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リチウムイオン電池用 X線異物検査装置を開発【エスアイアイ・ナノテクノロジー】

2011年8月30日

リチウムイオン電池用 X線異物検査装置を開発
世界初*1微小金属異物の高速検出および元素分析を自動化

セイコーインスツル株式会社(略称:SII、社長:新保雅文、本社:千葉県千葉市)の100%子会社で計測分析装置の製造販売を行っているエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社(略称:SIIナノテク、社長:川崎賢司、本社:千葉県千葉市)は、リチウムイオン二次電池や燃料電池の電極中に混入する可能性のある20μm級の微小な金属異物を数分という高速で検出し、元素分析も自動で行う検査装置の開発に成功しました。本試作機を9月7日から9日まで開催される国内最大の分析機器の展示会「分析展/科学機器展2011」(幕張メッセ)に出品します。

リチウムイオン二次電池や燃料電池への金属異物の混入は、電池の歩留まりおよび寿命を低下させる大きな要因となります。特にリチウムイオン二次電池では発熱の原因となり、最悪の場合は発火の可能性もあります。近年、電気自動車・ハイブリッド自動車および住宅用への採用に伴う電池の大型化により、金属異物の混入を防止する重要度が増しています。このため、電池メーカーを中心に、金属異物の混入を未然に防ぐため、複雑な故障解析が行われています。

金属異物の混入経路は、活物質*2・セパレータ*3などの材料経由のものや、塗工などの製造工程での混入など多岐に渡ります。従来は、不良電池を解体し、X線透過検査装置や顕微鏡によって金属異物の存在箇所を検出し、走査電子顕微鏡や蛍光X線分析装置などで対象となる元素を特定することで混入経路を推測するといった故障解析が行われてきました。しかし、これらの手法ではその性能の限界により、50μm以下の金属異物の検出が困難であり、かつ検出時間が膨大にかかるといった問題がありました。更に、検出した異物に対して別の装置で元素分析を行うため、検出箇所を見失うといった課題もありました。

このほどSIIナノテクではX線透過による金属異物の検出と、蛍光X線による元素分析の2つの技術を融合し、20μm程度の微小な金属異物も検出・分析可能なX線異物検査装置を世界で初めて開発いたしました。*1

本装置に試料となる電極板やセパレータ、容器に入れた活物質をセットして、検査手順の選択後、測定を開始するだけで、X線透過像の撮像から、金属異物の検出、その元素分析までを自動で実行します。そして解析結果として、試料中の金属異物の個数と個々の異物の組成、およそのサイズ、顕微鏡観察像が出力されます。これらは前処理不要、完全自動なので、誰でも簡単に故障解析・抜き取り検査が実施できます。

X線異物検査装置の主な特徴

1.  A4サイズから20μm程度の金属異物を数分で検出
例えばA4サイズの電池電極中から20μm程度の金属異物を検出するためには、従来のX線透過検査装置では数時間以上の撮像時間を要しました※1。SIIナノテクでは最新のX線管球と検出器の採用および新しい画像処理技術により、撮像時間を大きく短縮し、検出スピードを従来よりも100倍以上に上げることに成功しました。A4サイズの電池電極に対して3~6分で撮像を終え、20μm程度の金属異物を認識し、自動検出する事が可能です。

2.元素同定スピードも格段に向上
検出した金属異物に対して、自動で蛍光X線法による元素分析を行います。本装置では独自の高輝度X線光学系を搭載する事により、20μm程度の金属異物の元素同定スピードについても従来装置に比べて10倍程度向上させました。

3.オールインワンで作業効率をアップ
X線透過検査装置と元素分析装置および顕微鏡も含めそれらが一つの装置内に組み込まれており、個々のユニットが連携し全自動で結果が出力されます。これらによりオペレーターは試料のセットだけで測定結果を得ることができ、作業効率が大幅に向上します。

*1 当社調べ
*2 活物質 : 電解質との化学反応により、電子を取り込んだり、放出したりする物質。電子を取り込む活物質を正極活物質、電子を放出する活物質を負極活物質と言う。
*3 セパレータ : 微細な穴が無数に開いたフィルム(ポリエチレン : PEあるいはポリプロピレン : PP)で、正極と負極を電気的に絶縁するもの。


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