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新材料の研究開発に有用な量子ビーム実験の計測効率を向上する手法を開発【日立製作所】

2019年2月7日

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新材料の研究開発に有用な量子ビーム実験の計測効率を向上する手法を開発
量子ビーム実験の計測時間を従来の10分の1に短縮し、新材料の研究開発の加速を支援

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(機構長:山内 正則/以下、KEK)物質構造科学研究所の小野 寛太准教授および株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、人工知能(AI)・機械学習にも用いられる統計手法を用いて、新材料の研究開発に有用な量子ビームを用いた材料評価の計測実験(以下、量子ビーム実験)*1を効率化する手法を開発しました。
高機能材料の性能にはさまざまなスケールの微細な構造が大きく影響するため、その計測実験に多くの時間を要しています。特に、加速器などの大型設備を必要とする量子ビーム実験では、実験が可能な施設や機器の稼働時間が限られることから、実験の高効率化が求められていました。今回開発した手法を適用することにより、従来の10分の1の計測時間で取得したデータでも、従来と同等の精度を得ることが可能となり、大型実験施設での実験時間を有効利用でき、より多くの試料を計測することが可能となります。また、本手法は大学や企業の実験室にある一般的な実験装置へも広く適用できるため、材料評価に必要なさまざまな計測の効率化につながり、各種材料の研究開発が加速されることが期待されます。
なお、本実験は、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)と共同で推進し、今後、トヨタは、本研究成果を電気自動車(EV)など電動車のモーター向け新材料研究へ応用していく予定です。

*1 中性子や放射光などの量子をビーム状に物質へ照射することによって、原子や分子など極めて小さいレベルで
  当該物質の成り立ちや機能を明らかにする実験

本研究開発の背景

近年、持続可能な社会の実現に向け、環境・エネルギー問題の解決やインフラの高度化に資する新材料の開発が急がれる中、高機能材料を短期間で効率よく研究開発する手法としてマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics/以下、MI)*2への期待が高まっています。

MIでは、使用するデータの生成、蓄積、評価の各フェーズにおいて、効果的かつ効率的な手法の確立が必要不可欠です。特に、中性子や放射光などの量子ビームを用いた材料評価は、重要な要素の1つであり、その高精度化・高効率化が、新材料を研究開発していく上でのスピードアップやコスト削減に向けて必要とされています。しかしながら、従来の量子ビーム実験では、計測データの精度や計測時間を最適化する方法が確立されておらず、実験方法や解析結果が人に依存するという課題があり、実験の高効率化が求められていました。

そのような中、KEKと日立は、新材料の研究開発のさらなる加速に向け、2017年から量子ビーム実験の効率向上に関する取り組みを、トヨタの協力のもと、共同で推進してきました。

*2 蓄積したシミュレーションデータや実験データを分析し、材料の構造と性能の相関関係や法則を迅速に見いだすことで
  新材料や製品の研究開発を促進するための手法

研究内容と成果

今回、電動車のモーター向け新材料の研究開発に有用な量子ビーム実験の一つである、小角散乱実験(Small Angle Scattering/以下、SAS)で得られた、ナノ*3スケールの構造情報を示す二次元強度分布データのばらつきを、AI・機械学習にも用いられる統計手法であるカーネル密度推定法*4を適用して抑制する手法*5を開発しました。

本手法を適用することで、短時間の測定で得られた低品質なデータを数倍~10倍のレベルに高精度化することが可能となり、長時間を要していた計測を、従来の10分の1の時間に短縮することに成功し*6、量子ビーム実験における測定効率を向上させることが可能となりました。

試料や測定条件に合わせて統計手法を最適化することで、さらなる測定効率の向上が見込まれるほか、本手法を小型のX線計測機器に適用することにより、従来、大型実験施設での計測が必須であった高精度の計測を、小型X線計測機器で実施可能となることが見込まれます。

*3 10億分の1
*4 有限のデータから真の確率密度分布を推定する統計学の手法で、機械学習の一つである教師なし学習に用いられる
*5 カーネル密度推定により、有限の小角散乱実験データから真の確率密度分布を推定
*6 二次元強度分布データが持つ空間相関を表現するカーネル関数として最も単純なガウス関数を採用した場合

KEK、トヨタ、日立は2018年10月8日に米国ミシガン州トラバースシティで開催された、小角散乱実験の研究者が一堂に集う国際会議「Small Angle Scattering 2018」において本手法を発表し、同内容は2019年2月6日に英国学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

なお、KEK、トヨタ、日立は2017年9月20日に同内容を特許出願中です。また、本研究は、KEKと大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 日野 英逸准教授との共同研究の成果も活用しています。

論文情報:Accelerating small-angle scattering experiments on anisotropic samples using kernel density estimation
Scientific Reports (オンライン版2月6日掲載)

今後の予定

本手法は、小型計測機器から大型実験施設まで幅広い領域での量子ビーム実験における測定への応用が期待されます。今後、KEK、日立は、新材料の研究開発のさらなる加速のため、AI・機械学習を活用することにより計測や解析のさらなる効率化に取り組む予定です。

また、本成果をもとに、KEKは、電動車のモーター向け新材料の研究加速に向け、大型実験施設での量子ビーム実験の高精度化・高効率化に貢献するほか、日立は、AIやデータ解析技術を活用し、新材料開発を支援する「材料開発ソリューション」をさらに強化していきます。

添付資料

小角散乱実験で得られる二次元強度分布データと時空間相関の関係
カーネル密度推定による分散抑制効果

関連情報

日立の「材料開発ソリューション」に関するWebサイト

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 社会ビジネスユニット 公共システム営業統括本部
カスタマ・リレーションズセンタ
〒140-8512 東京都品川区南大井六丁目23番1号 日立大森ビル
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