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自動車用電装品向け、耐加水分解性PBTの新規グレードを発表【BASF】

2013年7月25日

厳しい条件下においても使用可能

欧州の自動車駆動技術向けの材料は、高温、水分、振動などの課題に応えるものでなくてはなりません。自動車に使用される樹脂は、その耐用年数に耐えうる、特別な性能を備えている必要があります。ボンネットの下にある電装品であるプラグやコネクタ、ハウジングに使用されるポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性ポリエステルにも同じことが言えます。ポリエステルは、特に温度が高い場合、水分(大気中に含まれる水分も含む)と接触するとポリマー鎖が加水分解を起こし、材料の劣化を招きます。


Ultradur® HR – 耐加水分解性 PBT

BASFの Ultradur®(ウルトラデュアー)HRグレード( HR は Hydrolysis-Resistant (耐加水分解性)の略)は、湿気のある環境条件下でも加水分解しないよう最適化されたPBT材料です。その特性により、特に耐用年数が長く、厳しい条件下での作動に耐える必要がある部品の製造に最適です。

USCARクラス5試験に合格

また、Ultradur® HRグレードは、従来の試験に加え、該当する USCAR(北米自動車規格)に準拠した、クラス5という厳しい環境サイクル試験にも合格しています。自動車業界の仕様書では最近、この試験規格を満たすことが求められています。例えば、プラグやコネクタに対し、この規格に準拠した部品試験が指示されています。これらの部品試験では、従来の静的な耐候試験に比べてはるかに厳しい条件が設定されています。特別に開発されたUltradur® HRはすでに、高温多湿の環境条件に問題なく耐えうることが証明されています。

今回発表する2種類のUltradur® HR新規グレードは、 ガラス繊維を30%配合した強化グレード「 Ultradur® B4330 G6 HR 」と、ガラス繊維を15%配合した強化グレード「 Ultradur® B4330 G3 HR 」です。両グレードとも耐加水分解性加工を施していない製品と比べ、非常に優れた耐加水分解性を備えており、さらに他の耐加水分解性を持つ競合材料を上回る性能を有しています。

環境暴露試験における時系変化: 6,000 時間変化なし

耐加水分解性の評価には、一定の環境条件を維持する試験手法が広く用いられています。試験を加速させる共通条件は温度85°C 、相対湿度85% などです。Ultradur® HRグレードで作られた試験片を、この環境条件下に最大 3,000時間保管し、一定の間隔を置いた後、詳細な試験を行いました。その結果、引張強度は試験期間を通じて常に高いレベルを保持していました。

材料の限界を見極めるために、Ultradur® B4330 G6 HRに対する試験を8,000時間まで延長しました。その結果、引張強度は4,800時間~6,000時間経過後になってはじめて、徐々に低下し始めました。したがって、Ultradur® HRはこうした条件下において、他のあらゆる材料と比べて極めて安定性が高いと言えます。

厳しい環境サイクル試験: USCARクラス5

USCAR(北米自動車規格)クラス5に準拠した部品試験が他と大きく異なる点は、試験片に対する熱および水分負荷が一定ではなく、周期的に変化することです。試験片は8時間周期で、決められたさまざまな温度と湿度にさらされます。このプロセスのパラメーターの推移は、試験片の樹脂によって吸収される水分が、高温段階が始まる前に排出される機会がないように選定されています。 試験は2段階の過程をシミュレーションしています。まず、標準的な環境条件下で部品は完全に湿った状態となり、次に、仮の作動プロセスにおいて、周囲の部品から、またその部品自体からの熱により、部品自体が急速に加熱されます。これは PBT のような材料にとっては非常に厳しい負荷となります。従来のPBTを同じ状況下に置いた場合、加水分解による劣化は非常に大きなものとなります。

試験片に対する詳細な検査を行う前に、この試験サイクルを40回繰り返します。この場合でも Ultradur® HRは非常に高い耐候性を示し、その機械的特性にはわずかな変化しか見られませんでした。加水分解安定化を施していない比較材料の引張強度は、20サイクル後にはすでに大幅な低下が見られましたが、Ultradur® HRの引張強度は40サイクル後もほとんど変わりませんでした。このことから、Ultradur® HR は競合製品に比べてはるかに優れていることがわかります。

4,000時間の熱老化試験後も問題なし

Ultradur® HRは、乾燥および高温条件下で保管された場合にも、他の製品と比べて高い性能を維持しています。これは、Ultradur® B4330 G6 HRを150°C の温度に保った熱暴露試験キャビネットに4,000時間保管する熱老化試験によっても証明されています。その後の機械特性試験では、一定して高いレベルの衝撃強度を維持していました。対照的に、耐加水分解性加工を施していない比較材料の衝撃強度は、急速に低いレベルに低下しました。周囲の部品から、またその部品自体からの熱により、長期間にわたり高温で加熱される場合、高い耐熱老化性を備えていることが重要です。Ultradur® HRグレードは、乾燥状態において特に永続的な高温負荷に耐えられるため、例えばエンジンルーム内の部品など高温負荷がかかる用途にも最適です。

電気自動車における新しい用途

Ultradur® HRの特性プロファイルが大幅に向上したことにより、これまでPBTが使用されていなかったさまざまな用途にも使用可能になりました。例えば、PBTの優れた電気特性に高い熱安定性が加わることにより、電気自動車の部品にも用途を拡大できます。例えば、電気自動車の高圧電路の充電プラグ、バッテリースタックまたはプラグのハウジングなどへの使用が考えられます。

安定かつ容易な加工性

Ultradur® HRは耐加水分解性だけでなく、可能な限り溶融粘度が安定するよう設計されています。このためUltradur® HRは、高温での加工に対しても良好な成形条件を提供し、比較的長い滞留時間においても安定しています。溶融粘度が安定していることにより、部品表面の見た目を損なう流れ模様である、フローマークを防ぎます。さらに、ホットランナーの詰まりの原因となり、生産中断を招くリスクとなる、熱劣化した材料である黒点の発生傾向も抑えられます。

開発グレード:難燃性およびレーザー透過性

BASFでは現在、さらなるUltradur® HRグレードのラインアップ開発に取り組んでいます。最も新しい開発中製品の 1 つが「Ultradur® B4450 G5 HR 」です。このグレードは、耐加水分解性に加えて、難燃性、高い耐トラッキング性、低い煙濃度を備えており、電気自動車などの用途が考えられます。電気自動車は従来の駆動系を備えた自動車と比べて、非常に大きな電流が流れ、電気関連部品の安全条件への要求が異なるため、従来とは違った材料選択が必要になります。

もう1つの開発中製品は、加水分解安定性とレーザー透過性を組み合わせた「 Ultradur® B4300 G6 HR LT 」です。本グレードは、レーザー透過性のある黒色の材料で、レーザー溶着法に適した透過性を備えています。用途には、耐加水分解性だけでなく、複数のハウジング部品のレーザー溶着が必要なコントロールユニットやセンサーのハウジングなどが考えられます。


K2013 (国際プラスチック・ゴム産業展)記者発表会
発表者:ピーター・エイベック( BASF 、ヨーロッパ エンジニアリングプラスチックス、電子用途向け事業開発)


BASFについて
BASF(ビーエーエスエフ)は世界をリードする化学会社「The Chemical Company」です。製品ラインは、化学品、プラスチック、高性能製品、農業関連製品、石油・ガスと多岐にわたっています。BASFは、経済的な成功、社会的責任、そして環境保護を同時に実現しています。また、BASFは科学とイノベーションを通して現代社会や将来のニーズを提示しながら、ほぼすべての産業のお客様を支援しています。BASFの製品とソリューションは、資源の確保に貢献し、栄養価の高い食品を提供するとともに、生活の質の向上に寄与しています。BASFはこれらの活動を企業目標として「私たちは持続可能な将来のために、化学でいい関係をつくります」を掲げています。2012年の売上は約721億ユーロで、従業員数は約11 万人です。BASFの詳しい情報は、www.basf.com(英語)、newsroom.basf.com(英語)、www.japan.basf.com(日本語)をご覧ください。




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