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ピッチ系炭素繊維の優れた物性を活かし、新たな市場開拓に挑む ~高熱伝導性C/Cコンポジット材及び高熱伝導・導電性マイクロフィラーの開発~【新日鉄住金マテリアルズ】

2014年9月3日

各種電子機器等の軽量化・高性能化(高放熱・導電)に貢献

新日鉄住金マテリアルズ㈱とJX日鉱日石エネルギー㈱との合弁会社であるピッチ系炭素繊維の専業メーカー、日本グラファイトファイバー㈱(社長:和泉原芳一)は、ピッチ系炭素繊維の物性を活かした、高熱伝導性C/C(カーボンカーボン)コンポジット材*1及び、高熱伝導で導電性も有するマイクロフィラー(超微細粒子)を新たに開発いたしました。
ピッチ系炭素繊維には、PAN系炭素繊維には無い、高い放熱特性や導電性といった、優れた特性があります。これらを活かし近年高まる各種電子機器や自動車部品等の軽量化や熱対策等での高性能化に貢献します。

炭素繊維には、PAN系とピッチ系がありますが、PAN系がアクリル繊維を原料とするのに対して、当社が提供するピッチ系炭素繊維(商品名GRANOC® =グラノック)は製鉄プロセスから副生するコールタールピッチを原料とし、独自の技術を使って精製・改質した後、独自の製造技術により炭素繊維としたものです。ピッチ系炭素繊維は、その製造に高度な技術と製造ノウハウを要することから、高品質・高性能なピッチ系炭素繊維を製造するメーカーは現在世界で3社しかありません。
当社のGRANOC® は、長年の技術開発により弾性率が低い(柔らかな)ものから、極限的に高い(変形のしにくい)ものまで、多種、多様な品種をとりそろえ、高寸法安定性、高熱伝導性(熱の伝わりやすさ)、高耐熱性、減衰振動性、に加え、他のマイクロフィラーより優れた電気伝導性、などの特性を活かし、様々な市場ニーズに応えてまいりました。
GRANOC®は、軽くて強く変形しにくい特性を活かし、PAN系炭素繊維では対応が難しい高弾性の特性が求められる用途(印刷やフィルム用ロール、液晶・半導体製造用ロボットアームなどの産業部材、工場・クレーン・港湾・橋梁・トンネル・道路・建物等のインフラ設備の補修補強用部材、高速鉄道車両の部材、自動車の部材、自転車フレーム、ゴルフシャフト、釣竿などのスポーツ用品)に採用されております。また、GRANOC®は熱膨張係数ゼロという特性を有していることから、世界各国の人工衛星用の各種部材にも採用されております。
なお、新日鉄住金マテリアルズ㈱コンポジットカンパニーでは、日本グラファイトファイバー㈱製のGRANOC®を用いて、炭素繊維強化複合材(CFRP)*2の製造を行っています。高性能複合材「コンポジット」の特長を生かし、土木・建築の補強材料から各種精密機械部材に至る多彩な製品を提供しています。


1. 高熱伝導性C/Cコンポジット材
当社は、高品質成形技術を有する㈱CFCデザイン(福井県鯖江市)との共同開発にて、電子基板や電装ボックス、自動車部品等用途向け高熱伝導C/Cコンポジット材を新たに開発いたしました。
当製品は、面方向にはアルミ並みの面方向熱伝導率(200W/mK(メーターケルビン))をもちながら、繊維の方向をコントロールする独自の工法を用いることで、厚み方向にも高い放熱特性を有するものとなっております。
また、重量は同じ厚みであればアルミの約6割と大幅に軽量化が可能となる上に、熱膨張率も小さく(むしろマイナス(収縮))、電子部品によく利用されている熱膨張率の極めて低いシリコンとの親和性も良好なことから接合の信頼性も高め、極小化している電子部品の軽量化や信頼性向上に貢献いたします。さらに、これまでのC/Cコンポジット材は20mmから50mm程度の厚みが一般的であり、薄いものでも2mm程度でしたが、この度、200μm(0.2mm)を開発致しました。
極薄化により、小型形状の電子基板等にも適応可能となり、さらなる電子部品の軽量化に貢献するとともに、高信頼性、高放熱性が求められる各種放熱部材用途に適応可能な軽量素材としての役割が期待されます。


2. 高熱伝導・導電性マイクロフィラー
当社の高熱伝導性ミルド*3、GRNOC® HC-600やXN-100は各種放熱用途(例えば放熱シート等)、いわゆるサーマルインターフェースなどで幅広い採用実績がありますが、今回この高熱伝導性ミルドをさらに微細化(従来品:繊維長50μm(0.05mm)、繊維径10μm(0.01mm)、新製品:繊維径3μm(0.003mm)、繊維長20μm(0.02mm))した高熱伝導・導電性マイクロフィラーを開発しました。微細化によって従来のミルドより、少量のフィラーで要求される導電性を維持することが可能となりました。
新たに、各種導電塗料などや、導電性を活かした電磁波シールド性の付与材料としての用途展開も検討しています。


3. 高熱伝導性炭素繊維強化複合材(CFRP)
最近の電子機器は、高性能化に伴い機器内部での発熱量が大きくなり、その放熱特性の向上が一段と要求されるようになってきました。
前述のとおり当社のGRANOC®はPAN系炭素繊維に比べ、非常に高い熱伝導性を有していることから、新日鉄住金マテリアルズ㈱コンポジットカンパニーの製造加工する高熱伝導性炭素繊維強化複合材(CFRP)では、PAN系CFRPでは成し得なかった、電子機器などで想定される、熱源付近での蓄熱(ヒートスポット)を抑え、遠くまで熱を拡散させることが可能となります。
スマートフォンやパソコンなどの筺体用途として使用を想定していますが、同等の放熱特性・剛性を確保して設計いたしますと、例えば1mmのアルミ板を約0.6mmのピッチ系CFRPに置き換えることができ、スマートフォンやパソコンなどの薄型化を可能とします。
さらに、熱伝導率の高い銅箔とCFRPのハイブリッド板の製造も可能で、アルミニウム並みの高熱伝導性にまで向上させることもできます。引き続き更なる高性能化に向けて検討を行っております。



上記製品を、9月17日(水)~9月19日(金)に東京ビッグサイトで行われる「N-PLUS展」にて日本グラファイトファイバー㈱、新日鉄住金マテリアルズ㈱コンポジットカンパニー共同出展にてご紹介いたします。


< 語句解説 >
*1 C/C(カーボンカーボン)コンポジット材
黒鉛を炭素繊維で補強した材料。軽量、高強度、高弾性で、2000℃以上の高温に耐えるなど、優れた性能を有する。
*2 CFRP
炭素繊維強化複合材(carbon-fiber-reinforced plastic, CFRP)。炭素繊維を用いた繊維強化プラスチックである。母材には主にエポキシ樹脂が用いられる。
*3 ミルド
炭素繊維を粉砕し、繊維長を50μm(0.05mm)~200μm(0.2mm)程度とした炭素繊維の粉。繊維径は10μ(0.01mm)。


<本件に関する問い合わせ先>
新日鉄住金マテリアルズ㈱ 広報
(日本グラファイトファイバー㈱へのお問い合わせも承ります。)
電話 080-4601-7899(直通)  E-mail kawai.p8s.kayoko@nsmat.nssmc.com






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