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絶縁型CANシステムにおけるエミッションの低減とイミュニティの向上【日本テキサス・インスツルメンツ】

2019年1月18日

現在では、異なる電圧で動作しているシステムが増えているため、絶縁型CANトランシーバは、エレベーターから電気自動車、船舶システムに至る幅広い分野で必要な要素になっています。

これらのトランシーバは、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)規格におけるプライオリタイゼーション機能とアービトレーション機能を、絶縁によるメリット(グランドループの除去、電位差への耐性、同相過渡電圧耐性など)と統合することにより、システム内の2つの電圧ドメイン間で信頼性の高い通信を維持するのに役立ちます。

非絶縁型CANシステムと同様に、絶縁型CANシステムを構築する場合の重要事項は、CANトランシーバの電磁適合性(EMC)性能です。EMC性能は、次の2つのパラメータによって測定されます。 デバイスが発生するエミッション
システム内に存在する干渉に対するイミュニティ

産業用や車載用システムの通信の信頼性と保護機能の向上に役立つ
TIの新しいトランシーバ製品が、業界最高の動作電圧、
最高のノイズ耐性と最小の電磁輻射特性を提供

エミッション

エミッションとは、意図しない電磁エネルギーの放出を指します。低エミッションによって信頼性の高いサブシステムの動作を確保すると同時に、隣接するサブシステムの性能にも影響を与えないことが理想的です。

マーケット(産業または自動車)および用途に応じて、システムはさまざまなエミッションの規格に準拠する必要があります。エミッション試験はシステムレベルで実行されますが、設計者は通常、コンポーネント・レベルでの要件を満たすコンポーネントを選択します。これにより、個々のデバイス自体が限界を超えないようにすることができます。システム設計とボードのレイアウトも、システムの全体的なエミッション性能において重要な役割を果たします。さまざまなエミッション試験の中では、CANトランシーバのエミッション性能を特徴付ける自動車用途の試験として、Zwickau規格が最も厳しい試験となっています。

図1は、EMC試験に使用されるボードの例です。このボードでは、同じバスに3つの絶縁型CANトランシーバが接続されています。エミッションは、1つのトランシーバがデューティ・サイクル50%、250kHzの方形波信号を送信しているときに、テストポイント(図1ではCP1)で測定されます。

図1:EMC試験に使用されるTIボード

トランシーバとバスの間にコモンモード・チョーク(CMC)を配置することで、一部のエミッションが除去されます。コモンモード・チョークの使用は、自動車および産業用途では一般的です。

EMC試験ボード上で『ISO 1042』を使用した場合の従来型CANデータレートでの伝導性エミッション・データを図2に示します。

図2:『ISO 1042』の伝導性エミッション・データ(500kbps)

一部の認証機関では、CMCを使用してこのデータを取得することが求められます。CMCも低いエミッションを維持するのに役立ちます。同一の条件下では、『ISO 1042』は、エミッションに関し、競合するデバイスよりも高い性能を発揮しています。

イミュニティ
イミュニティとは、干渉が存在する場所において、ある装置がエラーを起こさずに機能する能力のことを指します。絶縁型CANデバイスのノイズイミュニティを実証するために、TIは図1に示されるものと同じ回路上で、カップリング・ネットワークを変えて直接電力注入法(DPI)による試験を実行しました。バス上に注入するノイズの周波数はスイープされ、マスク試験により送受信パターンにおける相違がチェックされました。試験では、連続波(CW)ノイズ信号および振幅変調(AM)ノイズを含むノイズ信号が注入されました。AM信号は、80% 1-kHzの信号としました。縦方向は一定の電圧限界(±0.9V)、横方向は時間的限界(±0.2µs)を超えて変動があると、不具合とみなされます。

TIは、次の2種類の条件下で試験を実施しました。

コモンモード・チョークなしで36dBmのノイズを注入

コモンモード・チョーク付きで39dBmのノイズ信号

図3および図4には、これら2つの条件下での従来型CANの『ISO 1042』プロットが示されています。両事例において、絶縁型CANの性能はリミット・ラインを超えていることから、DPI試験に合格したことが分かります。これらのイミュニティ試験に合格したということは、システムエラーや不具合を抑え、信頼性の高い通信を確保できるということになります。

図3:『ISO 1042』DPI試験(コモンモード・チョークなし)

図4:『ISO 1042』DPI試験(コモンモード・チョーク付き)

統合絶縁型CANデバイスは、非絶縁型の同等のデバイスと同じエミッションおよびイミュニティ仕様を満たすことが期待されています。小型パッケージにおける低エミッション、高イミュニティの性能により『ISO 1042』および『ISO 1042-Q1』は、産業および自動車用途における厳しい要件に準拠しています。

参考情報
データシート:『ISO 1042』および『ISO 1042-Q1
ポートフォリオ:絶縁型CANトランシーバ
トレーニングビデオ(英語):
“key considerations for selecting isolated CAN transceivers”
“Interoperability of isolated CAN FD nodes”

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年11月7日)より翻訳転載されました。
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