最前線コラム

要求と検証にフォーカスしたMBSE・MBD でシステム開発の効率化・高品質化を実現【SOLIZE】

システム開発の鍵は正確な要求と効率的な検証

 自動運転やMaaS などを実現するために、自動車開発で考慮すべきことが急速に増大し、複雑化しています。
 複雑な開発では、要求獲得段階で要求を正確に捉え、それを効果的に検証することが重要です。しかし、システムの要求が複雑であるため、多くの関係者が要求仕様を正確に理解できるようにすることは容易ではありません。さらに、要求は検証段階でその妥当性を確認できることが重要ですが、複雑な要求の検証を適切に実施するのは大変困難です。

要求を正確に捉える方法とは?

 ではどうすれば「正確な要求仕様を正確に捉えることができる」のでしょうか?要求を獲得する方法は様々ですが、獲得した要求を正しく要求仕様として記述することができなければ、結果的に要求を正確に伝えることはできません。要求の内容を、適切な表現と正確な用語を用いて、技術文書として正確に記述することが大きな鍵となるのです。

日本語要求仕様の品質向上のためのガイドラインとその評価の実現

 要求仕様を正確に記述するためには、要求仕様についての品質基準を定義し、その品質基準を守ることが重要です。
 SOLIZE では、芝浦工業大学 中島毅教授との共同研究を通じて、日本語で要求仕様書を適切に記述するためのガイドラインを作成しました。
 そして、それにより、日本語の要求仕様の品質を定量的に評価できるようにしました。これを実現したのが、スペインのThe REUSE Company(TRC)が開発した要求仕様品質向上ツール「Systems Engineering Suite (SE Suite)」です。

SE Suite:要求仕様品質向上支援ツール

 SE Suite は、3 つの特性を使って要求仕様の品質を評価します。 3 つの特性とは、単一の要求文書の曖昧さや余分な情報を含んでいないかを評価する「正確性(Correctness)」、必要な情報が網羅されているかを評価する「完全性(Completeness)」、記述のブレや重複を評価する「一貫性(Consistency)」です。

 SE Suite は、用語やその関係を「オントロジー」として定義します。そのオントロジーを用いて要求品質基準を定義し、要求文書を評価します。SE Suite では、その評価結果を参照しながら、評価した要求文書を編集することができます。
 オントロジーや品質評価基準を、組織やプロジェクトごとに適切に強化していくことで、現場の要望に即した要求文書の評価・記述をサポートできるようになります。

要求の妥当性を効率的に確認するには?

 正確な要求を記述しても、その要求をシステムとして適切に実現できているかどうかを確認できなければなりません。複雑な開発の妥当性確認は、要求以上に複雑で、多大な時間を要します。
 テストを効率的に実施するためには、適切かつ効率的にテストを設計し、そしてテスト工程を可能な限り自動化することが求められています。

機能テストツールTPT を使ったテスト設計

 とはいえ、テスト設計を適切に行うための明確な手順や指針を持たず、経験則で行っている場合も多いのではないでしょうか。
 システムの複雑化が進む中、作成したテストが適切であるか、抜け漏れがないかを確認し、テスト品質を担保するためには、テストの設計が重要です。そのため、それをサポートするツールを活用することで最適なテスト設計が実現します。
 SOLIZE が提案するドイツのPikeTec が開発した機能テストツール「TPT」は、要求ベースのテストに焦点を当ててテスト設計を行い、テストの実行から評価、レポート作成までの流れの自動化を実現します。

オートマトンによるテスト設計と管理の効率化

 TPT では、オートマトンを用いてテスト設計を行います。
 オートマトンとは、状態と入力の組み合わせにより状態間を遷移する数理モデルです。テスト対象からインターフェースを抽出し、それらをオートマトンの形で整理することにより体系的にテスト設計を行うことができます。
 TPT は、オートマトンを構成する遷移条件と状態のバリエーションの組み合わせからテストケースを生成することで抜け漏れを防ぎます。

カバレッジを満たすテストケースの生成

 要求ベースのテストである機能テストは入出力の振る舞いのみに着目しますが、テスト対象の内部構造に着目する構造テストのためのテストケースもTPT は自動生成することができます。
 これにより、機能テストと構造テスト両方のテストを実行し、評価することが可能です。

各開発フェーズでの検証

 TPT は、MiL、SiL、HiL、実車試験などすべての開発フェーズで用いることが可能で、様々なツール・プラットフォームと連携しています。異なるフェーズでテストを再利用することにより、Backto-Back テストを行うことができ、テストハーネスを自動で生成することで、TPT 上でプラットフォームを選択するだけでテストを実行することができます。

要求トレーサビリティ

 TPT は、 DOORS やExcel などの要求管理ツールから要求をインポートします。インポートした要求と、作成したテストケースをTPT 内で紐づけることにより要求のカバレッジを評価します。

評価・レポート作成

 テストの実行結果は、Assesslet と呼ばれる様々な評価方法に基づいて評価されます。Assesslet には、同値クラステスト、Backto-Back テスト、トリガールールといった、使用場面が多いと想定される評価方法はデフォルトで設定されています。また、評価方法を自身で作成、設定することも可能です。
 最後に、実行結果および評価結果をもとに自動でレポートが作成されます。

ダッシュボードによるシミュレーション

 ダッシュボードを用いて、システムの反応を見ながら手動のテストを行うことも可能です。ダッシュボード上の操作(入力)およびその反応(出力)はすべて記録され、その操作に基づいたテストケースを作成することもできます。

正確な要求、効率的な妥当性確認と検証をMBSE・MBD に

 正確な要求文書の作成と、効率的な妥当性確認と検証ができれば、システムズエンジニアリングを適切に実施することが容易になります。フランスのSherpa Engineering が培ってきたMBSE の方法論と、その方法論を盛り込んでつくられたソフトウエアツール群「PhiSuite」を活用することにより、システムズエンジニアリングを適切に実施することが可能になります。
 SOLIZE がもつMBD の技術力を活用して、MBSE・MBD 領域におけるお客様の生産性の向上を支援します。

おわりに

 SOLIZE はTRC、Sherpa Engineering、PikeTec と連携し、日本のお客様の開発現場における要求仕様の品質向上、システムズエンジニアリングやMBD 開発の支援を行っています。海外での取り組みや豊富な経験を活用しながら、日本の開発現場に適したツールおよびサービスを提供しています。


https://www.solize.com/

2019年5月1日発行
次世代自動車技術最前線2019より転載

  


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