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再来するインテリジェント・マシンの時代【日本テキサス・インスツルメンツ】

2016年10月13日

新しく買った自動車を、駐車スペースからスマートフォンを使って呼び出したことはありますか?
今や、繊細な外科手術の多くがロボット・ハンドで行われていることはご存知でしょうか?
ドローンがGPSで自律的に飛行経路を検出して飛行し、着地まで無事にこなすという話を聞いたことはありますか?

今日ではロボットはさまざまなモノの一部となり、掃除機、教育用機器、電子情報機器などにまで組み込まれるようになりました。



半導体技術の驚くべき進歩によって、自律機械や人工知能が再び脚光を浴びています。以前は人が行っていた作業も、徐々に機械が行うようになっており、この変革が世界へもたらすインパクトはとても大きなものです。インテリジェント・マシン、特にドローン、ロボット、半自動運転車が再び注目を集めています。これらはもう珍しいものではなくなり、商業用および産業用として、さまざまに応用されるようになりました。このような機械の電子コンテンツは急速に進歩しており、精密制御やアンビエント・アウェアネス(物理的な接近や、関連する情報を必要とせずに、周囲の環境を全般的に認識すること)といった新機能も実現しています。旧世代の産業用ロボットや追従走行自動車は、多くの場合、高い精度で反復作業を行うようにあらかじめプログラムされていました。一方、最新の自律機械は、人とのやり取りを含む特徴的な機能を備え、計画外の出来事や高速学習にも対応可能です。これらの機能はすべて、高いレベルでのアンビエント・アウェアネス、インテリジェンスおよび制御を必要とします。

人工知能において特徴的なのは、監視アプリケーションと制御アプリケーションの存在です。監視アプリケーションでは、通常、インターネットや多数のセンサから生成されるビッグ・データを取り扱います。膨大なうえ、増加の止まらない情報に対してデータ・マイニングやパターン認識を行うには、極めて高い処理能力を持つサーバとプロセッサが必要となります。
セキュリティ、医療用診断、マーケティングのアプリケーションをはじめ、多くのアプリケーションでデータ分析とディープ・ラーニングの手法が利用されています。一方、制御アプリケーションでは、センサ・データをリアルタイムに分析し、アクチュエータやモーターを自律的に制御する必要があります。自動運転車、ドローンなどの新世代のロボットはこちらに分類されます。この記事の続きでは、制御アプリケーションについて解説します。

インテリジェント・マシンの復活は、次の3つの革新的技術の統合によってもたらされたと考えられます。

1) センシング : 半導体技術と微小電子機械システム(MEMS)技術の進歩により、アンビエント・アウェアネスやビジョン用の多岐にわたるセンサを、手頃な価格で自律システムに導入できるようになっています。カメラ、レーダー、LIDAR(「光検出と測距」を意味する“light detection and ranging”の頭字語と言われることがあります)などのビジョン・センサは多くの自律システムに不可欠なものですが、それよりも要求処理能力がずっと低く、より一般的なアンビエント・センサが、他にもいろいろあります。高精度のトルク・センサ、温度センサ、磁気センサを融合させることで、触覚、近接、周辺環境に関する情報を豊富に取得できます。これにより、ロボットによる人とのやり取りや、予測できない状況への対処が、安全かつ効果的に行われるようになります。これは、人や動物が物体の固さ、熱、磁界などのさまざまな情報を視覚に頼らずに知覚する、生物学的なしくみに例えることもできます。

アルゴリズムやプロセッサがさらに強力になり、かつ手頃な価格で入手できるようになるにつれ、このようなセンシング技術を基盤にしたビジョン分析はソリューションの主流になりつつあります。マシン・ビジョンは産業用アプリケーションおよび民生用アプリケーション(ゲーム機など)で長く使用されてきましたが、基幹業務に自律システムを使用する場合は、さらに高いパフォーマンスと信頼性が求められます。このため、今では自動車、ロボット、ドローンには多くの高解像度カメラが搭載されています。これらの自律型システムは、進歩したビジョン・アルゴリズムとステレオ・カメラに高度なプロセッサを組み合わせることで、奥行き検出やセンサ・フュージョンを実現しています。

250mの拡張レンジと数ミクロン単位の精度(ただし両立はしませんのでご注意ください)を持つ、完全に統合された相補型金属酸化膜半導体(CMOS)レーダーを使うと、カメラの機能が補完され、大雨、大雪、濃霧の中を走行するときなど、光学的な画像が得られない場合や役に立たない場合に有効です。LIDARでは、高度に収束したレーザー・ビームにより、機械の周辺環境に関するさらに詳細なマップをリアルタイムで提供できます。

2) 処理能力 : 高い処理能力と、進歩したニューラル・ネットワーク・アルゴリズムの統合により、マシン・ビジョン、パターン認識、マシン・ラーニングの効率性と信頼性は大きく向上しました。広範なグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)、バイオインスパイア・プロセッサ、マルチコアの超長命令語デジタル信号プロセッサ(VLIW DSP)を使用して、幅広いビジョン・サブシステムが開発されています。ディープ・ラーニングや画像処理用のさまざまな補助アクセラレータを搭載したテラフロップス級の高性能GPUは、複雑な先進運転支援システム(ADAS)に必要不可欠です。しかし、多くの自律システムはバッテリで動作しており、処理に割ける電力が限られるため、電力効率の高い処理が求められます。マシン・ラーニング・アルゴリズム用のアクセラレータを搭載した高性能マルチコアDSPなら、モバイル・ロボットやドローンなどで必要とされる電力効率と高い処理能力を両立できます。標準的なマルチコアDSP(TI C7Xなど)では、GPUと比較して処理の際の消費電力と部品点数(BOM)を削減し、スケーラビリティを向上させることが可能です。

3) モーターとアクチュエータの制御 : 自律機械では、多くの油圧システムや機械システムが、電気モーターに置き換えられてきました。電気モーターとインテリジェントなモーター・ドライバの効率が向上したことで、ロボットやドローンで高精度な動作を実行できるようになりました。電気自動車の場合、効率性が向上したインダクションACモーターやドライバを使用していますが、多くの軽量ロボットやドローンでは、高効率で保守がほぼ必要ないブラシレスDCを使用します。TIではDRV8X製品ファミリなどのゲート・ドライバの幅広いポートフォリオをご用意しています。スマート・ゲート・ドライブ機能と高度な統合により、パフォーマンスを最適化し、コンパクトな基板設計を実現します。統合センサ、障害診断、インテリジェント・パワー・マネージメントの機能を搭載したモーターは、自律システムにおける高精度、高トルクなアプリケーションに不可欠となっています。

技術的な課題やその他の課題は残っているものの、インテリジェント・マシンは私たちの日常生活に姿を現しはじめています。
以前は珍しいものでしたが、日常生活に活用されるにつれ、その存在が徐々に目に入るようになってきたのです。電子工学や創造的なアプリケーションの急速な進歩は、インテリジェント・システムの復活と定着の兆しです。
自律型機械の新しい時代の到来です。存分に活用しましょう!



※上記の記事はこちらのBlog記事(2016年9月20日)より翻訳転載されました。
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