ニュース

1000分の1秒以下で、高画質なカメラ映像を同時伝送可能な、車載カメラ・ネットワーク用SoC「R-Car T2」を発売【ルネサス エレクトロニクス】

2015年9月9日

ルネサス エレクトロニクス㈱(代表取締役会長兼CEO:遠藤 隆雄、以下ルネサス)は、このたび車載情報システム向けSoCプラットフォーム「R-Car」の新シリーズとして、車載カメラ・ネットワーク用SoC(System on a Chip:システムLSI)「R-Car T2」を開発し、本日よりサンプル出荷を開始します。新製品は、Ethernet AVB規格を構成する4つの規格(IEEE802.1AS / IEEE802.1Qav / IEEE802.1Qat / IEEE1722)(注1)全てに準拠した車載カメラネットワーク専用SoCで、極めて低遅延に映像を伝送することができます。これにより、高いリアルタイム性能を保ちながら複数のシステムでカメラ映像を共有でき、サラウンド・ビュー・モニタや障害物の検出等、各種運転支援システムに活用できます。新製品のサンプル価格は2000円/個となっており、量産を2016年12月より開始し、2017年9月に合計で月産50万個の出荷を計画しています。

車載カメラは、ドライバの運転を支援するため、駐車時のリア・ビュー機能を中心に普及が始まり、自動車の周辺を全方位にわたって確認できるサラウンド・ビュー機能へ発展しています。さらに、車載カメラ映像は、障害物や車線変更時の警告等の運転支援システムにおいても活用されはじめています。これら複数のシステムで車載カメラの映像を共有化し、システム間で連携することが自動車の安全と快適性を向上するうえで重要です。

新製品は、(1)高解像度カメラの伝送方式として期待されるEthernet AVB(Audio Video Bridge)規格を活用することで、複数のシステムに映像を同時に配信でき、マルチ・ディスプレイによる表示や各種運転支援システムでの活用、さらにカメラの追加によるシステム拡充も柔軟に行えます。さらに、(2)高画質なHD映像(1280×960)を、高画質のまま低遅延で圧縮する独自開発のH.264エンコーダを搭載し、1msec(ミリセカンド:1000分の1秒)以下の高性能を実現、ネットワークを通して各システムに配信することができます。

従来、Ethernetは複数のシステムに映像を送れるネットワーク規格として扱いやすい分、UTPケーブル(注2)で扱える帯域が100Mbps(メガビーピーエス)のため、映像を圧縮する必要があり、自動車の安全支援システム等での活用には、遅延対策が課題でした。今回、ルネサスが実現した1msec以内という時間は、時速100km/hで走行する自動車の移動距離2.8cmに相当し、ほぼリアルタイムの伝送を可能にしました。これにより、安全支援システムでの活用が可能になり、さらに現行のLVDS方式からEthernetに置き換えることが可能です。また、手軽にネットワーク対応が行えることで、マルチ・ディスプレイも実現でき、運転者の安心安全を支援する先進的な車載情報システムを構成できます。

ルネサスは、本製品を車載情報システム向け「R-Car」の新シリーズとして、特定機能向け専用SoCを拡充し、車載カメラ・アプリケーション向けにシリーズ化してまいります。既存製品であるコックピット向けのR-CarやADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)向けのR-Carと組み合わせ、車載カメラ・アプリケーションに対応したソリューションを提供していきます。

新製品「R-Car T2」の特長は以下のとおりです。

(1) Ethernet AVBの4つの規格に準拠し、複数の表示/運転支援システムで車載カメラ映像の共有が可能
従来、アナログ方式やLVDS伝送方式のカメラシステムでは映像処理がナビゲーションやメータクラスタなど一つの処理装置に集中していましたがEthernet AVBを採用することで複数のカメラ映像を複数の処理装置へ同時配信が行え、カメラ映像のマルチ・ディスプレイ対応や運転支援システム等での活用が可能。さらに、カメラの増設や表示パネルの追加など、自動車のグレードやオプションに応じて柔軟なネットワーク構成を実現。また、Ethernetは通信ラインを利用して電力を供給するPoE(Power over Ethernet)が行えることで、個別に必要であった電源コネクタや専用ケーブルも削減可能。

(2) 高画質HD映像を低遅延伝送することで、映像認識によるクルマの価値向上に貢献
新製品はルネサスが独自に開発した高画質で低遅延性能に優れたH.264エンコーダを搭載し、大容量信号のリアルタイム伝送に優れたEthernet AVB規格を採用したことで、低遅延で高画質なHD映像のデジタル伝送を実現。高画質化により視認性が向上し、障害物の見落とし防止などに貢献。さらに、高いリアルタイム性能により、歩行者や障害物の検出システムなど安全性が求められる運転支援システムにも活用可能。

(3) 超低消費電力化と小型パッケージ化により、車載カメラ・モジュールの省電力化と小型化に貢献
新製品は40mW(typ.)の低消費電力のため、車載カメラ・モジュールを搭載する密閉された防水・防塵の空間でも、デバイスから発生する熱を低減。また、6mm角の小型パッケージで、車載カメラ・モジュールの省スペース化を実現し、自動車のデザインの自由度向上に貢献。


新製品の仕様は、別紙(119KB)をご参照ください。


製品情報はこちら


(注1)4つの規格の機能は次のとおり。
 ・ IEEE802.1Qat : 帯域予約を行う機能 (送信側から受信側へ一定のバンド幅を確保する機能)
 ・ IEEE802.1AS : 時刻/タイミング同期を行う機能(システム全体を1us以下で同期させることを目指す機能)
 ・ IEEE802.1Qav : トラフィックシェーピング機能(優先するパケットが帯域幅を超えないように平滑化する機能)
 ・ IEEE1722 : Ethernet AV-Transportを規格(Audio/VideoのデータPacket Formatを規定)
(注2)UTPケーブル : Unshielded Twisted Pairケーブル

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。








ルネサス エレクトロニクス株式会社ホームページはこちら

キーワードをクリックして関連ニュースを検索

#ルネサス エレクトロニクス
#SoC
#2015年9月9日