最前線コラム

圧倒的に早くて使いやすい 最先端の超音波探傷システム dolphicam2 のご紹介【富士テクニカルリサーチ】

 昨今の自動車開発・製造において、検査・計測技術は必要不可欠なものとなっています。しかし、その多くが専門の技術者が必要であったり、計測結果の評価が大変難しいものであったりと多くの課題が存在しています。
 今回、そのような課題の一助となるべく、最先端技術を駆使した3 次元超音波探傷システムをご提案いたします。

 

1.3 次元超音波探傷システムdolphicam2

 超音波探傷技術は50 年以上の歴史を持っており、製品内部の欠陥検出に優れた非破壊検査の代表的な検査手法です。工業用途においては、鍛鋼品やレールの探傷から始まり、溶接部の評価、減肉配管の検査、接着剤の有無や剥離検査など非常に多岐にわたっています。一方で超音波探傷技術は専門性が高く、対象物に合わせた複雑な設定と結果の評価ノウハウが必要です。
 今回ご提案するdolphicam2 は計測準備時間が非常に短く、128×128=16,384 個の振動子による高解像度の3 次元結果がリアルタイムで出力される画期的な超音波探傷システムです(図1:dolphicam2 の外観)。

図 1 dolphicam2の外観

2.超音波探傷の仕組

 超音波は工業界において、内部探傷、割れ・剥離検査、接着不良検査、肉厚測定、近接センサーなど広く利用されております。その中でも超音波探傷は計測対象物に対し、超音波探触子と呼ばれる振動子を編み込んだセンサーから超音波を発振し、その反射信号を分析することで内部欠陥を計測します。通常、超音波は対象物の素材で伝達速度が異なること、異なる素材間では反射波が発生することを利用して検査に使用します。
 図2の左図のように左から超音波を発振すると、底面からその反射波(エコー)が返ってきます。一方で、内部にキズがある場合、底面よりも先にその部分からエコーが返ってきます。このエコーを分析することによりキズの有無や位置を評価します。
 

図 2 超音波のエコー例

 一般的な超音波探傷器では、一つの振動子や線状に並べた振動子で検査を行います。一回の計測範囲が狭いため、内部欠陥を調査するためには熟練の技が必要でした。そこで、dolphicam2 ではこの課題を解決するため、面で計測し、かつ、圧倒的に多いデータ量を独自のアルゴリズムでリアルタイムに分析することにより手軽で素早いセンシングを可能としました。

3.dolphicam2 の特徴

dolphicam2 の特徴は下記の通り3 つです(図3:dolphicam2 特徴)。
  ① 128 × 128 のマトリクスアレイによる超高解像度計測がリアルタイムで可能
  ②複雑な設定は不要。誰でも簡単に素早く計測することができること
  ③ CFRP から各種金属まで幅広いラインナップを用意

図 3 dolphicam2の特徴

 dolphicam2 は独自のマトリクスアレイ技術により128 ×128= 16,384 超音波素子数の超高解像度計測を実現しました(図4:マトリクスアレイ)。従来のフェーズドアレイ技術では、16 ~128 素子を線状に並べる方法が一般的ですが、dolphicam2 では16,000 以上の素子を面上に並べるため広範囲かつ高分解で計測することが可能です。また得られた計測データはリアルタイムでA- スキャン、B- スキャン、C – スキャンの結果として出力することができ、ユーザーは即座に内部欠陥を把握可能です(図 5:リアルタイムA、B、C- スキャン表示(CFRP 板の内部欠陥検査例))。 従来手法のように後処理にかかる手間を削減でき、結果の分析や評価に集中することができます。
 特に図5 の右側の通り、C- スキャンの結果は深さ方向のカラーコンター図(高さに応じた色画像)として出力することで、視覚的にも分かりやすいデータを取得することが可能です。これにより内部欠陥の有無だけではなく、相対的な位置の確認や大きさの比較等が容易に実行可能です。

図 4 マトリクスアレイ

 

図 5 リアルタイムA、B、C- スキャン表示
(CFRP板の内部欠陥検査例)

 次に計測実施までの立ち上がり時間の短さも大きな特徴です。通常の超音波探傷器であれば、各種複雑で詳細な設定や機器そのものの安定化に数10 分から2 時間程度かかる場合がありますが、dolphicam2 では5 ~ 10 分でスキャンを開始することができます。使いやすいユーザーインターフェースと予めプリセットされているデータを呼び出すだけで計測をスタートすることができます。
 特徴の3 つ目として挙げた通り、dolphicam2 ではCFRP から各種金属まで幅広いラインナップのプローブを用意しております。通常、超音波の減衰が大きいCFRP やGFRP などは大変困難な対象でした。dolphicam2 では独自の結果処理技術により、この課題を乗り越えました。CFRP の層間剥離や異物混入発見だけでなく、CFRP とアルミ等の異種材接着の際の接着剤不良発見など様々な問題を解決します。

4.dolphicam2 の活用用途

 dolphicam2 は持ち運びしやすいコンパクトな製品であり、その圧倒的に早い計測速度とリアルタイムのA、B、C- スキャンの生成により現場での製品検査用途に最適です。例えばCFRP の内部剥離の発見や、CFRP- アルミ等の複合材接着における接着剤不良の発見などに効果を発揮します(図6:接着剤不良の検査イメージ)。

図 6 接着剤不良の検査イメージ

 また、対象物に合わせたプローブラインナップも豊富に用意しております。プローブ取り換え時もワンクリックでキャリブレーションが終了するため、測定準備はわずか3 分ほどです。現場で時間のかかっていた作業をぐっとスムーズに行うことが可能となりました。

5.まとめ

  日々進化していく自動車開発において、計測に対する課題は尽きません。弊社はその一つ一つに対して、最先端の計測器と計測技術を磨き、課題解決の期待に応えるべく邁進してまいります。

 


株式会社富士テクニカルリサーチ
P&M 事業部 ソリューション開発部
高橋 久範
TEL 045-650-6650 ㈹  URL http://www.ftr.co.jp
2019年4月1日発行
テスティングツール最前線2019より転載