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同軸ケーブルを介した電源伝送 : 自動車アプリケーションの設計ガイド【日本テキサス・インスツルメンツ】

2016年9月14日

PoC(Power over coax:同軸ケーブルを介した電源供給)は、自動車関係メーカーが自動車の安全要件を満たすためにカメラやセンサなどを搭載するため、車体の重量を減らしたい、と考える自動車設計者向けのコンパクトなソリューションとなります。しかし、どんなによいソリューションであっても、同じケーブルを通じて電源と送受信チャンネル信号を送る際に問題は起こります。また、システムに電力を供給するカーバッテリは、低温始動時の3Vから負荷ダンプや過渡電圧をクランプする時に42Vなど幅広い電圧範囲を生み出す必要があります。うまく設計された電源回路は、ADAS(Advanced driver assistance system:先進ドライバ支援システム)のような重要なシステムが自動車の全ての状態で動作するために必要です。

図1は、一般的なFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)Link IIIデジタル・ビデオ・インターフェイスを利用するADASシステムの例を示しています。デシリアライザ(直列-並列変換器)は、同軸ケーブルを介して、電源を送り信号を制御しますが、シリアライザ(並列-直列変換器)は同じケーブルでビデオ信号を送り戻します。このシステムは主に四つの電力ブロックを備えています。デシリアライザ用電源、デシリアライザ側から送られるカメラ用電源、シリアライザ用電源、そしてカメラのイメージ・センサ用の電源です。


図1 : メガピクセル・カメラ・システムのブロック図


メガピクセルのカメラ・システムにおける問題の一つは、同軸ケーブル内の電圧降下の可能性です。この降下がシグナル・インテグリティの問題を起こしていないことを確認するために、PoCを伝送する前に、デシリアライザの電圧を9V以上に上げてみてください。シリアライザ側に電力をいったん送るならば、シリアライザとイメージ・センサ用の動作電圧を安定させなければなりません。

これらのブロックを細かく見ていきましょう。サイズが主な問題となるシリアライザから見ていきます。サイズの問題は、ノイズとPSRR (power supply rejection ratio:電源電圧変動除去比)に関連します。まずバック・レギュレータ『LM53600-Q1』を使い、続いてLDO(low-dropout regulator:低電圧降下レギュレータ)『LP5912-Q1』をシリアライザとイメージ・センサ用に使います。 『LM53600-Q1』は、3.55V〜36Vと広い入力電圧と42Vまでの過渡電圧、23µAの静止時電流IQ を持ち、3mm×3mmのパッケージに収容されています。また、 『LP5912-Q1』も推奨できるICで、1kHzでのPSRRが75dB、出力ノイズ12µVRMS と小さく、IQ は30µAという特性を持ち、2mm×2mmのパッケージに入っています。高いPSRRと低い出力ノイズは、カメラ・アプリケーションでは必須です。電源電圧のリップルやノイズが画質に直接影響を及ぼすからです。両デバイスとも、動作に少数の外部部品のみが必要であるため、小型のトータル・ソリューションとなります。

デシリアライザ側では、デシリアライザの電源ブロックは、シリアライザ側の電源ブロックに似ています。つまり、 『LM53600-Q1』と『LP5912-Q1』を使うことも外部部品コストBoM(bill of materials)を節約できます。この場面では、コスト節約はサイズ面では必ずしも必要ではないため、他のソリューションを使うこともできます。しかし、他のソリューションは外部部品をより多く必要とするため、全体の設計コストが上がることになります。

最後に、カメラの電源ブロックは、同軸ケーブルを介してデシリアライザからシリアライザに電源を送るという役割があります。このブロックからの電源は9Vに昇圧され、信号パスと一緒に組み込まれなければなりません。『DS90UB91x』 のデータシートのセクション8.5によると、出力の差動電圧|VOD| (DOUT+ とDOUT-)はわずか269mV~412mVです。このことは、このブロックの出力はノイズ対信号の比SNRの劣化を避けるために十分にきれいにしておく必要があることを意味します。幸いに、PoCフィルタはシリアライザとデシリアライザのインピーダンスが50Ωで整合がとれていることを確認するために配置されており、昇圧コンバータから生じる高周波リップルを遮断するコイルを含んでいます。スイッチング周波数が高ければ高いほど、減衰は大きくなります。このアプリケーションでは、昇圧の安定化電源にスイッチング周波数1.2MHzの『TPS61093-Q1』を推奨します。図2に示すように、このPoCフィルタの通常100µH前後のコイルで、出力のリップルは-57dBあるいは昇圧コンバータから発生する元のリップル電圧の0.2%だけ減衰します。


図2 : PoCコイルからリップルの減衰


メガピクセル・カメラは、自動車産業で欠かせなくなってきた多くのセンサのひとつです。より多くのセンサに安全性と快適性に見込まれるのに伴い、同軸ケーブル給電の優れた設計が施されたシステムは、コストとサイズを縮小します。

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参考情報
アプリケーション・ノート : 『DS90UB913A』 設計の同軸ケーブルを介した電源伝送
ブログ : 「LDOが画質に影響をあたえる方法 : LDOは小型カメラのハイクオリティな画質を生み出せるのか?」
データシート : 『DS90UB91xQ-Q1』


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※上記の記事はこちらのブログ記事(2016年8月26日)より翻訳転載されました。


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