・チップ)の冷却といった技術的な課題により、EV・PHEVの上級モデルを中心に搭載されています。一方、Hondaのハイブリッドシステムは、高効率なエネルギーマネジメントを緻密に実行する本格的なハイブリッドシステムであり、このような技術課題をクリアできる優位性があると考えています。また、関連デバイスを搭載する上でも、機械部分を最小に抑え、人のためのスペースを最大化する、Honda独自のM・M思想※1により、室内空間やデザインへの影響を最小化できることから、小型車への搭載も可能とします。
こうした独自の強みを生かし、次世代ADASを、EVだけではなく、広く普及が進むハイブリッド車へも搭載することで、大規模な事業スケールを活用した高い商品競争力と低コストを両立し付加価値の高い「移動の喜び」をお求めやすい価格でお客様にお届けすることを目指します。
また、電動化・知能化が他地域よりも早く進む中国においては、自動運転技術を開発する中国のスタートアップ企業「Momenta(モメンタ)」との共同開発により、中国の道路環境にあった次世代ADASを、今後中国で発売する全ての新型車に搭載していきます。
※1 マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想。人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとする、Hondaのクルマづくりの基本的な考え方
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1-2.ハイブリッド戦略の強化
Honda独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」と、それを搭載するプラットフォームを全方位で進化させていきます。
小型・中型車向けのシステムにおいては、エンジンの高効率エリアの拡大とハイブリッドユニットの駆動効率向上などにより、世界最高効率のパワートレーンを実現します。これに、操縦安定性などの進化やさらなる軽量化を実現する次世代プラットフォームと、高精度で応答性の高いモーター制御を特長とする新開発の電動AWD(オールホイールドライビング)ユニットを組み合わせることで、10%以上の燃費向上を目指すとともに、Hondaならではの五感に響く上質・爽快な走りをさらに進化させていきます。
そして、四輪事業の軸としてハイブリッドモデルのコスト競争力をさらに上げていくために、バッテリーやモーターなどの主要部品を中心に、お取引先様との協創活動や、生産のさらなる効率化、部品共用化などを行うことでコスト低減を追求しています。これらの取り組みにより、次世代ハイブリッドシステムのコストは、販売台数の拡大に合わせて、2018年モデルに対して50%以上、現行の2023年モデルに対しては30%以上のコスト低減を目指します。
また北米市場では、広いスペースと高い積載能力を持つ大型車への底堅い需要があります。今後もそのニーズにサステナブルに応えていくために、2020年代後半の商品投入を目指し、力強い走行性能、牽引性能に、環境性能を兼ね備える大型車向けのハイブリッドシステムを開発します。
このように商品競争力に磨きをかけながら、2027年から4年間で次世代ハイブリッドモデルをグローバルで13モデル投入することで幅広いラインアップを構築し、今後も拡大する需要を着実に捉えていきます。
1-3.EV普及に向けた取り組み
足元のEV市場の減速を踏まえると、2030年時点のEVの販売比率の見通しは、これまで目標としていた30%を下回ると想定しています。これに伴い、EVのラインアップや投入時期、カナダでの包括的バリューチェーン構築などの投資時期といったEV戦略のロードマップを見直しています。 一方、カーボンニュートラルの達成に向けては、乗用車の領域ではEVが最適解である考えに変わりはなく、これまでEV普及期に向けて仕込んできた施策は適切なタイミングを見ながら、引き続き着実に実行していきます。 今後EV事業の柱となる「Honda 0(ゼロ)シリーズ」は、2026年に第1弾を投入します。CES 2025でご紹介したASIMO OSやAD/ADASを軸に、お客様一人ひとりに「超・個人最適化」されたソフトウェアデファインドビークル(SDV)の価値を提供していきます。さらに、これに続く次世代モデルでは、より高度なAD/ADAS機能を提供するため、セントラルアーキテクチャー型のE&Eアーキテクチャーの採用に加え、ルネサスエレクトロニクス株式会社と共同で、AI性能として業界トップクラスの2,000 TOPS※2(Sparse)を20 TOPS/Wの効率で実現する高性能なSoCを開発し、SDVとしての価値を高めていきます。 このように、来るべき普及期の到来に向け、EVについても長期的な視野で、着実に、強いEVブランドと事業基盤の構築に取り組んでいきます。
※2 TOPSはTera Operations Per Secondの略。整数演算を1秒あたり何兆回できるかを示す数値でAI処理の性能を表す単位。本ターゲット数値は、sparse(疎)AIモデルを実行した値
1-4.四輪電動化戦略の軌道修正 まとめ
このようにHondaは、モビリティの知能化・電動化時代にふさわしい、新たな独自価値の創造に取り組んでいます。自らハンドルを握りたい時は、Hondaならではの操る喜びを享受できる一方、より楽に、ストレスなく目的地に向かいたい時は、市街地から高速道路までさまざまな環境を快適に移動できる、クルマ一台分の体験価値を提供していきます。
また、四輪事業の変革のシンボルとして、2027年以降に投入する次世代モデルからはEVに加え、ハイブリッド車の主力モデルにも新たなHマークを適用していきます。
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1-5.四輪の生産・調達体制
Hondaは、EVかハイブリッド車かといった需要変動や、各国の政策変動などの不測の要因に左右されにくい、レジリエントなサプライチェーン戦略を目指しています。
現在のEV黎明期と位置づけられる、EVの普及スピードの変動が見込まれる時期には、EVとハイブリッド車の混流生産ラインを軸とし、市場の需要や販売戦略に応じて最適に作り分ける柔軟な生産体制を構築していきます。また、今後のさらなるハイブリッド車の販売台数増加や、その後の中長期的なEVへの移行を見据え、バッテリーを中心とする電動系部品の確保に向けて、既存アセットの最大活用を含めた供給能力・アロケーションの最適化を図ります。
また、Hondaはこれまで、創業時からの「需要のあるところで生産する」という地産地消の理念のもと、サプライチェーンを構築してきました。これに加えて、以前より強化してきた、工場間で生産モデルの移管をスピーディーに行える柔軟な生産体制も、需要変動に応じた生産アロケーションを可能としています。今後も地産地消の考え方をベースとしながら、不測の変化にも強いサプライチェーンを強化していきます。
2.二輪事業の取り組み
2025年3月期における二輪販売台数は、世界シェア約4割となる2057万台となり、37の国と地域において過去最高を達成しました。また、二輪車の需要は、最大市場となるインドを含むグローバルサウスを中心に、人口の増加や所得向上を背景にさらなる拡大が見込まれており、全体市場は現在の5000万台規模から、2030年前後には6000万台規模に成長する見通しです。
この需要拡大を確実に捉えるため、グローバルのお客様の多様なニーズに合わせた魅力的な商品の展開と、供給体制の最適化を図ります。また、二輪車の環境トップランナーであり続けるために、CO2削減への取り組みとして、電動化の加速に加え、ICE(内燃機関)の燃費向上、フレックスフューエルへの対応を拡大していきます。
電動二輪車に関しては、今年2月に、昨年インドで発表した「ACTIVA e:(アクティバ イー)」と「QC1(キューシーワン)」を発売しました。さらに、グローバルモデルとして発表した「CUV e:(シーユーヴィー イー)」と「ICON e:(アイコン イー)」はインドネシアを皮切りに、ベトナム、タイ、フィリピンで販売を開始。CUV e:においては今年、欧州と日本でも発売の予定です。今後は、電動二輪車専用に開発したモデルをモジュール化し、2028年中にインドで稼働する高効率な電動二輪車専用工場での生産を開始することで、電動二輪車事業の体質も強化していきます。これらの取り組みにより、将来的には電動二輪車市場においてもシェアNo.1を目指します。
このように、ICE搭載車と電動二輪車の両輪で、魅力的な商品の継続投入、効率的な供給体制の構築を行うことで、拡大する二輪車の需要を確実に捉えていきます。これにより、二輪事業全体として、長期的には世界シェア5割、2030年においてはICE搭載車と電動二輪車両方を含めてROS(売上高営業利益率)15%以上という盤石な収益基盤を確立していきます。
3.財務戦略 – 収益改善、投入資源の見直し、キャピタルアロケーション
2030年に向けては、二輪事業の継続的な事業拡大と、四輪事業での次世代ハイブリッドシステムやプラットフォームの適用に伴うコスト低減効果、ハイブリッド車の販売台数増加により収益性を向上させ、2031年3月期のROIC(投下資本利益率)目標10%の達成に向けて取り組んでいきます。
また、昨年発表した、電動化戦略の実現に向けた10兆円の投入資源については、カナダでの包括的バリューチェーン構築の2年程度の後ろ倒しや、次世代のEV専用工場の設立タイミング見直しにより、2031年3月期までの間で合計3兆円を減額し、総額7兆円へ見直しを行いました。
この投入資源の減額を踏まえた、2027年3月期からの5年間のキャピタルアロケーションについては、二輪事業での安定的なキャッシュ創出力に加え、ハイブリッド車の販売台数の増加により、12兆円以上のキャッシュ創出を目指します。また、2031年3月期までの資源配分としては、EV関連投資を3兆円減額した一方、ハイブリッド車への投資に関してはミニマムの増加を見込んでいます。また、株主還元は前回同様1.6兆円以上を目指していきます。
市場の変化にリニアに対応した資源配分の見直しにより、将来に向けた仕込みと収益力向上を両立した四輪事業の確立を目指すとともに、二輪事業の強固な収益力も合わせることで、さらなる成長を目指します。また、今後も継続して事業の成長に応じた株主還元を維持していくという意思表示として、DOE(株主資本配当率)を導入します。このように、事業体質のさらなる強化による成長と、安定的、継続的な株主還元の両立を図ります。
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